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【W#160】世界一周から学ぶ(11)〜言語と文字

久々に旅のことについて書きたい。帰国後、様々な人たちと会う機会があり、どこが一番印象的だったか?を含め色々な質問を受けることがある。どこが印象的だったのか?については【旅コラムVol.152】で書いた。
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もちろん、そのことについて答えることができるが、旅期間中に最も興味深いと思ったのは、言語についてだ。
アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米、米国と回っていて、気になったのが、その国々で話されている言語。旅を通じて感じたことは、共通言語として英語の普及度が以前よりも増したということ。逆にその国々独自の言葉というのものはどういうものなのか?そういった視点で旅することも心がけていた。
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例をあげたい。
旅をしている時に、諸外国の看板や文字をできるだけ見るようにした。
アジアで一番最初に訪れたのがモンゴル。モンゴル語はウィグル文字に似たものを採用していた。しかしながら、モンゴルがロシアに影響圏内に入ることによって、諸外国から新しい考えを取り入れるためキリル文字を採用。現在、街の至る所でキリル文字が氾濫しており、キリル文字なしでは、生活が困るという。私自身、モンゴルにいてロシアに来たのではないかと印象を受けた(【旅コラムVol.17】参照)。
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中国、タイ、フィリピン、カンボジアを経てベトナムへ入ったが、ベトナムでは、ローマ字表記が目についた。かつて、この国では中国語に近い漢字をベースに言語が組み立てられていたが(現代語でも70%が漢語だという)、フランスの植民地支配を受けるのを契機にローマ字表記に変更。ローマ字表記が普及していった(ベトナムについては【旅コラムVol.30】【旅コラムVol.31】参照)。
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マレーシアを経て、トルコに到着した際、ローマ字表記を見ることに。かつてアラビア文字をベースとしたオスマン語だったのが、近代化に伴いアラビア語を排除、言語をよりヨーロッパに近い、ローマ字表記に変えているのだ(【旅コラムVol.39】参照)。
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アジアの中では、タイ、カンボジア、スリランカのように独自の文字を残している母国語が見られたが、上記のようにモンゴル、ベトナムやトルコのように独自の文字を残さず、新たに別の文字を採用するという国があるというのは、私自身旅していて初めて気がついたことだったので、ある意味驚きだった。
 【RolfingコラムVol.119】で「岡田英弘著作集 シナ(チャイナ)とは何かIV」について漢字の由来と科挙の仕組みについて取り上げた。
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本書では、日本語が江戸時代から明治時代かけてどのように変化したかについても考察している。岡田氏によると、明治時代に入った近代日本は近代化を急いだという。そのため、日本語も大きく変化することになる。岡田氏は高島俊男氏の「漢字と日本人」を引用している。
「われわれがこんにち、現代の社会に生活していて、新聞や雑誌で見ることば、テレビやラジオで聞くことば、われわれの親やわれわれ自身が日常に用いて来た、また現に毎日もちいていることば、その大半は明治以後につくられた「新字音語」である。右に「現代の社会に生活する」とかいた。江戸時代のお侍や町人が「われわれは現代の社会に生活しています」なんて、言うわけないよね。「いまの世のなかでくらす」でもいったかな?「現代」はmodernの、「社会」はsocietyの、「生活」はlifeの訳語ですよね。
政治、法律、裁判、産業、建築、交通、機関、通信、手段・・・。これらのことばも、西洋語の翻訳、つまり新しい和製漢語だ。そしてまた、これらを小分けするならば・・
政治に関わることなら、政府、官庁、官吏、公務員、議会、議案、議案、議院、議員、行政、施政、選挙、投票
経済産業なら、会社、企業、銀行、保険、信託、証券、不動産、有価証券、金融、電器、機械、運輸、輸送、物産、精密、計測、経理、営業、総務、企画、立案、・・・
いくらあげてもキリがない。」
このように考えていくと、日本語も西洋文明のことばを漢語に翻訳することで、西洋の言語を下敷きに近代日本語が生まれていったといってもいい。そこには、モンゴル、トルコやベトナムのように別の文字に新たに置き換えるのではなく漢字から作り出すというところが面白い。
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岡田氏は、更に日清戦争の敗戦に伴って、当時の中国大陸の王朝だった清朝が西洋の考えを取り入れる必要性から日本で作られた「和製漢語」を取り入れるようになる。日本が明治時代の30年近くかけて作られたものを中国人の留学生が大量の本国へ持ち帰ったという。現代のある中国人の研究者は、和製漢語が現代中国語で書かれた文章の延べ70%を占めるという。例えば、中華人民共和国の「人民」、「共和国」も「共産主義」、「社会主義」、「改革」、「解放」、「同志」、「進歩」、「思想」、「理論」、「階級」も全て和製漢語という。
言語というのは、新しい考えが入ることによって変化するもの。世界一周を通じて言葉というのは変化するものであり、多様なものであること。いくら英語が共通言語として重要性があるとしても、母国語がおろそかにすべきではないと思う。母国語で考えるというのは、ある意味その国の風土の中にあるようなもの。幸運なことに、日本語はローマ字が入ることなく、カタカナ、ひらがな、漢字が残っているわけだから。

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