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【P#62】新型コロナと免疫系の仕組み〜自然免疫と獲得免疫の違い、新型コロナの自然免疫への影響について

はじめに

こんにちは!東京・渋谷(恵比寿)でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。

新型コロナの流行によって注目された分野がある。
「免疫学」だ。
ブログでも、消化・吸収と免疫は表裏一体の関係があることを「新型コロナと免疫〜消化・吸収と免疫との関係、mRNAワクチンはどこまで効果があるの?自然感染に比べどうなの?」に書いた。

新型コロナが人体の細胞に感染すると、無症状、軽症、重症といった患者によって異なる反応を示すことが知られるようになった。
なぜ、このような違いが出るのか?
「新型コロナが、免疫系の2つの仕組み(自然免疫と獲得免疫)にどのような影響を与えるのか?」
の理解が深まれば、
「自分は重症化しやすいのか、軽症で終わるのか?」
が事前に予測できるのではないか、それが期待できる。
(もちろん、まだまだわかっていないことが多いが)

今回は、「自然免疫」と「獲得免疫」の違い、お互いの関係についてまとめたい。

自然免疫とは何か?〜誕生した時から持っており、反応が早く、記憶しないもの

病原体が、身体の外から中へと侵入する際に、
皮膚の角質、気道や腸管の内側にある粘膜、目の表面を覆っている涙=「物理的バリア」

そこでは、多くの殺菌成分(「化学的バリア」)が作られる。
この2つのバリアを使って病原体に対処する。

病原体が侵入している組織に住みついている食細胞(マクロファージ、樹状細胞等)が殺菌性物質を出して、病原体を食べる(貪食(どんしょく)と呼ぶ)

それでも、対処できない場合は、白血球(好中球、単球)などが、血液から組織へ侵入し、動員される。
このことを「細胞性バリア」と呼ばれる。

「物理的バリア」「化学的バリア」「細胞性バリア」を含め、自然免疫(Innate Immunity)と総称される。
自然免疫には以下の特徴がある。
1)人間が誕生した時から持っている
2)反応が早い(数分から数時間)
3)免疫の記憶を持たない

獲得免疫とは何か?〜時間がかかって記憶される

自然免疫を突破した病原体に対して対応するのが、獲得免疫(Acquired Immunity)だ。
リンパ球(T細胞、B細胞、Tリンパ球、Bリンパ球とも呼ばれる)が主役で、人間が誕生した後、感染経験とともに発達し、記憶していく免疫の仕組みだ。

病原体に対する抗体を作るB細胞、B細胞を助けるヘルパーT細胞、感染細胞を殺傷するキラー(細胞殺傷性)T細胞がある。

ウィルスや細菌などの病原体が入ってくると、それに対する抗体ができる、というのは、この獲得免疫の役割。
しかしながら、新たに抗体を作り出すには、時間がかかるという欠点がある。

今回のmRNAワクチンも、2回接種の10日以降に免疫ができるのは、獲得免疫が働くのに非常に時間がかかるからだ。

食細胞の「異物センサー」と炎症性サイトカインとの関係

病原体が侵入すると、自然免疫系の食細胞が働き出す。
最近わかってきたことは、ウィルスや細菌などの病原体が入ると食細胞が働く。
興味深いことに、食細胞は、細胞内で「炎症性サイトカイン」を作り出すことだ。

サイトカイン(Cytokine)とは、サイト=細胞、カイン=間で働く物質、すなわち細胞同士でコミュニケーションをとるために作られる物質のこと。サイトカインは細胞の中で作られ、血中へ放出(分泌)され、他の細胞にサイトカインに対するサイトカイン受容体に結合し、生理的な役目を果たす。

面白いのは、食細胞には「異物センサー」があること。
病原体の中で、DNAウィルス、RNAウィルス、細菌の種類などを大まかに認識する蛋白質のことを「異物センサー」と呼ぶが、細胞膜だけではなく、小胞体や細胞の内部(細胞質)にも存在する。

細かい話になるが、TLR、CLR、NLR、RLR、cGASなどが知られており、新型コロナでは、TLR7、RIG-1、MDA-4が「異物センサー」として働くことが報告されている。

ちなみに、より専門的になるので、ここの説明は飛ばしても大丈夫ですが・・・、
異物センサーは、病原体の成分(PAMP、病原体関連分子パターン)と自分の身体内の成分(DAMP、障害関連分子パターン)を認識することがわかっている。
ワクチンの中に、免疫不活剤(アジュバント)が入っている。
よく使われるのがアルミニウム塩。
アルミニウム塩は、白血球に働きかけて、その中にあるDNAが放出。DNAがDAMPとして「異物センサー」により認識され、炎症性サイトカインが作られることで獲得免疫系を刺激。結果的にワクチンが働くようになる。

「異物センサー」の興味深い特徴は、どのような炎症性サイトカインを作るのかを、食細胞内に指示を出すことだ。
例えば、新型コロナの場合には、炎症反応を引き起こすサイトカイン(TNFα、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン1(IL-1))や、ウィルスが食細胞を認識する際に、抗ウィルスとして働く1型インターフェロン(IFNα/β)等が作り出される。
これらの一連の蛋白質のことを炎症性サイトカインと呼ぶ。
(インターロイキンは、白血球(ロイキン)の間(インター)で働く物質のこと、インターフェロンは、ウィルスをInterfere(妨害、インターフィア)する物質のことから、それぞれ名前がついている)

炎症性サイトカインは正常時では、作られない(慢性的に炎症を起こしているときは別だが・・・)。
そして、炎症性サイトカインは、慢性免疫の病気に関わっており、関節リウマチには、TNFα(エンブレル、ヒュムラ)、IL-6(アクテムラ)を阻害する治療薬が使われている。

ウィルスが感染すると、鼻詰まり、鼻水、喉の痛み、頭痛などが起きるが、全て、食細胞によって作られる1型インターフェロン、TNFα、IL-1、IL-6の働きによるものだ。

発熱、悪寒も全て、炎症性サイトカインによって引き起こされるが、血流に乗って脳に到達、プロスタグランジンE2を作り出し、全身の発熱にも寄与する。発熱の利点は、炎症性サイトカインが作りやすくなり、結果として、免疫細胞が働きやすくなることだ。

インフルエンザの感染で、発熱、頭痛や筋肉、関節痛が起きるのは、炎症性サイトカイン、1型インターフェロン、プロスタグランジンなどの働きによる。

免疫についてより詳しく知りたい方は、宮坂昌之さんの「新型コロナ7つの謎〜最新免疫学からわかった病原体の正体」をお勧めしたい。

新型コロナの大部分は症状がないが、2割が重症化することが知られているが、なぜそのようになっているのか?理解できていなかった。
米国のエール大学の岩崎明子教授により、新型コロナはどのような免疫反応を引き起こするのか?わかってきた。
ご興味のある方は、英文ですが、Cell Host and Microbeのレビューは非常に参考になるので、お勧めしたい。

新型コロナの特徴〜無症状の方と重症化の人がいること

新型コロナの特徴は、無症状の患者が多いことで、これらの患者が他人に感染を増やしてしまうこと。

実は、新型コロナは、食細胞で作り出すはずの1型インターフェロンを作り出すのを抑える機構が働く。
インターフェロンは、ウィルスの増殖や、風邪の症状を促す働きがあるので、これらが抑えられることで症状が出ないことが考えられる。

インターフェロンが作られないので、どんどんウィルスが増えてくるのだが、ここで不思議なのは、ある一定量が増えた段階で、インターフェロンが大量に作られる。
しかも、若い人よりも、高齢者のケースで認められるらしい(だから、高齢者が重症化する確率が高いとも)。

食細胞から作られる炎症性サイトカインの生産が鈍く、作られた頃には、その生産が暴走し、結果的に重症化を起こす。
炎症性サイトカインが、身体内の様々な臓器に悪影響を及ぼすサイトカインによるストーム(嵐)(サイトカインストーム)を引き起こすのだ。

サイトカインストームの原因は一つだけではなく、複数が知られている。
大事なのは
「新型コロナは感染が進むにつれて、炎症性サイトカインが作られすぎて、免疫が暴走する」
ということを抑えておくことだ。

新型コロナのデルタ株は、感染症が広がる割合や、重症化のスピードが早まっているので、重症化になる前に、それに気づき、適切な治療が必要になってくることが重要になると考えられる。

まとめ

血液検査でどのような物質が重症化の予測マーカーになりうるのか?
研究が進んでおり、これからもっとわかってくると思う。

通常ならば、自然免疫の役目を担う、食細胞から、獲得免疫系のT細胞やB細胞に情報が伝わり、結果的に、新型コロナに対する抗体が作られ、免疫が成立するのだ。
新型コロナの怖いところは、約2割が重症化するところ。
この点について、まだまだわかっていないことが多いが、新型コロナのワクチンは、その重症化をある程度抑えるのは確からしい。

他にも亜鉛、ビタミンD3のサプリメントや既存の治療薬の情報も集めていくことも重症を予防していく上で重要。

少しでも参考になれば幸いです。

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