【N#80】医療機関で、必要以上に薬が使われ、栄養や食事、生活習慣の改善が大切にされていないのはなぜか?
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はじめに
こんにちは!東京・渋谷(恵比寿)でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。
私は、製薬業界を含め、医療業界に20年以上関わってきた。
製薬業界の中で学術(現メディカル・アフェアーズ部門)やマーケティング部門に所属。
メインは、医師向けに医薬品に関連した「学術論文」や「医療情報」の提供や、医薬品の特徴をわかりやすく、どういったメッセージを伝えていったらいいのか?が仕事だった。
そこで感じたことの一つとして、必要以上に薬が使われているのに対して、栄養や食事、生活習慣の方はあまり大切にされていないことだった。
なぜ、栄養や食事を含めた生活習慣を見直し、病気の予防にあまり目を向けていないのか?
実は、医学部の中の教育の仕組みにあると指摘している専門家がいる。
今回はその声を中心にこの問題について取り上げたい。
米国での栄養の教育はどうか?〜4年間で20時間
全米の医学界、栄養業界、製薬業界が震撼させた1冊の本がある。
中国で食事について大規模な疫学調査を行った「チャイナ・スタディー 葬られた「第二のマクガバン報告」(CHINA STUDY)」(コリン・キャンベル著)(以下CHINA STUDY)だ。
中国での食事に関する大規模疫学調査(CHINA STUDY)の全貌を紹介。CHINA STUDYの結果、蛋白質を過剰に取ることは、癌を発生させるリスクが高まるので、菜食主義を勧めている。
もちろん、この本は参考になるところが多いが、賛否両論もある。
どこかのタイミングで、この本について取り上げられれればと思う。
個人的には、食品業界、医療業界、製薬業界の問題点について書いているところに興味があった。
面白いのは、著者のコーネル大学栄養学部のコリン・キャンベル教授が、「CHINA STUDY」で、米国の医学部教育における栄養教育の位置づけについて触れていることだ。
1985年の米国のNational Research Councilの報告書によると、米国の医学部の大学院では4年間のうち、授業で受けるのは、合計で21時間(学校でいう2単位)のみ(参考に、日本は医学部教育は6年間だが、米国は4年の大学を卒業してから、新たに4年間大学院として医学部に入学。合計8年かかる)。調査した大半の医学部は、20時間以下になるらしい。
米国の医学部で週30〜40時間勉強すると考えると、すごく少ない。
実際、コーネル大学の栄養学部では、栄養の教育は250〜500時間(25〜40単位)で、認定栄養士は、500時間の教育を受ける。
キャンベル教授によると、医学部の1年生に基礎教育の一環として、栄養学が提供されていること。物質の代謝、生化学の代謝経路などが中心で、公衆衛生の問題、例えば、肥満、がん、糖尿病との関連で教わることがないそうだ。
さらに、厄介なことに、公衆衛生の問題の栄養教育の教材を誰が提供するのか?
意外と思うかもしれないが、製薬業界、食品業界やこれらの関連団体が資料を提供し、実際に影響を及ぼしているとも言われている。
英国の医師と栄養について
英国のBritish Medical Journal(BMJ)にも面白い報告がある。
調査に参加した853名の英国の医師の大半(>90%)が栄養が健康において重要であることや、ほとんど(>95%)が、医師が栄養に対して一定の役割を担うことに同意している。
一方で、米国の医学部の教育と同じく、英国でも実際に栄養に割かれる時間が少なく、大半(>70%)は、2時間以下と報告している。
驚くべきことに、わずか26%の医師が、栄養の知識に自信を持っており、74%の医師が月1回未満、栄養のアドバイスをしたという。理由として、知識不足(75%)、時間(64%)、自信(62%)をあげている。
日本の医学部で、栄養の教育で費やされている時間は?
日本はどうか?
「大学における臨床栄養教育の現状と課題~医師のため の栄養教育はどうあるべきか?~」には、日本は臨床栄養に関する教育は重視されてこなかったことや、近年、医学部教育の中に栄養管理に関する講義が増やす医学部は増えてきているが、欧米に比べると、栄養の講義時間数はまだ十分といえない現状があるとのこと。
この報告には、2004年の報告を紹介。独立した栄養学の系統的な講義がされるような医学部の大学は24.6%増加しているが、5時間以上の講義があるのは8校14%に過ぎず、まだまだ十分な栄養教育が施されてないと指摘している。
実際、日本の臨床実習の平均時間は、平均2174.1時間だった(2017年の調査)。
どうやら、栄養や食事、生活習慣の方はあまり大切にされていないことは、世界的にみて大学の教育の仕組みに問題がありそう。
もちろん、医療に関して、膨大な知識が求められている事を考えると、やむをえない部分はあると思うが。
製薬業界にいて感じたこと〜食品業界との違い
製薬会社では、一つの専門分野に対して、狭く深く研究を行うことで、薬を開発して、世に出していく。
そのために莫大な開発費(1,400億円、売上高に占める研究開発費は12%)やマーケティング費用を費やし、教育用資材を作った上で、医師へ情報提供していく。
製薬会社は売上が多いので、莫大な費用を使うことができる。その上億単位を投資し、大規模な臨床試験も行い、医療の資材も費用をかけているので、食品業界(例えば、特定保健用食品の開発費は数億円、売上高にしめる研究開発費は3%程度)に比べると、声は自ずと大きくなる。
日本の栄養学はどこで教えているのか?〜農学部、家政学部が中心
参考に、栄養学がどこがメインで教えられているのか?
日本では、栄養学は、農学部、家政学部、医学部(のなかの栄養学科)、管理薬剤師を養成する学校で教えられている。
幸運なことに私自身は、農学部で食品化学、畜産学、水産学、発酵学、分子生物学、生化学、有機合成化学等を学ぶ機会に恵まれた。
農学部では、食品の安全性を畜産、水産、発酵(微生物)、作物の視点から学ぶことができ、食品会社又は製薬会社で新商品開発者を目指す人が多い。実際、ビタミンの発見や、作物の品種改良等に結びついている。
まとめ
今回は、必要以上に薬が使われている一方で、栄養や食事、生活習慣の方はあまり大切にされていないことについて、米国、英国、日本からみた医学部の教育や、製薬業界について取り上げた。
少しでも参考になれば幸いです。
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