【E#292】感情を通過させるということ ── ある体験から見えてきた、心と身体のプロセス
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はじめに:6ヶ月という時間の中で起きていたこと
昨年10月に離婚してから、6ヶ月が過ぎた。

時間としては決して長くはない。
しかしこの半年は、単なる出来事の連続ではなく、自分の内側の在り方そのものが変化していくプロセスだったように感じている。
離婚に至るまでの間、妻の亜希子と「これから夫婦としてどのように生きていくのか」を時間をかけて話し合ってきた。
一度の対話で結論が出るようなものではなく、
その時々の感情や状況に応じて、行きつ戻りつしながら、少しずつ形が見えていくようなプロセスだった。
さまざまな出来事を経て、互いに真剣に向き合い、何度も対話を重ねた結果、
私たちは最終的に「離婚」という形を選ぶことになった。
その決断は決して軽いものではなかったが、
どこかで「これが自然な流れである」という感覚も同時にあった。
そして今、この出来事を落ち着いて受け止めることができているのは、
振り返ってみると、感情を避けずに受け入れることができるようになったからだと感じている。
人はなぜ感情を感じきれないのか
離婚という出来事の中で、ひとつ強く感じたことがある。
それは、「人は思っている以上に、感情を感じていない」ということだった。
悲しみや怒り、寂しさや不安。
それらは確かに存在している。
しかし多くの場合、それらの感情は最後まで感じきられる前に、
- 理屈で説明され
- 正当化され
- あるいは無意識に回避されていく
その結果として、感情は“処理された”ように見えて、実際にはどこにも行かず、
身体のどこかに残り続ける。
それはまるで、途中で止まってしまった波のようなものである。
心が壊れることは、なぜ“開く”ことなのか
ここで思い出すのが、Executive Coachの Joe Hudson の言葉である。
Heartbreak is something I look forward to.
Because every time your heart breaks open, it increases your capacity to love.心が壊れることを、私はどこかで楽しみにしている。
なぜなら、心が壊れて開くたびに、人を愛する器が広がっていくからだ。
この言葉を最初に読んだとき、正直に言えば違和感があった。
しかし、自分自身の体験を通して振り返ると、
そこには確かに「壊れる」と同時に「開く」という側面があった。
何かを失うことと、何かが広がることが、同時に起きている。
閉じるか、入っていくか
同じように心が傷ついたとしても、
人は大きく二つの方向に分かれる。
ひとつは、その痛みから離れ、閉じていく方向。
もうひとつは、その痛みの中に入っていく方向である。
重要なのは、「何が起きたか」ではない。
その出来事に対して、自分がどう関わるかである。
多くの場合、人は痛みそのものではなく、
「痛みを感じること」を避けようとする。
しかし、その回避こそが、感情を長く留め続ける原因になる。
感情はどのように通過するのか
感情は、理解することで終わるものではない。
それは、十分に感じられ、身体の中を通過することで、初めて完了する。
安全な環境の中で、
否定されることなく、急かされることもなく、
ただそのまま感じることができたとき、
それまで滞っていた感情は、少しずつ動き始める。
身体が変わるとき、感情も動く
実際に身体に変化が起きるとき、
ただ柔らかくなるだけではなく、
呼吸が深くなり、
内側の動きが感じられるようになり、
重力に対して自然に立ち上がるようになる。
そのとき、同時に、
感情もまた動き始める。
感情は思考ではなく、身体の反応として保持されている。
だからこそ、
身体を通してしか完了できないプロセスがある。
離婚という体験がもたらしたもの
今回の離婚という体験も、同じ構造の中にあった。
変化が起きたのは、
理解できたときではなく、
説明がついたときでもなく、
悲しみを避けずに感じ、
その感情を身体の中で通過させたときだった。
その結果として残ったのは、「傷」ではなかった。
むしろ、
以前よりも広がった感受性と、
他者ともう一度関わることのできる余白だった。
あるがまま受け入れるということ
今は、すごくハッピーで、通常の生活に完全に戻った感覚がある。
この状態に至るまでに特別なことをしたわけではない。
ただ一つあるとすれば、「あるがまま受け入れる」ということだった。

「道は開ける(How to Stop Worrying and Start Living)」の中で、Dale Carnegie は、こう述べている。
“Accept what cannot be changed, and you will feel better.”
「変えられないものを受け入れよ。そうすれば、心は軽くなる。」
この言葉は知識としては知っていたが、
今回の体験を通じて、初めて身体感覚として理解することができたように思う。
まとめ
心が壊れるということは、終わりではない。
それは、これまで閉じていた何かが開いていくプロセスでもある。
もし今、
- 自分の中に残っている感情があると感じている方
- 頭では理解しているのに、前に進めない感覚がある方
- 身体の違和感や緊張がなかなか抜けない方
そうした状態にあるとしたら、
それは「問題」ではなく、まだ通過していないプロセスがあるというサインかもしれません。
無理に変えようとするのではなく、
安全な形で感じ、通過させていくこと。
そのプロセスをサポートすることができます。
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