【P#48】新型コロナの起源は(1)?〜「自然発生説」と「研究所流出説」〜動物から人への自然感染か、ラボから漏れたのか?〜どちらが有力なのか?
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はじめに
こんにちは!東京・渋谷(恵比寿)でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。
2020年1月から始まったコロナウィルスの感染症が流行して、明らかになっていないことが一つある。
「そもそも、新型コロナウィルスはどのようにして世界に広まったのか?」
についてだ。今回は、この問題について取り上げたい。
コロナウィルスの起源の2つの説:研究所流出説か?自然感染説か?
新型コロナウィルスの起源は、
1)武漢ウィルス研究所(Wuhan Institute of Virology、WIV)で研究していたウィルスが外部へ漏れた(研究所流出説)
2)コロナウィルスは、中国の武漢の生鮮市場で売買されていた動物を通じてウィルスは全世界へと広がった(自然感染説)
の2つが有力だ。
そして、双方を支持する証拠は今の所見つかっていない。
自然感染説が有力でなければならない理由とは?
本来ならば「自然感染説」と「研究所流出説」を同列に扱うべきだったのが、
どういうわけだが「自然感染説」の方が有力であると報道されることが多い。
実際、私自身も当初、生鮮市場で売買されていた動物から新型コロナウィルスの流行が始まったと信じていた。
第一に、
流行直後に、
1)2020年2月、欧米の主要臨床雑誌のLancetが27名の科学者の連名で文書(statement)を発表(2020年2月)
「研究所流出説には証拠や根拠がなく、新規コロナウィルスが人工的に作られたことは「反中への陰謀説(Conspiriacy theory)」だと断定」
2)Nature Medicineに新規コロナウィルスが人工的ではなく、動物から人へ自然感染していることを科学的に報告した(2020年4月)
の2つの権威のある臨床雑誌が発表されたこと。
第二に、
トランプ政権が、
「WIVから新型コロナウイルスが漏洩、発生源となった可能性を確信している」
と発表(2020年4月30日)。
「コロナウィルスに対する研究費を打ち切るぞ!」と脅し、反トランプのマスコミの勢いが増し、いつの間にか「反中国の陰謀説」と「研究所流出説」が結びついた。
第三に、
Facebook、Googleで「研究所流出説」「コロナウィルス人工製造説」の情報に「検閲」がかかったこと。
「フェイスブックが「新型コロナ人工説」を削除しないように誤報に関するルールを変更」まで続く(「検閲」の解除は2021年5月下旬)。
等だ。
「研究所流出説」については、WIV自体、コロナウィルスの感染力や病原性を強める「Gain of Function Experiment=機能獲得型研究」を行なっていることから流出した可能性が否定できない。
等をNewsweek、ニューヨーク・ポスト、FOXニュース等の少数の報道機関が報道していたが、限定的だった。
「研究所流出説」が有力になったきっかけは?
「研究所流出説」が有力な説として浮上したのは、
Nicholas Wadeが「Origin of Covid – Following the Clues」(2021年5月)
と
Katherine Ebanが「The Lab-Leak Theory: Inside the Fight to Uncover COVID-19’s Origins」(2021年6月)
が発表されて以降だ。
(英語が理解できる人はぜひチェックいただきたい!)
Nicholas Wadeは、サイエンスライター。
科学的な視点から「研究所流出説」と「自然感染説」を取り上げ、それぞれについて証拠はないものの、2つの説を考慮する必要があると説明している。
Katherine Ebanは、Investigative Reporter(調査報道記者)。
製薬業界のジェネリック医薬品や偽造の問題を取り上げたこともあり、医療業界に詳しい。
米国の政府関係者への膨大なインタビューを通じて「研究所流出説」の可能性を紹介している。
この2つから「研究所流出説」に光が当たるようになり、メインストリームの報道機関であるWall Street JournalやNew York Timesが報道するようになった。
以下、
1)宿主(動物)が見つかっていないこと
2)ウィルス研究者の予算獲得と利益相反の問題
3)素人集団のDRASTICの登場
4)コロナウィルスの杜撰な管理
の4つのポイントから説明していきたい。
宿主(動物)が見つかってないこと
中国政府は、武漢の生鮮市場から新型コロナウィルスの流行が始まったと発表した(2019年12月)。
しかしながら、これについては疑念がある。
1)2003年にSARSが流行した時、4ヶ月後にコウモリからイノシシを経由、生鮮市場で人間に感染したこと。
2)2012年にMERSが流行した時、9ヶ月後にラクダを経由して人間に感染したこと
がそれぞれ明らかになっているのに対して、未だに証拠となる動物が見つかっていない。
ウィルス研究者の予算獲得と利益相反の問題
2020年2月のLancetの文書をまとめたのが、ニューヨークに拠点があるNPOの一つEcoHealth Alliance(EHA)の総責任者(President)、Peter Daszakであることが判明。
Daszakの組織が米国の国立衛生研究所(NIH)の下部組織である国立アレルギー感染症研究所(NIAID)(研究所長はAnthony Fauci)に研究費が供給(2014年6月〜2019年5月)
EHAからWIVに資金が流れていた。
厄介なのは、オバマ政権の時(2014年10月)、インフルエンザ、MERS、SARSの「機能獲得型研究」に対するMoratorium(支給停止の意味)を発表。
「公衆の健康や国民の安全を脅かす場合は例外として」全ての研究費の支給を停止した頃に行われたことだった(Moratoriumはトランプ政権の1年目(2017年)に解除)。
EHAは、NIAIDの研究費から3,700,000米ドル(約3億7千万円)を確保。
WIVに籍を置く石正麗博士は、North Carolina大学のRalph Baric教授と共同で、SARSの感染力を高めた人への感染度合いを調べる実験をNature Medicineで報告(2015年11月)している。
2018年までにEHAは、国防省を含め国から年間15,000,000米ドル(約15億円)を得、石博士は、米国から1,200,000米ドル(約1億2千万円)の研究費が支給されていた。
問題なのは、Daszakがイニシアチブをとり、Lancetの原稿をまとめたことがわかったことだ(2020年11月)。
本来、動物から人へ感染することを事前に予防するためのコロナウィルスの研究が行われた。
しかしながら、
「研究所から漏れたことが証明されたらどうなるか?」
困るのは、研究費を支給するDaszakやウィルスの研究者たち。
「研究所流出説」が有力となれば、政府からの研究費が打ち切られる可能性が高い。
これを恐れて、Daszakが動いたのではないかとFauci博士を含め、疑惑の目が向けられている。
現に、LancetとNature Medicineの文書をよく読むと、科学的に説得力があるものではなく、どちらかというと「研究所流出説」を必死に隠しているような内容になっている。
DRASTICの登場〜アマチュアの探偵の登場
「自然感染説」を疑い、証拠を集めたのが、科学者たちではなく、素人集団だった。
アマチュアの20数名の探偵が「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」の場が生まれる(「「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!」参照)(2020年5月)。
やがて、DRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型であり、急進的な「匿名」の調査チームの略)の名前で活動するようになる。
新規コロナウィルスの構造は、石博士によりNatureへ発表された(2020年2月)。
この論文で、RaTG13(コウモリコロナウィルス)を取り上げられている。
論文には
「RaTG13は、中国南部の雲南省の洞窟に生息するコウモリ由来のウィルス」
と書いてあるだけで、
「いつ、どのようにRaTG13が発見されたのか?」
について書いていなかった。
RaTG13に目をつけ、「自然発生説」に対して疑いを示したのが、
在野のカナダ人のバイオテクノロジーの起業家Yuri Deiginだった。
Deiginは、分子生物学の知識を下に、エッセイをMediumへ投稿(2020年4月)。
RaTG13を含め、様々な関係する遺伝子を組み合わせることで、新型コロナウィルスが人工的に作られた可能性を初めて指摘したのだ。
DRASTICチームは「RaTG13」の起源を探れば「研究所流出説」が解明できるのではないか
と考え、情報収集を開始。
1)雲南省の墨江ハニ族自治県にある鉱山の坑道でコウモリ由来のコロナウィルスは人に感染すること
2)RaTG13は、坑道から発見されたRaBtCoV/4991と同じものであること
を明らかにしていく。
まず彼らは、WEBを調べていく最中に、中国の学術誌のデータベースCNKI(中国学術文献オンラインサービス)を発見。
検索ワードを入れていき、昆明医科大学の院生が2013年に提出した60ページに及ぶ修士論文を見つける。
中国語だったので、Google Translatorを使って英訳した。
わかったことは、雲南省の鉱山坑道中のコウモリの糞の清掃中の坑夫6名が、数週間清掃中、重篤な肺炎(新型コロナウィルスに似た症状)を呈し、3名が死亡したこと(2021年10月)。
病院で診察を受けた結果、SARSの抗体が陽性であったこと。
患者を担当した医師が「修士論文」にまとめていたのだ。
問題だったのは、この事実が隠蔽されていたことだ。
しかしながら、この事実がわかると、なぜ、石博士が、WIVはコウモリ由来のコロナウィルスを2014年〜2016年までの間、必死になって集めていたのか?が理解ができるし、
雲南省の鉱山坑道中からSARSと似た配列のウィルスを発見し、RaBtCoV/4991の存在を明らかにしたことも見えてくる。
その後、何とDRASTICのチームは、RaBtCoV/4991が、RaTG13と同じ配列であること解明したのだ。
コロナウィルスと杜撰な研究所の管理
ウィルスの研究を行う際、危険度に応じて、BSL(Biological Safety Level)1〜4まで定められており、4は、宇宙服並のものを着用が必要。
WIVでは、BSL4を扱う施設があるが、コロナウィルスは、BSL2か3という厳密ではない状況で行われていたことを石博士は雑誌Scienceへのインタビューに答えている。
SARSのウィルスは、シンガポール、台湾、北京で漏れたことが報告されており、ひょっとしたら、今回も当てはまる可能性がある。
まとめ
新型コロナウィルスの起源説について、最近まで明らかになってきたことを紹介した。
米国のバイデン政権も90日間の調査を開始した(2021年7月)。
果たして「研究所流出説」はどうなるのか?ぜひ、見守っていきたい。
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