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【J#61】『古事記』を読むと見えてくる世界(3)〜「国」とは何か、天と地との思考の違いを含めた話

2019年9月17日(土)、神辺菊之助先生(以下神辺先生)を招いて『古事記』のセミナーを開催。

今回で2回目(通算3回目)を迎えた。
過去のコラムで紹介しているように、友人が開催する読書会で神辺先生と初めて出会い、
「5年かけて、独自の読み方で古事記を読破することでわかってきたことがある」
「現代に通用する思想として古事記を見ることができる」
等を伺っていた。
そこで、講師を依頼。

過去2回、サロン・ZEROでセミナーを開催した。
入門編:「『古事記』冒頭部分をきちんと読むと見えてくる世界:古事記を通じて日本を知ろう」(2019年7月7日開催)
1回目:「日本の古典の基本的な考えと神々に対する見方について学ぶ」(2019年8月17日開催)
神辺先生の「最初の神の名が、天之御中主神(アメノミナカヌシの神)であることについて」によると、
『古事記』は、最初が最も分かりにくく、かつ最初から追わないと次が完全には分からない構成になっているが、冒頭部分が軽視されているため、なかなか内容について理解されにくい、そうだ。
そこで、神辺先生は、冒頭部分から、丁寧に一つ一つの言葉を紐解きながら説明していく。
『古事記』が、天皇家のために作られた「聖典」のため、権力者が自分たちで理解できるような言葉で情報を圧縮・暗号化されているのではないか、といった仮説に基づいて話が展開されていくのは、本当に面白い。
今回は、『古事記』における「国」とは何か、天と地との思考の違い、「宇摩志阿斯訶備比古遅神」の神が性別のない独神なのに男性名(ヒコ)を持つ理由、2柱の産巣日神と2柱の常立の神の根本的な違い等についての内容だった。

古事記では、未完成の状態の「国土」の考えが出てくるが、これは、「国というプロジェクトが初期段階」になっているという意味で見ることができる。そこから、場所を固め、成して、指し下ろすことが「修理」の言葉で表している。
このようにして、概念としての国が、国土の呼び方をへて、実体のある国へなっていく。
古事記の「国」は、「神がはたらく場」「神々がすまう場所」となり、
イメージ的には、
国土+神=国。
国として成り立つためには、必ず国と神がセットになる必要になる。
天にエネルギーが地に注がれ、国ができることが暗示される。
さて、「宇摩志阿斯訶備比古遅神」から男女の性差が初めて登場する。

「宇摩志阿斯訶備比古遅神」は
「宇摩志」(ウマシ)=素晴らしい
「阿斯訶備」(アシカビ)=葦の若い芽のような
「比古遅」(ヒコジ)=ヒコ(日子、産巣日の次に現れた神)+ジ=男性の尊称を現す接尾語)
の意味を持つ。
独神=性別の持たない神
にも関わらず
男子の名前が与えられているのが面白い。
なぜ男子の名前が与えられてるかというと、男の機能としてみて、相手に子供(国)を産んでいただく働きとしてみているからだという。ちなみに、形状の差としての男女が現れるのは、イザナギ・イザナミ以降になる。
ポイントは、男女をどちらが優位なのか、で捉えるのではなく、機能でみていくところだ。

次に、2柱の常立神(天之常立神、国之常立神)の違いはどうなっているのか?これは産巣日神との比較から見えてくる。
産巣日神は、神のバリエーションの違いでみているのに対し、常立神は、本質的に同じ神で、場所が違うか(天か、国(地))だけになる。
常立神は、常しえ(永遠)に立つ神の意味を現しており、
天からみた神=天之常立神

地からみた神=国之常立神
の2つの視点が入っており、これはいわば鏡像の関係。

天を舞台、地を観客席と見立てると、役者、舞台監督の視点、観客の視点を隔てるのが、鏡。
天之常立神までで神の舞台が整い。いよいよ演者から観客へと視点が移る。国之常立神からいよいよ、観客へ視点が移り、話はより具体的に進んでいくとのことだ。
今回も、たっぷりと2時間、神辺先生のお話を伺うことができた。
次回は、イザナギ・イザナミへ繋がる話へと移ることになる。具体性がクリアになっていくのでよりわかりやすくなるとのことなので、是非とも楽しみにしていたい。
次回の開催は11月3日(日)の夜予定だ。

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