【N#177】睡眠改善でできること〜睡眠薬の問題点と認知行動療法
目次
はじめに
東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。
過去に睡眠についてブログ記事をまとめてきた。前回は、日常生活でできる睡眠の改善法についてまとめた。今回は、不眠症で使われる「睡眠薬」とその問題点、そして最近注目されている「認知行動療法」についてまとめたい。
日本では、成人の7.4%が睡眠薬を服用
日経メディカルによると、日本人の成人で7.4%が睡眠薬を服用しており、年齢と共に上昇することが明らかになっている。例えば、20代で2.6%、40代で6.8%、60代で12%、70代で19.2%、80歳以上で24.8%に及ぶ。
30代と40代では男性の割合が高くなるが、それ以外は、女性の割合が高く、年齢と共に上昇。70代女性では24.8%、80歳以上の女性では32.4%で、70歳以上の女性では4人に一人が睡眠薬を服用しているが明らかになっている。
厚生労働省のe-ヘルスヘットでは、日本人の30%近くが不眠症に悩んでおり、国民の取って由々しき問題になっているとまとめているが、意外と睡眠薬について知られていないことが多い。
マシュー・ウォーカー「睡眠こそ最強の解決策である」によると、睡眠薬を飲んでも、自然な眠りは手に入らない。それどころか、健康を害し、命に関わる病気のリスクも高まるという。そして、薬に頼らなくても、不眠症から解放される方法は存在するというのだ。
睡眠薬の現実〜効果はあるのか?
通常、不眠症に使われるのは「睡眠導入薬」。歴史的に見ると、一番古くから使われていたのがバルビツール(barbiturate)と呼ばれる麻酔薬に近い薬物だった。依存症や過投与(オーバードース)により死亡リスクが高まることが知られ、マリリン・モンロー、ジミー・ヘンドリックスを含め、多数の有名人がオーバードースにより犠牲になった。
そこで、同じ作用機序に近い、ベンゾジアゼピン系(benzodiazepines)が使われるようになった。バルビツール系とベンゾジアゼピン系はいずれも鎮静させる薬(具体的には、脳の活性化を抑えるGABAの働きを強める)であり、入眠を助けるわけではない。おまけに、この作用はアルコールを飲んだ時と一緒の作用なのだ。
その後、睡眠を誘導する、メラトニンやオレキシンが明らかとなっている。詳細は省略するが、現在では、睡眠薬には3つの異なる作用機序を持つ薬剤が知られており、処方されている。
睡眠薬は、脳の外側を眠らせるに過ぎないことが知られており、最新の睡眠薬(ゾルピデム(アンビエン)、エスゾピクロン(ルネスタ、非ベンゾジアゼピン系薬剤))を使って脳波測定を行うと、通常の睡眠に比べ深い脳波が欠けることが明らかになっている。
結局、翌朝も疲れが取れない、夜に自分が意識していない行動や、日中に反応速度が鈍くなり、運転に支障が出るといった副作用も出る。
睡眠は自然な眠り(深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)の適切な割合)によって、新しい記憶を脳に定着させるといった素晴らしい効果が知られている。
動物に新しく学習させ、体重を考慮した量の睡眠薬(アンビエン)、もしくはプラセボ(偽薬)を与え、脳の働きを調べたところ、プラセボでは、学習を定着させる効果が認められた。アンビエンの方は、記憶を強化するどころか、記憶を消す働き(神経の繋がりを50%失う)になるという。同じことが人間でも明らかになった。
睡眠薬を服用している人は、身体にも大きな影響を与えるらしい。同じような条件で服用してない人に比べ、2年半の調査期間で、がんのリスクが30〜40%上がること、感染症、心臓病、脳卒中、自動車事故のリスクなども高まること等。
最新の睡眠薬、スボレキサントは、効果が最小限であるという報告もある。プラセボを飲んだ患者に比べ、本薬により、入眠までの時間はわずかに6分早まった。要は、睡眠薬は、当初期待したよりも、最小限の効果しか得られていないのだ。
やはり、睡眠は睡眠として時間を確保して、しっかりと就寝をとることが大切になる。では、薬に頼らずに睡眠を改善する方法ってあるのか?最近、注目されている「行動認知療法」について紹介したい。
行動認知療法が、注目されている
不眠症において最も効果が高いのが、認知行動療法と呼ばれている方法だ。セラピストは、患者の不眠のタイプを見極め、個別の方法で治療にあたる。まず睡眠に適した衛生環境を整え、症状や生活習慣に沿って悪い睡眠習慣を変えていくのだ。
カフェイン、アルコールの摂取を控えること、スマホ、テレビ、PCを持ち込まない以外に、
1)起床時と就寝時の時間をきめ、毎日守ること
2)眠くなったら布団に入ること
3)眠れなければ、布団から出て、リラックスできる活動をする
4)夜寝れない場合は、昼寝を控える
5)就寝前に心を落ち着ける習慣を作り、心配事を持ち込まない
6)時計を見えない位置におく
面白いには、布団の中で過ごす時間を制限するところからスタート(六時間以下から)。覚醒時間を増やすことで、最終的に寝つきを良くするアプローチをとる。ぜひ、睡眠薬を服用している方、一度「認知行動療法」を行なっているクリニックをチェックしてみてください。
まとめ
今回のブログでは、不眠症で使われる「睡眠薬」とその問題点、「睡眠薬」に代わる「認知行動療法」についてまとめさせていただいた。
少しでもこの投稿が役立つことを願っています。