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【N#163】コレステロールとは?②〜リポ蛋白質、血中の運ばれ方、善玉・悪玉はあるのか?

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

前回に続き、コレステロールについてまとめた。人間にとってコレステロールは大事なものなのにも関わらず、なぜ、血液検査では、心臓病・脳卒中のリスクとして恐れられているのか?コレステロールを取るのはまずのか?等。思いの外、コレステロールについて知られていないのではないかというのが、まとめる動機だった。

今回は、どうしても避けて通れない、コレステロールがどのように血液の中で運ばれるのか?を中心にまとめさせていただいた。少しでもこの投稿が役立つことを願って。

コレステロール&中性脂肪〜脂溶性の性質を持つ

コレステロールの特徴の一つは、水に溶けない(脂溶性)(英語でhydrophobic、水に溶けることをhydrophilic)という点。「コレステロールとは?①〜食事、作り方、役割」に書いたようにコレステロールは、人間にとって必要不可欠な物質だ。

厄介なのは、水溶液の血液にコレステロールは溶けない。血液のA地点からB地点へ運ばれるためには「運び屋」が必要となる。実は、細胞のエネルギーとなる、中性脂肪(Triglyceride)も、コレステロールと同じように脂溶性のため、同じ「運び屋」で運ばれる

「運び屋」は3つ〜アルブミン、赤血球、リポ蛋白質

主な「運び屋」は、
1)アルブミン(肝臓で一番多く作られる蛋白質)
2)赤血球(細胞膜)
3)リポ蛋白質(Lipoprotein)
の3つだ。

アルブミン

アルブミンは、肝臓で作られ、血液の6割を占める蛋白質だ。アルブミンは万能な「運び屋」として知られ、
1)性ホルモン(テストステロン、エストロゲン、プロゲステロン)
2)薬
3)アミノ酸
4)脂肪酸
5)イオン
等、様々な物質を運ぶ。意外と思うかもしれないが、コレステロールも17分子程度、運ぶことができるのだ。

赤血球(細胞膜)

2)の赤血球には「細胞膜」がある。赤血球の細胞膜が安定するためにコレステロールが必要。逆に、赤血球にコレステロールが不足すると「溶血」し、赤血球の主要な働きである「酸素」を運ぶ役割を果たせない。驚くべきことに、赤血球は、リポ蛋白質の合計よりも多くのコレステロールを運ぶことができる。

リポ蛋白質よりも多くのコレステロールを持つのに、なぜ心臓病(動脈硬化)では、赤血球が注目されないかというと、赤血球自体が大きく、血管の内部の内皮細胞に入っていくことができない。実は、血液を詰まらせるには、ある程度の分子の大きさが小さい必要があるのだ。

リポ蛋白質

3)のリポ蛋白質は、血液検査で登場する、悪玉コレステロール(LDL)や善玉コレステロール(HDL)等を表す蛋白質(Lは、リポ蛋白質(lipoprotein)のLだ)。リポ蛋白質を知ることは、心臓病や脳卒中の予防につながるので、ぜひ知っておいた方がいい。そこで、以下リポ蛋白質について紹介したい。

リポ蛋白質〜脂質を運ぶ

リポ蛋白質とは?〜名称と構造

脂質(コレステロール、中性脂肪)を運ぶ蛋白質のことを「アポ蛋白質(Apoprotein、Apoと略す)」と呼ばれ。脂質とアポ蛋白質が結合すると「アポリポ蛋白質(Apolipoprotein)」になる。脂質を運ぶための「運び屋」を抱えている蛋白質のことを「リポ蛋白質(lipoprotein)」と呼ぶ。

リポ蛋白質の名前が示すように、半分脂質、半分蛋白質の球形の構造を取っており、リン脂質の膜構造(細胞膜と似た構造)を取っている。

リポ蛋白質の構造を安定化させるためには、「アポ(リポ)蛋白質」の存在が不可欠。心臓病との関係では、Apolipoprotein A-I(ApoA-I)とApolipoprotein B(ApoB)の2つのが注目されている。

2種類のアポ蛋白質〜ApoA-I、ApoB

ApoA-Iは、蛋白質のαヘリックスの構造をとっており、リポ蛋白質の中でも密度の高いものを束ねる役目があり、一方で、ApoBは、蛋白質のβシートの構造をとっており、密度の低いリポ蛋白質を束ねる役目を果たしている。

ApoBは、主にVLDL(Very low density lipoprotein、超低密度リポ蛋白質)、IDL(Intermediate density lipoprotein、中間密度リポ蛋白質)とLDL(Low density lipoprotein、低密度リポ蛋白質)にある。ApoA-Iは、HDL(High density lipoprotein、高密度リポ蛋白質)にある。参考にApoBの90-95%はLDLだ。

肝臓には、LDLのApoBを認識するLDL受容体があり、ApoBがLDL受容体に結合すると、血液から肝臓に取り込まれ、LDLが血中から除かれる。後述するように、VLDLやIDLには、LDL受容体をより強力に認識するApoEがあるため、LDLよりも早く除去される

リポ蛋白質の密度〜蛋白質と脂質の割合で決まる

リポ蛋白質は、表層にリン脂質、コレステロール(フリー)、深層(内部)にコレステロールエステル、中性脂肪を抱えながら、脂質を運ぶことができる。

リポ蛋白質は、密度のよって分類される。参考に「密度」を決めるのは、蛋白質と脂質の割合だ。蛋白質の割合が上がれば上がるほど「密度」が上がり、「密度」が下がれば、脂質の割合が高い。密度順の蛋白質、コレステロール、リン脂質、中性脂肪の割合は、以下の表のようになる。

大きさを下記の図に示す。

リポ蛋白質の密度が低い→コレステロールの濃度が高い

リポ蛋白質の特徴は、
1)ApoA-Iを含むHDLは、VLDL、IDL、LDLに比べ小さい。
2)粒子が小さくなればなるほど、中性脂肪の量が減少し、蛋白質の量が多くなる。
3)コレステロールの量は、LDLが最大。
4)VLDLは、中性脂肪:コレステロールエステル=5:1、LDLは、コレステロールエステル:中性脂肪=4:1、HDLは、コレステロールエステル:中性脂肪=90-95%:<10%になっている。
等が挙げられる。

要は、リポ蛋白質の大きさが小さくなるにつれて、コレステロールの濃度が上がり、中性脂肪の濃度が下がるのだが、これを理解するためには、身体内で脂質がどう処理されるのか?知る必要がある。

身体内で脂質はどう処理されるか?

脂質の消化・吸収〜カイロミクロンから筋肉、体脂肪、肝臓へ

脂質(コレステロールや中性脂肪)を含む食品を摂ると、胆のうから出る胆汁の助けを借りて消化。小腸まで到達する。小腸でリポ蛋白質のカイロミクロンが作られ、リンパ管、静脈、動脈を経由する間、中性脂肪を失いながら、レムナントに変化。最終的に目的地の肝臓に運ばれる。

カイロミクロンは、組織(筋肉と脂肪組織)にエネルギー(中性脂肪が脂肪酸に分解)を送り届けることと、肝臓にコレステロールを届ける役割を果たす。興味深いことに、コレステロールは食事由来もあるが、それはごく一部。

以前書いたように、消化管内にあるコレステロールの85%は体内で作られたコレステロール。脂質の代謝に必要な胆汁にはコレステロールが含まれており、肝臓から胆汁を経て、消化管にコレステロールが排泄される。このためカイロミクロンに含まれるコレステロールの大半は、体内由来だ。

カイロミクロンの半減期は数分と考えられ、リンパ管、血中にあったとしても素早く処理される。最終目的地の肝臓によって速やかに回収される(カイロミクロンにはApoEが多数あり、肝臓のLDL受容体と結合することで、肝臓に取り込まれる)。

肝臓から全身へ〜VLDLの役割は?〜中性脂肪とリン脂質

肝臓では、新たにリポ蛋白質のVLDLが作られ、コレステロールと中性脂肪が全身に運ばれる。

カイロミクロンに比べたらVLDLの大きさは、小さいが、他のリポ蛋白質(IDL、LDL、HDL)に比べると大きい。注意したいのは、VLDLの役割は、コレステロールを運ぶことではなく
1)中性脂肪(エネルギー)を筋肉に届けること
2)リン脂質を全身の細胞に送り届けること
の2つ。

コレステロールは、VLDLの球状構造の安定考えられている。

血中のVLDLは、様々な細胞に送り届けられる。VLDLが血中を動いている間、中性脂肪(加水分解により脂肪酸へ)とリン脂質(細胞が細胞膜として利用する)を手放し、大きさが徐々に小さくなる。

VLDLの半減期は数時間と推定されていて、大部分は肝臓によって回収される(カイロミクロンと同じくApoEがあるため、肝臓のLDL受容体と結合することで回収)、一部は、IDL、LDLへと変身していく。

一方で、多くのIDLは、肝臓によって血中から取り除かれることも知られており、VLDLと半減期が近い(IDLには、ApoEがあるので、カイロミクロンとVLDLと同じように回収される)。

半減期の長いLDLは、心臓病のリスクにつながる

IDLがLDLに変わるのはごく一部と考えられている。LDLは半減期が数日に及び、より血液に留まる(ApoEがないために処理に時間がかかるが、ApoBはLDL受容体として働くので(ApoEより弱い)、最終的に肝臓に回収される)。

VLDLが中性脂肪とリン脂質を放出するので、LDLになる時に、密度の濃いコレステロールだけ残る。LDLは、肝臓にコレステロールを届ける役割を果たす。この役割を果たしている限り、心臓病になることはないが・・・。残念なことにLDLは、半減期が長いため、一部は、動脈の血管内皮の奥へ。血管を詰まらせる要因となるのだ。

LDLとHDLの役割は?

歴史的には、HDLが、血管に詰まっているコレステロールを回収し、肝臓にコレステロールを届ける(RCT、コレステロール逆転送(Cholesterol reverse transport))ことで、HDLは善玉コレステロールの役目を果たすと考えられていた。

最近、RCTの大半は、ApoBを含むLDLがコレステロールを肝臓に送り届けることが判明。何と、LDLも善玉コレステロールの役割を果たすこともわかってきた。

尚、HDLは、コレステロールをステロイドホルモンを作る細胞、脂肪細胞(コレステロールエステルを保管する細胞)、肝臓、消化管に戻す役割があることが知られている。このように考えると、コレステロールは、リポ蛋白質を通じて、肝臓とそのほかの臓器(筋肉、脂肪細胞)を行ったり来たりする。

VLDL、LDL、HDLはCETPを介して脂質を交換し合う

しかも、VLDL、HDLとLDLの中に入っている脂質をお互いに交換することが明らかになっている。しかも、同じHDL(LDL、VLDL)同士でも交換ができる。CETP(Cholesterol Ester Transfer Protein、蛋白質の一つ)がトンネルの働きをして、それぞれの脂質(コレステロール、中性脂肪)を交換する。

そのように考えると、HDLが善玉、LDLが悪玉と考えるのはナンセンスだということがわかると思う。

参考に、CETP阻害薬(分子標的薬)は日本でも承認されている。LDLコレステロールを下げるだけではなく、ApoBの値も下げることが可能なため、心臓病の予防の有用な薬として注目されている。

まとめ

前回に続き、コレステロールについて情報をシェアさせていただいた。今回は、コレステロールが体内でどのように運ばれるのか?リポ蛋白質についてまとめた。

次回は、コレステロールと血液検査について詳しくまとめていく予定だ。

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