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【B#256】スペシャリスト神話の崩壊と、価値喪失の正体、その時代をどう生きるか?──湯川鶴章著『生成AIで心が折れた』を読んで

はじめに

渋谷を拠点に、ロルフィング®やコーチング、タロット、脳活講座を行き来しながら、考えること・感じること・身体感覚(肚・丹田)が、自然にひとつの判断としてまとまっていく状態を取り戻すための場をつくっている大塚英文です。

今回、ご紹介させていただきたい本は湯川鶴章さんの生成AI(人工知能)で心が折れたー強みがなくなる世界でどう再起動するか』だ。

2024年、人工知能をテーマに、様々な書物を手に取ったが、この本は、全く異色の印象を受けた。AIの解説書でも未来予測本でもない。なのに、すごく響く内容になっている。生成AIによって「自分の存在価値」が揺らいだ、一人のITジャーナリストがどのようにAIと付き合っていくのか?、葛藤の中で生み出された一冊に感じた

この本を2026年の1月初旬に拝読。すごく面白かったので、本の内容と感想をブログにまとめたい。まずは、著者の湯川さんとの出会いからご紹介したい。

湯川さんとの出会い──MUSE2と瞑想

私は、2020年代に入ってから本格的に瞑想に取り組むようになる。コロナ禍の頃の2021年1月から、瞑想を実践していく中、様々なデバイスがあることを知った。中でも、脳活動計測デバイス・MUSE2と呼ばれるデバイスに興味を持つようになり、2021年12月23日に購入した

MUSEは、NASAやマサチューセッツ工科大学でも利用されている高い技術で瞑想を可視化し、習慣化を助ける脳波を測定するデバイスだ。その第二世代がMUSE2だ。どのように活用したらいいのか?調べていく中、facebookのグループページ「自宅で脳波 Muse + MindMonitor」に辿り着く。

瞑想の実践者同士を繋げるグループの一つで、そのご縁でグループの管理者の一人湯川さんと知り合った。その後、何度か対面でお会いする機会に恵まれ、瞑想について様々なことを教えていただいた。そして、湯川さんの今回の新刊と出会うことになる。

「強みが通用しない世界」が、静かに始まっている

この本の冒頭で語られるのは、湯川さん自身が体験した、極めて個人的だが、誰もが感じることだった。

  • 30年以上磨いてきた英語力
  • 情報収集とリサーチという専門スキル
  • ジャーナリストとしての競争優位性

それらが、生成AIによって、役に立てなくなってしまうような世界。

湯川さんは以下のように表現している。

自分の特技だったと思っていたことに、もはや価値がない。いや、もともとそれほどの価値はなかったのだ。だからこれほどこうも簡単にAIに追い抜かれてしまったのだ

しかも、湯川さんは、今後あらゆる専門職が直面する体験するだろうと事例を挙げつつ、説得力のある文章で語っていく。

私も何気なく生成AIを使っているが、湯川さんによると、質問に答えるチャットをやり取りする「チャットボット」から、ユーザーに代わって専門知識を使って具体的なアクションを起こす「AIエージェント」へと進化しているらしい。

その活用例を、エンジニア、会計士、弁護士、コンサルタント等を事例に紹介しており、「スペシャリストであること」そのものが、価値の保証にならない時代に突入しつつあり、資格を取ったからって安泰の時代は終わりに近づいている予感さえ感じさせる。

スペシャリスト神話の崩壊と、リスキリングの限界

では、新しいスキルを身につけ、別の仕事の選択を選ぶという「リスキリング」はどうか?

例えば、

  • 新しい技術を学び直す
  • AIを使いこなす側に回る
  • 次の専門性を身につける

この本でも紹介しているが、リスキリングだけでは、「スペシャリスト」の問題等、解決するわけではないことを語っている

新しい知識が陳腐化されるというのもあるが、AIも進化を続けている。例えば、2023年に「考えるAI」すなわち論理的に物事が考えられる「リーズニング(論理的思考)モデル」というイノベーションが起きた。それによって、AIが「物知りAI」から「考えるAI」から変化していったからだ。

このような時代の流れがあるので、単にリスキリングだけでは十分ではなさそうというわけだ。

では、どのようにしたらいいのか?

ここで、思いの外、湯川さんは、意外な人物を取り上げる(私自身も、この本を読むまで知らなかった人物だった)。生成AIを最初に世に出したOpenAIのCEO、サム・アルトマン(Sam Altman)のメンターである、エグゼクティブ・コーチのジョー・ハドソン(Joe Hudson)。

ハドソンは、長年にわたってシリコンバレーのスタートアップのCEOやトップリーダーにコーチングを提供。リーダーの内面(感情、瞑想、感情知性)のスキルをどう向上させていくのか?の仕事に関わっているという。

アルトマンはハドソンの存在について、以下のように述べている。

彼のスーパーパワーの一つは、感情の明晰さとそこに到達する方法を深く理解していることで。これはAGI以降の世界で最も重要なスキルの一つになるでしょう。

そして、ハドソンの「努力なしに感情知性(EQ)を高める方法(How to be more emotionally intelligent (without trying so hard) )」というタイトルのXの投稿に対して、これこそが、AI時代のに最も重要なスキルの1つだと絶賛している。

Joe Hudsonの「頭・心・腹」理論が示す、AIに代替されない領域

ハドソンが提唱する「頭・心・腹(Head・Heart・Gut)」の考え方は、私自身もすごく納得できる。以下、おそれぞれの役割を言葉にすると、以下のようになる。

  • 頭(Head)
    論理、分析、思考、戦略
    → ここはAIが最も得意とする領域
  • 心(Heart)
    感情、共感、つながり、意味
    → 他者と共鳴する力
  • 腹(Gut/肚・丹田)
    身体感覚、直感、覚悟、決断
    → 言葉になる前の「Yes / No」

興味深いのは、Xで公開されている、「努力なしに感情知性(EQ)を高める方法(How to be more emotionally intelligent (without trying so hard) )」の含蓄ある言葉だ。

本では、湯川さんの「頭」「心」「腹」の各項目で印象深い言葉を選んでいる。下記に、原文の英語と共に紹介したい。

「頭」と「思考」をどう見るか?

物事が「白か黒か」でしか考えられないとき、心の奥では恐れが支配している。
When thinking becomes rigid and binary, fear is in charge.

「自分にはどうにもできない」という思い込みこそ、最も強い抑圧だ。
When you feel oppressed, the greatest oppressor is often the belief that nothing can be done.

エゴとは「自分はこうだ」という思い込みと「自分はこうではない」という思い込み、その両方でできている。
The ego is formed as much by what we believe we are not as by what we think we are.

無条件の愛とは、相手の喜ぶことをすることや、面倒を見ることではありません。自分の軸を大切にしつつ、相手の自由を尊重することだ。
Unconditional love is not caretaking or compliance—it is honoring your truth while respecting others’ choices.

「特別でありたい」という欲求は、自分が何者かを知らない時に生まれる。
The need to feel special only exists when you don’t know who you really are.

「心」と「感情」をどう扱うか?

無気力や落ち込みを感じるとき、その裏には表に出せない怒りが隠れていることがある。
Freeze and depression often come from unexpressed or suppressed anger.

怒りそのものは、実はとても純粋で美しいエネルギーだ。人を変えようとしたり支配したりする時、それは怒りではなく「操作」だ。
Pure anger is beautiful. Trying to change or control someone else is not anger—it’s manipulation.

喜びはいろんな感情を連れてやってくる存在だ。悲しみや怒りなどを受け入れられないと、喜びも訪れにくいのだ。
Joy is like the matriarch of the emotional family—it won’t show up unless all the other emotions are welcome.

心と平和とはイラッとしないことではなく、イラッとしてもその相手や物事を嫌いにならないということだ。
Peace is not the absence of disturbance—it is the capacity to stay present with disturbance without aversion.

「腹」の声や「身体感覚」を感じるか?

頭の欲求には意志の力が必要だ。でも「心からの欲求」なら、自然と動けるものだ。
Willpower is required for what the mind wants. What the heart wants doesn’t require force.

不安を感じているとき、その正体は「押さえ込んだワクワク感」かもしれない。
Anxiety is often excitement that has been repressed.

自分をさらけ出すのは怖いことだ。けれど、その怖さを超えた先に「ありのままの自分が愛される人生」が広がっている。
You can only be accepted if you are real. Masks may gain approval, but not belonging.
The things you’re most afraid to reveal are often the fastest path to love and freedom.

「有名」「知られている」は本当の意味で「理解され、愛される」とは違う。
Being “known” is a poor substitute for being understood.

完璧というゴールは存在しません。あるのは「次はどんな実験をしてみよう?」という遊び心だけ。
There is no final “done.” There is only the next experiment, the next moment of play.

まとめ──AIに代替されない「本質」とは何か

この本を読み終えて、真っ先に思い浮かんだのは、下記の問いだった。

「私は、何者であろうとして生きているのか?」

そして、スキルでも、肩書きでも、専門性でもない。AIによって削ぎ落とされたあとに残る、

  • 身体感覚
  • 感情
  • 関係性

そこにこそ、人間の本質があるのではないか、と思うようになってきた。

『生成AIで心が折れた』は、AI時代の生存戦略ではなく、AI時代にどのように生きるのか?在り方(BEING)を問う本のように感じた。

技術の進化に不安を感じている人ほど、そして、これまで「頭」で生きてきた自覚のある人ほど、静かに、深く、刺さる本だと思います。

ぜひ、人工知能に関して、どのように向き合っていったらいのか?知りたい方にオススメしたい一冊だ。

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