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【N#57】血液検査から何がわかるのか?〜腸内細菌の環境、蛋白質・脂質がどのように身体内で利用されているのか?神経伝達物質はどうか?を含め

2020年11月10日、ナチュラルアートクリニックの院長の御川安仁(みかわやすひと)先生(以下御川先生)に同年10月23日に採血した血液検査の結果を聞きに、四谷へ。

前回、私自身がなぜ、栄養療法に取り組んでいるのか?どのようにして分子整合栄養医学と出会ったのかを含めまとめた(「分子整合栄養医学って何であり、どのように発展してきたのか?〜歴史からみる」参照)。

その際、
分子整合栄養医学の背景を知っておくと
1)個人個人の体質に合わせて適した量で治療していく
2)精神疾患との関係が深い
ことを書いた。

私は、どちらかというと、2)の方に興味を持っている。なぜならば、西洋医学から見て、身体からアプローチから、心を改善していくことに興味があるが、一方で、製薬業界にいて感じたのは、精神疾患に対する薬の開発がほとんど進んでいなく、栄養療法でこれらが良くなるのであるなら、医療費の削減につながることも期待できるからだ。
このようなことを胸に、クリニックの待ち合わせルームへ。

午前10時頃に御川先生の診察が開始。80項目の血液検査の報告書(A4、4枚)をパソコン画面に映し出しながら、説明を始めた。
御川先生の診察は時間に応じて価格が決まる自由診療のため、事前に40分でお願いしますと依頼。結果的に1時間かかったが、血液検査と、過去に行った有機酸検査の説明までしていただいたので、すごく満足のあるものだった。

御川先生によると、
アトピー性皮膚炎、炎症を含めた免疫症状を抑えていくには、
・ミトコンドリアの働きを良くする
・腸内環境を整える
・副腎の働きを改善する
・細胞膜を整える
の4つが鍵になるという。
その視点から血液検査の結果を見ていった。

血液成分の一つ一つの説明を入念に行っていったが、以下の5つに絞れるのではないかと思う。
1)自律神経が交感神経優位でかつ、体内で炎症が高まっている
2)食事で取り入れた蛋白質が十分に身体内で使われていない
3)腸内細菌のバランスが崩れ、カンジダ菌やクロストリジウム菌等が優位になっている
4)食事で取り入れた脂質・油がうまく分解し、エネルギーになっていない
5)身体内の酸化ストレスがかかっている状態で、かつ身体内の抗酸化作用が働いているかどうか。
(詳しくは、血液検査の結果とともに以下にまとめたが、ご興味があれば、ぜひチェックしてください)
1)について。
交感神経優位か否かについては、好中球とリンパ球の比をみることで、ある程度参考地として推測できるというが、私の場合、好中球が73.1%、リンパ球が19.7%と異様に好中球が高い。御川先生によると、好中球を含めた顆粒球は、血液中に物質を分泌し、炎症の原因になるという。
更に、赤血球の指標となる、MCV、MCH、MCHCの値を見ていくと、分子整合栄養医学的に見て、MCHとMCHCが低いため、赤血球の中での鉄分が不足している。赤血球を形成するには、葉酸とビタミンB12が必要。血液検査のデータを見ると、葉酸の値(10.9 ng/mL)に問題がないが、ビタミンB12が大幅に低下(465 pg/mL、600以上は必要)しているという。
自律神経のバランスを改善していくことは、炎症を抑えていくために必要なこと。このため、ビタミンB12のみならず、ビタミンA(赤血球の分化促進)、亜鉛などをサプリで取り入れることが大切となる。
それを現すかのように、ビタミンAは42.8 ug/dL(50以上は欲しい)、亜鉛が100 ug/dL(130以上は欲しい)とそれぞれ低く出ている。

2)について。
身体内で蛋白質が利用されているかどうかをチェックするためには、TP(総蛋白質量、7.0 g/dL)、アルブミンの値(4.1 g/dL)が低く、2つの値の差を示す、グロブリンの値が2.7以上と免疫が高まっている可能性がある。
胃酸を見る指標のペプシノーゲンIが48.6 ng/mLと低く(70は欲しい)、プレアルブミンの値も27.9 ng/dLと低い(30は欲しい)、胃酸の分泌が弱いと判断。食事からの蛋白質の消化不足で、体内で蛋白質が利用されていない可能性がある。
現に、筋肉の形成の指標となる、クレアチニンを測定すると低値(0.62 ng/dL、0.65以上は欲しい)になっているので、筋肉は蛋白質からできていると考えると、蛋白質は、身体内で利用されていない一つの目安と捉えることができる。
更に、血液中に放出される尿素窒素の値も25.9 ng/dLと高い(8.0 – 20.0 ng/dL)。
このようなことを考えると、せっかく食事やサプリで取り入れたプロティンや蛋白質は身体内で十分に利用されていないことが考えられる。
対策としては、サプリとして消化酵素を取り入れることが重要となる。
3)について。
腸内細菌のバランスは、有機酸検査を使ってみる。
有機酸検査については「有機酸検査の結果+体質を理解すること:カンジダ菌、シュウ酸、ビタミンB群不足のこと。そこから先は?」に詳しく書いたが、
長年小児の自閉症の研究をしている生化学者のWilliam Shaw博士が1996年に設立した検査会社(GPL社)で、自閉症、ADHD、線維筋痛症、胃腸障害、神経精神障害等の検査を提供している。
Shaw博士の面白いところは、自閉症と腸内環境との関係に注目したところだ。
小児の自閉症患者は、健常人に比べ腸内環境が荒れており(カンジダやクロストリジウム等が優勢)それを有機酸検査で使って明らかにして、医師とコラボして、抗真菌薬を使って自閉症の治療をしたことで注目された。
ということは、
精神疾患は、腸内環境の問題や代謝の病気
として捉えられる。それを早朝に採取した尿をGPLに送付し、検査をするというシンプルな方法で調べる。

2年前に受けた有機酸検査の結果を見ると
・腸内で、クロストリジウムが優勢になっている〜ドパミンの産生量が高い
・腸内で、カンジダ菌が優勢になっていると産生されるアラビノースの値とシュウ酸が高い
といった腸内細菌にバランスが崩れていることも分かった。
クロストリジウム(C. diffcile、腸炎の原因にもなり多剤耐性菌)の影響でドパミンの産生量が多く、ノルアドレナリンの産生量が少ないこともわかった。ドパミンは、神経伝達物質の一つで、快の感情、意欲、学習などに関わる。一方でノルアドレナリンはストレスに応じて作られる物質。ドパミン多いと、必ずしもいいことだけではない。実は、活性酸素を発生させ、神経系の細胞に悪影響を及ぼす。参考に、自閉症の患者さんはドパミンが高いことが知られている。
又、尿素窒素の値が高いのは、腸内環境が崩れているためと考えられる。
善玉腸内細菌の指標となるビタミンKは、ucOCで調べた。オステオカルシンは、骨代謝に関わっており、骨から血液中に放出されると、約半分はucOC(under carboxylated form of Osteocarcin)の形になっている。ビタミンKの産生量が少ないと、ucOCの値が下がることから、ビタミンKの取り込みの指標の一つとして考えられている。ucOCの値(6.37 ng/mL、4.50未満であって欲しい)が高いことから、ビタミンKが作られていない可能性がある。
このように、腸内環境が乱れていることもあり、腸内環境を整えていく必要がある。除菌を含めた対策が必要となりそうだが、腸内環境を整えるほうが先決になりそうだ。

4)について
カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内に運び込み、酸化(β酸化と呼ぶ)することでエネルギーを作り出すが、総カルニチンの値が低い(48.4 umol/L、65以上は欲しい)上に、カルニチンは、ミトコンドリアへ運ぶためにアシルカルニチンに変換されるが、その値も低い(8.4 umol/L、15以上は欲しい)。
有機酸検査を見ると、TCA回路の中で、3-オキソグルタル酸の値とコハク酸の値がいずれも高い。これらの値が高いことは、エネルギーを作り出すTCA回路がうまく回っていない可能性があり。かつ、コハク酸の濃度が高まると、電子伝達系IIの働きが弱まる。結果として、いくらβ酸化でエネルギーを作り出したとしても、電子伝達系IIが働かなくなり、ATPができなくなる。
私自身、糖質制限を行ったときに、頭がクラクラし、動けなくなった経験がある。そして、ヨガ、筋肉トレーニングをいくら行っても、筋肉量が上がっても、体脂肪率が下がらなかった。結局、脂肪がうまく分解され、エネルギーとして使われていなかったのが、今回の血液検査と有機酸検査の結果から分かった。
そして、細胞膜に重要なEPAの値も低いことが判明。如何に、良い脂質・油を食事やサプリから取るのか?そして、TCA回路や電子伝達系を効率よく回していくための対策が求められる。

5)について
抗酸化において重要な、Coenzyme Q10の値が低く(615 ng/mL、1000は欲しい)、ホモシスティンンの値が高い(10.8 nmol/mL、8か9ぐらいになると良い)こと、抗酸化力を持つビタミンCの値(ビタミンCー除蛋白液の値、11.1 ug/mL、20は欲しい)が低いことなどから、酸化ストレスが身体内にかかっており、抗酸化力を働かせる必要がある。
このように、血液検査によってわかることはたくさんある。他にも、ビタミンC、K、B群不足や、EPAの値が低い、炎症マーカーのCRPが高い、銅と亜鉛のバランスが銅に傾いている、コルチゾールも低値であること等。
色々とわかるものがあると、感心しながら、最終的に1時間の面談が終わった。

今後の2ヶ月で、御川先生との話の中で、最終的に、腸内細菌のバランスを良くしつつ、ミトコンドリアに関わる回路を回していくことに取り組むことになった。
具体的には、ビタミンA/B群/C /D3/E/K、消化酵素・ベタイン酸、亜鉛、アシュワガンダ、コーエンザイムQ10、EPAを中心に。
まずは、腸内細菌のバランスをとりつつ、腸内の環境を整える。ビタミンKがある程度とって血液レベルが上がってきたら、Lグルタミンを補充する。
抗酸化作用のある、アシュワガンダ、コーエンザイムQ10を補給。その間に、食事を消化酵素でサポートしつつ、ビタミン群と亜鉛でミトコンドリアを中心にエネルギー源となる回路を回していくように進めていく。
通常2時間以上かかる説明を、コンパクトに1時間にまとめていただいた、御川先生に感謝をしたい。
はたして、2ヶ月後、どのように改善し、最終的にアトピー性皮膚炎がどのように治癒に向かっていくのか見守っていきたい。

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