【W#143】セビリア(4)〜オリーブの生産者を訪れて
スペインには17の自治州があり、セビリアは南部に位置し、地中海、大西洋、ジブラルタル海峡、ポルトガルに面するアンダルシア州に属する。ゲルマン系のヴァンダル族の支配を一時期受けていたが、それがこの自治州の名前の由来となった。アンダルシア州は、セビリアで3回(【旅コラムVol.142】、【旅コラムVol.143】、【旅コラムVol.144】参照)、アルハンブラ宮殿で1回(【旅コラムVol.131】参照)とコスタ・デル・ソルで1回(【旅コラムVol.132】参照)と合計5回書いてきた。
クリストファー・コロンブスに触れた際、セビリアは新大陸の発着点となったことを記したが(【旅コラムVol.143】参照)、中南米諸国は、アンダルシア方言のスペイン語が母国語のベースになっているらしい。アンダルシアはイスラム文化に対して寛容さを感じるのみならず、世界的な影響力を感じさせられるエピソードでもあり、興味深い。
今回は、オリーブ油の生産量が第1位のスペインで実際にオリーブの生産者を訪ねるという貴重な機会を得たので紹介したい。
セビリア郊外をバスで移動すると、オリーブの樹がたくさんみることができる。
中には樹齢が若いものまである(下記の写真参照)。
今回訪れたのは、バスで40分近く離れた生産者の一つ。そこには、6,000本の木が植えられていて、平均樹齢が約22年、木は平均4-5mの高さになる。それにしても、オリーブの木の多さに驚いた。
以下、現地のオリーブの生産者のお話を伺った内容をもとに書きたい。
昔は、オリーブを収穫後ロバを使ってオリーブを潰してオリーブ油を抽出していたらしい。最近はオリーブ油の生成過程で機械化が進んでいる。オリーブの収穫は10月〜11月。時期によって採れるオリーブ油の量が異なる。例えば、10月にオリーブを収穫した場合12-14kgのオリーブから1Lの油が採取できるが、それよりも10日後の場合には7-9kgから1Lの油が採れる。一見後者の方が効率が良いように見えるが、鮮度を考えると、早期に収穫する方がいいとのこと。
収穫の方法は、地面に網を置いて、機械的にオリーブの樹を揺らすことでオリーブの実を地面に落とす。最終的に網で収穫していく。この形で収穫するのは、人手が少なくて済むからだ。その後は自然発酵が進むのを避けるために速やかに作業を進ませていく。
網で収穫されたオリーブは、機械により枝などが取り除かれ、人によってオリーブを分けていく。その後、オリーブは機械的に破壊(ハンマーで破砕する)される。
オリーブが破壊されるとミルク状になるので30分、26C以下で放置。油分が浮上してくる。ここでのポイントは油は熱に弱いことと、界面活性剤を一切使わず、自然の状態に保つということだ。この工程で採れるオリーブ油のことをVirgin Oilという。
遠心分離機で油を抽出。残り(残渣)は肥料として使われる。参考に、オリーブ油は低温(20度)、遮光で2年もつという。そして、Virgin Oilの中でグレードの高いものをExtra Virgin Oilと呼ぶ。
実際にオリーブ油をパンとともに試食したが、油の味よりもフルーティーな甘みとさっぱりさを感じた。
なお、この生産地は日本でのオリーブ油の品評会でも賞をとっており、賞状が飾られていた。
見学が終了後、食事をいただいたのだが、最も印象的だったのが最後のデザート。なんとオリーブ油のかかったアイスクリームが出たのだ。意外と思ったのだが、オリーブ油とアイスクリーム、すごくいい組み合わせで本当に美味しい。もちろん、オリーブ自体もフレッシュなものをいただいているので味が良かったのは言うまでもなかった。
これで、セビリアの日程がほぼ全て終了となった。翌日はいよいよポルトガルの首都リスボンに向けて出発する。
セビリアからリスボンに向かう途中の国境付近でイベリコ豚に出会ったので、そのエピソードを中心に次回書きたい。