【B#101】2020年を振り返って(2)〜オーディオブックを聴くこと+「禅とオートバイの修理技術」の紹介(2020年印象に残った本)
皆さん、あけましておめでとうございます!東京・渋谷(恵比寿)でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。
年末年始は、近所の恵比寿神社と、大塚家のお墓がある豪徳寺へ新年の挨拶に伺うことができた。
コロナ禍の影響もあり、人出は例年比べ少ない影響もあり、時間をかけて祈願もしていただき、いい一年になりそうな予感です。
皆さんには昨年は大変お世話になりました。本年も引き続きよろしくお願いいたします。
私自身、読書は趣味の一つ。旧年(2020年)も様々な本と出会った。
なんといっても、隙間時間にオーディオブック(Audible)を本格的に取り入れる1年となり、朗読の洋書を43冊購入し、過去に購入した分を含め45冊ほど読み終えることができた。
神田昌典さんが「非常識の法則」の「カセットテープ(オーディオブック)は奇跡を引き起こす」で取り上げている。
以下引用すると、
「単に「知識が増える」ってことだけではない。更に時間が増え、発想力、そして行動力も高まるという大きな効果がある」
「なぜそんなにアイディアが出てくるのか?その理由は、テープを聞くことで、心の中で回っている「マイナス思考のテープ」を打ち消すことができるからだ。マイナス思考のテープっていうのは、ぼーっとしているときに、心の中に繰り返される独り言のこと。人間は、ぼーっとしていると、ついつい否定的なことを考える生き物だ。(略)ぼーっとしながらでも、成功者のテープを聞いていると、ポジティブな思考に顕在意識が引きつけられているので、自分のマイナス思考、すなわち否定的な声が聞こえなくなる。(略)その結果、前向きなアイディアが出やすくなるわけだ」
私は、通算で26日1時間35分(2021年1月2日現在)、オーディオブックを聞いたことになる。月平均で60時間ほど。2021年も継続できればと考えている。
さて、2020年を振り返ってみて、面白いと思った本を紹介したい。
ロバート・パーシグ「禅とオートバイの修理技術(上)(下)」
だいぶ古い本だが、禅=東洋と、西洋で生まれたオートバイという一見関係ない2つを組み合わせて、哲学を考えていくという野心作。1974年に発売され、全米のベストセラーになった。
個人的には、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福」に似たような「世界史を知る面白さを感じることができた」。
「禅とオートバイの修理技術(上)(下)」では、著者のパーシグ、妻シルヴィア、11歳の息子のクリス、友人ジョンの4人で一緒にアメリカの各都市を旅しながら、体験をシェア。オートバイをメンテナンスをしつつ、パーシグが記憶を奪われる前の精神的な旅をするという同時並行の2つの物語で展開されていく。
パーシグは、飛び級でアメリカの教育を受け、IQは170。15歳でミネソタ大学に入学するほどの天才だった。しかし、科学は、一つの仮説を証明する度に更なる仮説が増え、本当に科学の問題って解決できるの?と絶望。大学2年でドロップアウト。
朝鮮戦争に従軍し、哲学の学位を取得後、インドに留学。その後、シカゴ大学を経て、ミネソタ大学でジャーナリズムで学位を得て、モンタナ大学(及びイリノイ大学)で教えることになった。
結婚して二児をもうけるのですが、モンタナ大学時代、精神を病んで入院を繰り返したことから「電気ショック療法」を受けることに。記憶喪失になってしまう。
大学教師を継続できなくなり、技術的な本のマニュアルを作るライターで生計を立てつつ、やがて息子を連れて、オートバイで旅行をするように。記憶を思い出すためのものでもあった。
パーシグは、記憶を失う前の自分をパイドロスという名前をつけ、オートバイ旅行中に記憶を取り戻すことを期待していたところがある。いわば、心理学で言うところの「影」みたいなものがパイドロスということになる。
そして、パイドロスに口を開かせるために「シャトーカ」という方法を使っている。
100年前にアメリカで流行った野外講演会のようなもので、映画とテレビが普及する前に、流行った方法だったという。それが、本の所々に挟まれている。過去の自分=パイドロスとして書き溜めていたものを振り返ることで、徐々に自分を取り戻していく。
パーシグは、大学で教えていた頃に「文章の書き方」について教えていたが、学生たちがいい成績を取ること=ノウハウのためだけに勉強することに納得がいかず。本質的なことを教えるようなれば、大学に来るようになるだろうと考えていたが、大学執行部からの厳しい批判だけではなく、学生からも反対される。
そこで、文章の質=クオリティとは何か?という問いを持つようになり、プラトン、アリストテレス、ヒューム、インド哲学、ポアンカレなど、様々な哲学者が「クオリティ」について何を言っているのか?を調べるようになる。
哲学者の考えるのってで難しい!と感じるかもしれないが、オートバイの修理の話と関係があり、面白い。
例えば、
「行き詰まりという問題の根底に横たわっているものは、「客観性」、つまり実在を主体と客体に二分する原則を強調し続けてきた合理性にあると思う。なぜなら、真の科学は確固たる主客の分離を行なわなければならないからだ。「修理工がいて、オートバイがある。両者は永久に別個の存在である。修理工がオートバイにあれこれと手を加える。するとそれぞれがそれぞれの結果を生む」オートバイに接して、主体と客体という永遠の分離を果たしてしまうこのやり方が正しいように思えるのは、私たちが二元的なものの考え方に慣れてしまったせいである」
「だがそれは間違いである」
「二元的なものの考え方をすることによって、私たちは常に現実の上に人為的な解釈を重ね合わせてきた。結果的にそれは現実そのものからはるかに遠のいてしまった。こうした二元性を完全に受け入れてしまうと、修理工とオートバイとの間に存在する分離できないある一定の関係、つまり仕事に専心する職人気質といったものが失われてしまう」
「従来の合理性は世界を主体と客体に分けてしまうが、そうなると《クオリティ》は締め出されてしまう。だが実際行き詰まったときに進むべき道を教えてくれるのは、主体でも客体でもなく、それは《クオリティ》そのものなのだ。」
確かに、私自身、ロルフィングのセッションや個人セッションを行っているが、
「その人の自己治癒力を如何に引き出すのか?」
が大切だと思っている。
しかし、残念なことに、自己治癒力は、主観的でもあり客観的でもあるので、分けることはできない。一人一人にあったようなセッションとなり「クオリティ」=「質」を上げていくことが大切になる。
「クオリティ」について、パーシグは、オートバイの修理技術と結び付けて、考えを深めていく。
「私が語っているこのバイクのメインテナンスにしても、「ひたすら修理すること」であって、ここでも主体と客体という観念が修理をする人の意識を支配することはない。修理作業に取り組んでいるときに、そこから心が離れていなければ、本当の「ケア」をしていると言える」
と書いている。これってまるで瞑想=マインドフルネスの実践を見ているようで東洋的だ。
クオリティについては、
「バイクの修理に取り組むときに心がけるべきことは、ほかの仕事と同様、自他の分離をしないような心の落ち着きを養うことなのである。これがうまく行けば、そのほかいっさいがおのずとこれに従うことになる。心の落ち着きは正しい価値を生み、正しい価値は、正しい思念を生む。また正しい思念によって、正しい行為が生まれ、これによって仕事は、誰が見てもその中心に静謐を湛えた一つの実体となって現れる。(略)精神的な実在が一つの実体となって姿を表している」
と。
アメリカのヒッピーたちのバイブルとして読まれた本だけではなく、ニューエイジにも影響を及ぼしたという。パーシグの動画もYoutubeで見れるので、もしご興味があったら、チェックしてみてください。
個人的には、視野の狭くなった科学者、ヨガを実践している方、ボディワーカー、瞑想(マインドフルネス)実践者等におすすめしたい。
今年も、課題本を決めて、定期的に読書会を開催していく予定で、本の理解を深めていければと考えている。