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【N#155】体脂肪を溜める巧妙な仕組み〜果糖と尿酸値の深い関係

はじめに

こんにちは!東京・渋谷でロルフィング・セッションを提供し、脳科学を活用して健康寿命を延ばす方法を発信中の大塚英文です。

人生100年時代を迎え、定年も延びそうな時代。どのようにして、若さ、健康を保ちつつ、「健康寿命」を延ばして行くのか?海外を中心に話題になっており、「長寿(Longevity)」は一つのキーワードになっている。

以前、食生活によって蓄積する内臓脂肪と、内臓脂肪が身体に与える影響について書いた。今回は、体脂肪を増やす要因の一つとして、果糖が注目されているが、なぜ、注目されているのか?についてまとめたい。

人類は、尿酸を分解できない〜人類学的な観点から

Peter AttiaのThe Drive(ポッドキャスト)でRick Johnson博士との対談で初めて知ったことの一つ。腎臓内科医のJohnson博士は、20年前、果糖が、高血圧だけではなく、体脂肪の増加に関わっていることに疑問を持った。そして、その要因は、果糖によって作られる尿酸が原因であることが長年の研究によって明らかにしてきた。

長年の成果については「Richard J. Johnson, MD: Nature Want Us to Be Fat」に詳しい。邦訳が出ていないのが残念だが、英文が理解でき、ご興味のある方はチェックいただきたい。

実は、人間を含めた一部の霊長類は、尿酸を分解する酵素がない。一方で、他の哺乳類や霊長類は、ウリカーゼ(uricase、尿酸を分解する酵素)を持っている。

Johnson博士は、人類学者のPeter Andrews博士と共に、化石を解析し、興味深い仮説に辿り着いた。1700万年前、我々の先祖は、アフリカからヨーロッパへ移住。ヨーロッパは寒冷の気候であったため、類人猿たちは、食としていちじくを得にくくなったことへの適応として酵素を失った。

結果的に、果糖から脂肪への変換が効率よくなった。果糖を摂ると、尿酸が分解されにくくなる。尿酸が多いと脂肪が溜めやすくなったのだ。なぜ、果糖と尿酸が結びつくのか?その驚くべき仕組みについては、下記にまとめさせていただいた。

ブドウ糖と果糖の代謝の違い〜尿酸ができるか否か

食物を取り入れると、利用可能なエネルギーか、将来にエネルギーを使うため体内に保存される。利用可能なエネルギーはATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれ、大部分のATPは細胞中のミトコンドリア(別名、エネルギー工場)で作られる。ATPの量は厳密に生産管理されている。なぜならば、利用可能なエネルギーを作るためにATPが必要だからだ。

エネルギー(ATP)にできる炭水化物として有名なのはブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)だ。血糖値の糖は前者。後者は、果物、蜂蜜、アガベーシロップに含まれ、ブドウ糖より甘い。実は、ブドウ糖から果糖を人工的に作ることができる(異性化糖と呼ばれる)。砂糖より異性化糖の方が安いため、清涼飲料水に使われるようになった。

ブドウ糖が代謝される(代謝とは、利用可能なエネルギーに変えていくプロセスのこと)段階で、体内のATPの量が減少すると、ブドウ糖の代謝が止まることが知られている。ATPの量が回復するまで、代謝が動くことがない。参考に、ブドウ糖が代謝する際、一部ATPが使われ、リン酸が一つ取れたADP(アデノシン2リン酸)に変換されるが、速やかにATPに戻る。

果糖は、体内のATPの量が減少しても、代謝が止まることがない。果糖も代謝される際、ATPが使用されるが、速やかにATPに戻らず。ADPから更にもう一つのリン酸が取れ、AMP(アデノシン1リン酸)に変換。AMPを材料に、IMPを経由して、尿酸が作られるため、結果的にATPが失われてしまう=ATPが減少(エネルギーが不足)してしまうのだ。

尿酸値の上昇は?〜酸化ストレス、体脂肪の増加

AMPからできる尿酸は、ミトコンドリアに酸化ストレスを与え、ATPの作る能力を低下。と同時に、脂肪の産生を促す。極め付けは、体脂肪の燃焼を抑えるのだ。尿酸は、ミトコンドリアによるATP産生能力を低下させるだけではなく、本来ATPを作るはずのエネルギーを全て脂肪に変えてしまうのだ。

Johnson博士は、飢餓状態を耐え忍ぶため、必要に迫られて作られた「サバイバル・スイッチ(Survival Switch)」をONにする仕組みがあると提唱している。要は、果糖や尿酸は、飢餓状態にあると体内に気づかせてくれる物質なのだ。食事の摂取量が増加し、体内に体脂肪を溜める方向へとスイッチをONにする。

Johnson博士は、果糖が尿酸を作る仕組みとビタミンCを作り出す能力を失ったこととの間に関連性があると指摘している。次に書きたい。

果糖とビタミンCとの深い関係〜酸化ストレスと尿酸

人間や一部の霊長類は、ビタミンCを作る能力を失っている。ビタミンCは抗酸化物質の一つ。酸化ストレスから身を守ってくれる。ビタミンCが不足するとコラーゲンが作られず、風邪もひきやすくなるため、身体になくてならない。ビタミンCは、なぜ失ってしまったのか?実際、ビタミンCを多く含む果物は、自然界で探すのが難しいからだ。

Johnson博士は、酸化ストレスは人間にとって有益だからこそ、ビタミンCを作る能力を失わせたのではないかという仮説を唱えている。というのも、果糖を摂取すると、尿酸が作られ、ミトコンドリアは酸化ストレスの状態に置かれる。これが体脂肪を作ることにつながるので、飢餓状態の時に有益になる。一方で、ビタミンCはこの仕組みを抑えてしまうのだ。

面白いのは、果物が成熟するにつれ、果物のビタミンCの量が低下するのに対して、果糖の量は増加する。。動物にとって、成熟した果物を欲するのは、体脂肪を溜めるためではないかとJohnson博士は推測。逆に、ビタミンCを与えることで、このサバイバル・スイッチを抑制する可能性を含め、サプリとしてビタミンCをとることを推奨している。

では、果糖を摂取しなかったからって、大丈夫なのか?実は、体内でブドウ糖から果糖を作り出す、独自な仕組みも明らかになっていることを、次に話したい。

体内で果糖を増やす〜血糖値、水分、血圧、塩分

実は、果糖は、体内でブドウ糖から作ることができることが知られている(ポリオール合成経路と呼ぶ)。ブドウ糖からソルビトール、そして果糖へと変わっていく。実は、下記の条件で、ブドウ糖から果糖が作り出されることが明らかになっている。

1)血糖値が高い状態が続いた時
2)水分が不足している時
3)血圧が低い時
4)酸素が不足する
5)尿酸値が高い時
6)果糖を摂取する時
7)塩分を取りすぎる時

要は、果糖を完全に取らなくても、上記の条件が重なったときに、体内で果糖が作られ、サバイバル・スイッチがONになるのだ。

尿酸値を下げるサプリ〜ケルセチン、ルテオリン、ビタミンC、オメガ3

今まで、果糖から作られる尿酸が問題で、これが体脂肪の増加を抑えることにつながっていること紹介した。では、尿酸を抑えるためにどうしたらいいのか?

AMPから尿酸が作られる酵素を阻害する、処方薬や、ケルセチン、ルテオリンというサプリメント。尿酸によって酸化ストレスを軽減するビタミンCや、抗炎症物質のオメガ3等があるので、ご興味のある方、ぜひチェックいただきたい。

まとめ

今回は、脂肪がなぜ作られるのか?炭水化物の果糖からどのように脂肪がつくられるのか?尿酸がどのように増えるのか?を含め紹介させていただいた。この投稿が皆さんに役立つことを願っています。

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