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【B#261】なぜ「恐れ(Fear)」を追うほど、恐れは強くなるのか──ニュートラルという視点から見る神経系の働き

はじめに

渋谷を拠点に、ロルフィング®やコーチング、タロット、脳活講座を行き来しながら、考えること・感じること・身体感覚(肚・丹田)が、自然にひとつの判断としてまとまっていく状態を取り戻すための場をつくっている大塚英文です。

日常の中で、多くの人が恐れているものがある。

失敗することである。
恥をかくことである。
人から否定されることである。

こうした恐れは、人間にとって自然な感情である。

興味深いことに、恐れを避けようとするほど、恐れは強くなるという現象が起きる。

コーチングの分野で知られるJoe Hudsonは、次のように説明している。

The brain doesn’t understand “don’t.”
It orients toward whatever you’re tracking.
Track fear and you get more fear.

脳は「〜しない」という否定形を理解できない。脳はただ、注意が向いている対象を追跡し続けるだけである。

つまり、恐れを避けようとしているとき、人は実際には恐れを追いかけているのである。

この現象を理解するためには、神経系の働きを少し広い視点から見る必要がある。

神経系には二つのモードがある

以前のブログで『Deliberate Calm: How to Learn and Lead in a Volatile World』(Jacqueline Brassey, Aaron De Smet, Michiel Kruyt著、未邦訳)という本を取り上げた。この本では、人間の神経系の状態を大きく二つに分けて説明している。

それが

Protection Mode(防衛モード)
Learning Mode(創造モード)

である。

これは非常にシンプルなモデルであるが、人間の行動や心理を理解する上で本質的な視点を提供していると思う。

Protection Mode(防衛モード)

人間は危険を感じると、神経系が自動的に、防衛モードに入る。

この状態では、人は次のような行動を取る。

・リスクを避ける
・過去の経験に頼る
・安全を最優先する

これは生存のために必要な反応である。この状態が長く続くと問題が生じる。

人は

・新しいことを試さない
・挑戦を避ける
・他人の評価を過度に気にする

という状態になる。

つまり、成長よりも防御が優先される状態になるのである。

Learning Mode(創造モード)

もう一つの状態が、Learning Mode(創造モード)である。

この状態では、人は

・学ぶ
・探求する
・試す
・新しい可能性を見る

ことができる。

創造性や成長は、この状態でしか起こらない。しかし恐れに強く反応すると、神経系は

Protection Mode

に固定されてしまう。

その結果、人は学習や創造の状態に入ることが難しくなるのである。

👉 関連ブログ
変化の時代に必要な「意図的な冷静さ」──『Deliberate Calm』を読む

恐れが生み出す心理パターン

神経系が防衛モードに入ると、心理的には次のようなパターンが現れる。

完璧主義(Perfectionism)

失敗を避けようとすると、人は「完璧にできないならやらない」という思考を持つようになる。

これは一見すると理想の高さのように見えるが、実際には、恐れに基づいた完璧主義である。

回避(Avoidance)

恐れを感じないようにするために、人は

・挑戦を避ける
・対立を避ける
・決断を先延ばしにする

ようになる。回避は短期的には安心を与えるが、長期的には可能性を狭める。

恥(Shame)

恐れの奥にある感情は、多くの場合、恥(shame)である。

・失敗したらどう思われるか
・価値のない人間だと思われないか

このような感覚が、行動を止めるのである。

実は「成功」が怖いこともある

Joe Hudsonはもう一つ興味深い指摘をしている。

それは、人は必ずしも失敗を恐れているわけではないということである。時には、うまくいくことそのものが恐れになることがある。もしすべてがうまくいったらどうなるだろうか。

問題がなくなり、戦う相手もなくなり、解決すべき課題もなくなる。

そのとき、何をすればよいのか分からなくなるという不安が生まれることがある。

特に、幼い頃から

・常に努力してきた
・常に警戒してきた
・常に問題を解決してきた

という人にとって、安心や喜びはむしろ違和感を伴う状態になることがある。

その結果、人は無意識のうちに

・問題を探す
・不安を作り出す
・緊張を維持する

という行動を繰り返すのである。

ニュートラルという状態

ここで重要になるのが、ニュートラル(Neutral)という状態である。

ニュートラルとは、

・防御でもなく
・過剰な興奮でもなく

神経系が落ち着き、状況をそのまま観察できる状態である。

この状態では、恐れに反応するのではなく、恐れを 観察すること ができる。

すると神経系は、Protection ModeからLearning Modeへ自然に移行するのである。

Deliberate Calm

意図的に落ち着きを取り戻す『Deliberate Calm』が伝えている核心は、恐れの中で落ち着きを選ぶことである。恐れが存在すること自体は問題ではない。

問題は、恐れに反応してしまうことである。

ニュートラルな状態では、恐れはただの情報になる。

そこから、

・学び
・創造
・新しい選択

が生まれる。

まとめ

恐れは、人間の敵ではない。

それは神経系が危険を知らせるための自然な反応である。

しかし恐れを避け続けると、神経系は、Protection Modeに固定される。

そこでは

・完璧主義
・回避
・恥

が強くなり、人生の可能性が狭くなる。

大切なのは、恐れをなくすことではない。ニュートラルに戻ることである。

ニュートラルな状態では、

恐れは観察され、
神経系は落ち着き、
創造モードが開かれる。

そしてそのとき、人は恐れに動かされるのではなく、恐れを含めた現実の中で、より自由に行動できるようになるのである。

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