【W#103】世界一周から学ぶ(1)〜ドイツの教育と移民
日本に一時帰国してから5日が過ぎた。
今回の世界一周で印象に残っていることとして、中国人、韓国人と並んでドイツ人が世界中にいるということが、大きな発見の一つだった。私の旅はモンゴルからスタートしたが、モンゴルのみならず中国やトルコでもドイツ人観光客を見かけたし、アルゼンチン、チリ、ボリビアでもドイツ語を聞くことができた。年間で会社勤めしているドイツ人は少なくとも6週間の休み(最大で8週間)を取ることが大きいと思う。南米の42日間の旅の間にも、ハンブルグ出身のイラン系ドイツ人のBabakと25日近く一緒に旅をしたので(彼は次の就職先を決めた後に1年間休業。世界各地を旅している)、ドイツについていろいろとお話を聞くことができた。
すでにドイツはミュンヘンで3ヶ月近く滞在。DB Bahn(ドイツの鉄道会社)のスト(【旅コラムVol.51】参照)やブエノスアイレスに来る前に遭遇したルフトハンザ航空のスト(【旅コラムVol.61】参照)を含め4度交通機関のストを体験。私の中では、権利を正直に主張するドイツ人というイメージがすっかりと定着した感があるが、まだまだこの国について知らないことが多いことがわかった。
そこで、今回はBabakから聞いたドイツの教育や移民制度について紹介する。
一つ目は教育。私自身、ダッハウ収容所(【旅コラムVol.14】参照)やアウシュヴィッツ収容所(【旅コラムVol.54】、【旅コラムVol.55】参照)をこの目で見て歴史展示がどのようにされているのかを見るにつれて、ドイツやヨーロッパの人たちは真摯に歴史に向き合っているという印象を強く持ったが、ドイツの人たちの話を聞くと、徹底的にナチス・ドイツの歴史について学んでいることがわかる(歴史のカルキュラムの50%とも言われている)、それを教訓にドイツはどうヨーロッパと共生していくのか?を考えていくらしい。
差別に対する教育も徹底されており、表面上差別がない。例えば、トルコ人が多く、ドイツ語を覚えない人たちもいるが、それに対しても差別的な発言すると村八分になるという。
ヒットラーによる極端な中央集権化の反省から、地方分権を促すきっかけとなっている。それが地方の独自性に貢献しているように感じる。東京、ロンドン、パリなどの大都市で首都機能と経済機能が一箇所に集中するということとは違い、それぞれの都市が特徴を出している。国家の仕組みも連邦制をとっており、16州がそれぞれ独立国として機能している。小さい都市でもインフラ(電車やバスを含めた交通手段やインターネットのWiFi等)が整っているのはこうした制度のおかげだと思う。
教育については、ドイツでは義務教育として10歳までの4年間教育を受ける。その後、伝統的に職人の従弟制度に由来する即戦力的な職業教育(基幹学校(Hauptschule)および実科学校(Realschule)とも言われている)を受けるか、それとも大学へ進学するための中高一貫校のギムナジアム(Gymnasium)へ進学するかが決まる。友人のBabakは、イラン人の移民であったため、9歳でギムナジアムへ入学できるかどうかの瀬戸際に立ったとのこと。運命がこの時点で決まったしまうので、必死でドイツ語をマスターして、無事ギムナジアムへ進学。大学への進学をへて現在に至っているらしい。ちなみにどの教育を受けるにしても日本とは違いドイツの授業料は無料。日本のような中学校、高校というのもない。非常に問題なのは、若いうちに運命が決まってしまうため、日本のように大学検定(大検)という敗者復活制度というのがないのが問題ではないかという疑問があるが、夜間で働きながらギムナジアムへ通ったり、企業でも職人教育を受けた人を受け入れた上で高等教育に相当する研修を施すことでチャンスを与えるということを行っているらしい。
二つ目は移民。過去の歴史を紐解くと第二次大戦後のトルコ、イタリア、ポーランド、ギリシャ等からの移民をドイツは受け入れた経験がある。驚くべきことに(wikipediaによると)、全世界の1億9,100万人の移民人口のうち約5%に相当する1,000万人を受け入れ、世界では第3位に相当する(2006年のデータ)。どのような移民を受け入れるのか?については基準も決まっているらしい。日本と同じく少子化で問題を抱えているドイツ。ドイツからこの点学ぶことが多いと思う。
例えば、「ドイツは高学歴のゲストワーカーを歓迎」というシュピーゲルの記事によると、2012年8月には「EUブルーカード」という制度をドイツに導入。これはEU圏内の市民でなくても、大学を卒業していて、年収46,000ユーロ以上の仕事に採用通知を受けたら、労働を許可するという制度。そういったことを採用するドイツについてOECDからは「ドイツは高学歴の移民にとって最も制約の少ない国のひとつである」というお墨付きをもらっているらしい。
世界一周して世界各国の人たちと接するとこうした情報が得られる。だからこそ、世界一周するというのは、観光するのではなく人を知ること、そしてそれが自国を知ることにつながるのだと思う。これからも本ブログで自分の発見できたことを発信できればと考えている。