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【N#168】コレステロールとは?③〜血液検査(LDL-C、HDL-C、TC、TG)

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

コレステロール値をどう測定するのか?

前々回、コレステロールとは何か?前回は、血液に溶けないコレステロールが、どのように運ばれるのか?「運び屋」であるリポ蛋白質を中心にまとめた。

リポ蛋白質には、いい(例、HDL)・悪い(例、LDL)というのはないこと。脂質(中性脂肪、コレステロール等)を運ぶために、全てのリポ蛋白質が必要であることが理解できたのではないかと思う。

今回は、コレステロールは、どのように測るのか?HDL-C、LDL-Cを含め紹介したい。

リポ蛋白質という「運び屋」の発見

科学者は、1940年代までに、コレステロールと脂質(中性脂肪、脂肪酸、リン脂質)が血液の中を自由に流れることができない(油は水に溶けないため)ことが明らかとなっていた。一方で、血液に溶けない脂質がどのような形で運ばれるのか?その「運び屋」を特定する手段がなかった。

第二次世界大戦時に、ハーバード大学のE. J. Cohnと、J. L. Oncleyが、血清中のリポ蛋白質を2つのクラスに分けた。すなわち、電圧をかけた時に、物質の流れ方(電気泳動法)によって、α流動性、β流動性の2種類のクラスを特定。α流動性を示すのが、HDL、β流動性を示すのがLDLであることが判明する。

その後、John Gofmanによって、超遠心分離法(遠心力を使って、物質を分けていく方法)を使ってリポ蛋白質を分ける方法を発見。以下の表のようにリポ蛋白質を分けることができた。

直接測定できるのは〜TC値、TG値、HDL-C値

さて、医師が患者のサンプルを血液検査会社に依頼した時、中性脂肪、HDL-コレステロール(HDL-C)、LDL-コレステロール(LDL-C)、non HDL-C(HDL-コレステロールではない、LDL-C + VLDL-C)は、どのように測定され、数字化されるのか?

血液から直接測ることができるのは、
1)コレステロール(全体)→総コレステロール値
2)中性脂肪(全体)→中性脂肪値(TG値)
3)HDL中にあるコレステロール→HDL-C値
の3つだ。

HDL-C値を直接測定できるのは意外と思うかもしれない。

実は、リポ蛋白質の構造を安定化させるためには、「アポ(リポ)蛋白質」の存在が不可欠。前回、取り上げたように、心臓病との関係では、Apolipoprotein A-I(ApoA-I)とApolipoprotein B(ApoB)の2つのが注目されている。

ApoA-Iは、HDL、ApoBは、LDL、VLDL、IDLを含む。リポ蛋白質の中で、ApoA-IとApoBを分けるのは簡単だが、ApoBの中のLDL、VLDL、IDLを分けるのは難しい。そのため、ApoA-Iを含むHDLを直接測ることができるのだ。

LDL-CはFriedewald式から計算する

では、LDL-Cはどのように測るのか?なんといっても、リポ蛋白質の中でも、動脈壁の中に直接運ばれ、血管をつまされる原因となるだけではなく、最も多くのコレステロールを運ぶ「運び屋」として知られているからだ(悪玉コレステロールと言われている所以)。

直接LDL-Cを測定する方法はなく、正確には以下の計算式で求めることができる。

総コレステロール(TC値)=LDL-C値+HDL-C値+VLDL-C値+IDL-C値+カイロミクロンC+レムナントC+Lp(a)C

レムナントCは、カイロミクロンやVLDL中の中性脂肪とリン脂質が失われ、小さくなった状態のリポ蛋白質。Lp(a)は、LDLに似た物質で、特別な「アポ(リポ)蛋白質」のLp(a)が結合している。

IDL、レムナント、カイロミクロン、Lp(a)は、非常に低い値を示すため、ゼロと近似。計算式を以下のように変えることができる。

総コレステロール(TC値)=LDL-C値+HDL-C値+VLDL-C値

更に、1970年代に入り、Friedewaldの計算式が開発され、VLDLの中のコレステロールの濃度が、中性脂肪の5分の1と推測すると、辻褄が合うことがわかった。すると、計算式は以下のように変化。

総コレステロール(TC値)=LDL-C値+HDL-C値+TG値/5

何と、コレステロールとHDL-C値、TG値の3つでLDL-C値を推測できるようになった。

LDL-Cの問題点〜中性脂肪が高いと誤差が出る

問題なのは、
1)この計算式は、カイロミクロンをゼロと見做していること
2)TG値が高くなるとVLDLとカイロミクロンのコレステロールの比率が相対的に低くなり、LDL-C値が実際よりも低くなる。
3)Friedwald式が適用できるのはTG値が400mg/dL未満。TGが200mg/dLを超えるあたりからだんだん誤差が大きくなる!

このように考えると、LDL-C値は推測値に過ぎず、TG値と合わせて考えていく必要がある。参考に、LDL-Cは直接測る方法もあるが、標準化されていない。

心臓病予防で注目は?〜LDL-CよりLDL粒子数、ApoB

LDL-Cは、LDL粒子の中でコレステロールの量のみを測っている。LDLの大部分はコレステロール。一見問題なさそうだが、実際は、中性脂肪が多く、コレステロールが少ない状態も想定できる。その場合は、LDL-Cは低く見積もることになる。

そこで、最近注目されているのが、LDLの粒子数。なぜならば、LDL-Cというよりも、(ApoBを含む)LDLの本体が、動脈の血管内皮の奥へ、血管を詰まらせる要因となるからだ。

NMR(核磁気共鳴)法を使用することで、LDLの粒子数(およびLDLの大きさ)を測定することができる。興味深いことに、LDL1分子には、ApoB1分子が含まれることも明らかになっている(LDLとApoBは、一対一に対応する)。そこで、血液検査で、ApoBを測定することもできる。そして、ApoBの90-95%はLDL。

心臓病を予測する際に、信頼度が落ちるLDL-Cよりも、LDLの粒子数やApoBの方が、LDL-Cよりもはるかに信頼できるのではないかと、注目している米国の循環器の医師たちがいる。

砂糖の取り過ぎは問題〜中性脂肪、ApoB上昇

実は、砂糖(特に果糖)の取り過ぎにより、血中の中性脂肪(TG値)が上昇。中性脂肪を運ぶVLDLが上がり、ApoBも上昇。逆にHDL-CとApo A-Iが減少することが明らかになっている(砂糖を減らすと、中性脂肪が減る)。砂糖や、澱粉を含む食事を抜いた状態で、脂肪を摂ると、中性脂肪が増えない。

中性脂肪が上がった状態(メタボリック症候群等も含む)だと、LDL-Cが低く、LDLの粒子数(ApoB)が高くなり、2つの評価項目との間に乖離(不一致)が起きる。

まとめ

今回は、血液検査で、コレステロール値をどう測定するのか?を中心に情報をシェアさせていただいた。

LDL-Cは、TG値、TC値、HDL-C値から計算できること。直接LDL-Cを測ることができるが、LDL-C自体、中性脂肪によっては、低く見積もられる可能性がある。そこで、登場するのがLDLの粒子数とApoB。

後者のApoBは血液検査で測定できるので、ApoBは、心臓病の予防を見ていくために注目されている。次回は、心臓病とコレステロール、ApoBとの関係について見ていきたい。

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