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【P#85】カフェインと集中力、目覚め、睡眠〜カフェインとは何か?①〜刺激薬の歴史④

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

コーヒーや緑茶に含まれるカフェインとは何か?向精神薬の中では精神刺激薬(stimulant)として分類されるカフェインは、脳にどのような影響を及ぼすのか?カフェインは、社会的にどのような影響力があったのか?今回のブログでは、2回に分けてカフェインについて紹介したい。

向精神薬とは何か?〜精神刺激薬の位置づけ

脳科学の理解には、脳の中枢神経系に作用し、人間の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称として「向精神薬(Psychoactive drug)」の知識が必要。これらの薬によって、脳についていろいろなことがわかってきたからだ。

向精神薬には、精神刺激薬・興奮薬(stimulant、upper、アッパー)、抑制薬・鎮静薬(depressant、sedatives、downer、ダウナー)、幻覚剤(psychedelics、hallucinogen)の3種類が知られている。

抑制薬には、アルコールベンゾジアゼピン睡眠薬)、オピオイド(ヘロイン、アヘン、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン)、大麻(CBD、THC)等が知られており、オピオイドは米国で社会問題になっている点、大麻はルネサンスを迎えており、合法化に向かって進んでいること等、過去のブログで取り上げた。

幻覚剤には、LSDサイロシビンメスカリンMDMADMTが知られている。以前、米国の規制対象になり、研究ができなかったのだが、幻覚剤のルネサンスを迎えて、依存症やうつ病の治療として注目されている点、過去のブログで取り上げた。

「精神刺激薬」は、中枢神経に作用して、ドーパミン、ノルアドレナリンを活性化させる物質。精神活動を活発(アッパーと呼ぶ)にさせる。アンフェタミン類(覚醒剤)、ニコチン(タバコ)、カフェイン緑茶コーヒー)、エフェドリン(漢方のマオウ)が知られている点、過去のブログで取り上げた。

人類の太古から使用されているお茶、コーヒーに含まれるカフェイン。今回の投稿では、カフェインとは何か?からスタートしたい。

カフェインとは?〜集中力と目覚め

カフェインは、精神刺激薬の一つ。ドーパミンとアセチルコリンを増やし、思考能力の向上、精神的、肉体的な要求に対してうまく適応できるよう調整してくれる物質だ。カフェインにより、報酬系に働き(ドーパミンの受容体を増やす)かけ、やる気を上げ、眠気も抑えることも知られている。又、利尿作用ある。

スタンフォード大学のAndrew Huberman教授は、専門の脳科学をわかりやすく、ポッドキャストのHuberman Lab(英語のみ)で伝えている。特に、カフェインについてはわかりやすいので、彼のポッドキャストから一部抜粋して紹介する。

カフェインは、精神刺激薬の一つ。カフェインの効果は「Strong Reinforcer(強力な増強剤)」として知られている。カフェインは、目覚めが良くなり、思考能力の向上、精神的、肉体的な要求が必要な場合、うまく対処してくることが知られている。

以下、集中力、睡眠、利尿作用とカフェインとの関係で紹介したい。

カフェインと集中力

集中力を高めていくためには「矢印」のモデルで考えるとわかりやすい。集中力に関わる物質(神経伝達物質)は3つ知られている。

原動力・エネルギー・警戒心に関わる「ノルアドレナリン」、注意、集中、焦点を一つ(スポットライト)に関わる「アセチルコリン」と、持続力、モティベーション、意識を外に向けることに関わる「ドーパミン」だ。

カフェインは、思考を明確にし、モティベーションに関わる「ドーパミン」の部位を上げることが知られているだけではなく、注意を一つに向ける「アドレナリン」も上げることが知られている。上記で言えば、3つのうち2つを上げることができ、集中力が高まっていくのだ。

カフェインと睡眠

カフェインは、睡眠と関係が深い。起きている間にアデノシンという物質が増える。長ければ長いほど量が多くなることから、アデノシンは、起きている時間を計測する装置、睡眠圧として働くことが知られている。

アデノシンは、脳の覚醒に関わる部位の活動を低下させ、睡眠に関わる部位を上昇させることで、睡眠に関わる。ポイントとなるのが、アデノシンの働きは、アデノシン受容体と結合することで発揮されることだ。カフェインは、アデノシン受容体と結合し、アデノシンの働きを邪魔(拮抗作用と呼ぶ)する。

カフェインを含む飲料を飲むと、目覚めが良くなるのは、睡眠に関わるアデノシンの働きを邪魔するからだ。参考に、カフェインの半減期(血中濃度が半分になるのに要する時間)は6時間。カフェインの効果が切れると、一気にアデノシンが蓄積しているので、突然眠くなる。

カフェインに対して、身体の反応は一人一人違う。敏感な場合は、午後3時以降にカフェイン入りの飲料を避けると、夜には、効力が半分になり就寝しやすくなる。

カフェインと利尿作用〜通常の1.5倍の水分を補給する

カフェインには利尿作用があることが知られている。このため、カフェインを含む飲料を大量に取った場合は、水分を失うリスクが高い。スポーツトレーナーのアンディー・ガルピン(Andy Galpin)は、お茶を飲むときに、1.5倍の水分補給を勧めている。

夜寝る直前にカフェインをとると、朝方にトイレに行く可能性がある。睡眠障害を予防する上でも、カフェインは朝・昼に摂るのが重要だ。

カフェインを含む飲料

カフェインを含む飲料は、コーヒーと紅茶・緑茶だ。意外とコーヒーよりも緑茶の方が多いことがお分かりいただけるかと思う。

カフェインは、上記の飲料以外に、チョコレートにも含まれている。

カフェインと過剰摂取・離脱症状

精神刺激薬のカフェインは、アンフェタミン類(覚醒剤)、身体への影響は最小限。そのため法的規制は入っていないが、過剰摂取による影響や、離脱症状はないのか?

カフェインの過剰摂取により、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症状が起きること。消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐の症状も認められるらしい。

一方で、離脱症状に関しては、幻覚剤の研究で有名になったローランド・グリフィス(Roland Griffith)は、サイロシビンの研究を行う前、長年にわたってカフェインの離脱症状についての薬理学的な研究を行っていた。

離脱症状の例として、頭痛、短気、集中欠如、疲労感、過眠、胃・上半身・関節の痛みが挙げられており、カフェインの長期的な使用によって、依存が作られる可能性も指摘されている。いずれも、覚醒剤に比べて軽度とのことだ。

1819年、ドイツのフリードルップ・ルンゲにより、カフェイン(caffeine)が単離されたが、それ以前より、人類はカフェインをうまく活用していた。次回のブログ記事では、東洋と西洋ではカフェインの活用の仕方が対照的なので、その点をまとめたい。

まとめ

今回は、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインとは何か?精神刺激薬(stimulant)として分類されるカフェインは、脳にどのような影響を及ぼすのか?脳への影響、特に、集中力と目覚めについて取り上げた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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