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【B#167】NETFLIXはどのようにしてネット配信の覇者になったのか?〜3冊の本から

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

つい先日、ネットフリックスのオリジナル・ドラマの「地面師たち」を見たが、国内の民放にないクオリティの高いドラマになっており、夢中になって見てしまった。ネットフリックスという会社って、なんでこんなに面白いコンテンツを作っているのだろうか?

ネットフリックスに関連する本は何冊か出版されているが、創業者や経営者によって書かれた本を読むことで、なぜ、ネット配信の王者の地位を確立したのか?そのヒントが得られるのではないかと思った。そこで、今回3冊手に取ってみた。

ネットフリックスの社員による3冊の本

ネットフリックスを共同したマーク・ランドルフ(Mark Randolph)とリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)と、企業文化を作り上げた人事部のパティ・マッコード(Patty McCord)の3人によって書かれた3冊だ。

マーク・ランドルフは「不可能を可能にせよ!NETFLIX 成功の流儀(That will not Work – The Birth of NETFLIX and the Amazing Life of an Idea)」

リード・ヘイスティングスは「NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX(No Rules – NETFLIX and the Culture of reinvention)」

パティ・マッコードは「NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く(Powerful – Buliding a Powerful Culture of Freedom and Responsibility)」

にそれぞれ3冊が出版されている。

今回のブログでは、ネットフリックスはどのようにして大きくなっていったのか?3冊の内容を簡単にまとめることで、その秘密を解き明かしたいと思う。

創業物語〜不可能を可能にせよ!

マーク・ランドルフの「不可能を可能にせよ!NETFLIX 成功の流儀(That will not Work – The Birth of NETFLIX and the Amazing Life of an Idea)には、ネットフリックスのアイデアからサービスを開始し、株式公開を経て、ランドルフが会社を去るまでの6年間を描かれている。

1997年当時、ランドルフとヘイスティングスは、車を運転しながら一緒に通勤する仲だった。ランドルフは、1994年に創業し、オンラインビジネスとして成功していたアマゾンを参考に、ネット販売をやりたいと考えていた。1車中で、アイデアをヘイスティングスにぶつけるもの、ことごとく却下される。

ある日、ビデオ(DVD)のオンラインレンタルのアイデアがヘイスティングスのアンテナに引っかかり、ランドルフが自分の時間を投資(経営者の役割)し、ヘイスティングスが資金を提供する(投資家の役割)ことになった。ランドルフの奥さんからは「それ、絶対にうまくいかない」と、コストがかかるからだ。

1998年4月14日に、ネットフリックスは米国初のDVDオンラインレンタル店として営業開始した。米国でDVDプレーヤーが試験販売されたのは1997年3月。当時、DVDのタイトルは800点だったため、全ての在庫を抱えることができた。

東芝、ソニーといったメーカーとのタイアップで、DVDプレーヤーの購入により、無料でDVDレンタルができるというクーポンをつける。サービスのアクセスが向上したが、なんと無料レンタルを利用した後に、戻ってこなかった。完全に持ち出しで赤字になった。

同時にDVD販売も行っていたが、レンタルは売上の3%を占めるのみで、アマゾンがDVD販売を始めたら、ネットフリックスは潰れるのが目に見えていた。そして、アマゾンから声がかかると、ランドルフはレンタルに舵を切ることになる。

1999年、実験のうちの一つとして誰もが発送しなかった「サブスクリプションモデル」を導入。1ヶ月定額料金を支払えば、好きなDVDを借りっぱなしで、返却期限もなかった。この本が主張している通り「先のことは誰もわからない」から「起業家は自分を信じて、失敗を厭わずに挑戦しなければならない」となる。

ネットフリックスのサービス目標は、映画に詳しい親切な店員が、親身になってDVDのレンタルの提案と案内を提供することだった。一方で、ネットフリックスの抱えるDVDは限られており、新作にリクエストが殺到すれば、全ての需要に応えることが難しく、コストも莫大になる。

そこで、アルゴリズムによるマッチングサービス(シネマッチ)の仕組みを導入することになった。ユーザーに映画を評価しもらい、同じ映画に関して肯定的な人と否定的な人をクラスターに分けて、一人一人独自に、ネットで商品を誘導する仕組みだった。

次に、翌日配送の実践へ。ある年を選んで数ヶ月、翌日配送を実施したところ、定着率が変化しないが、新規の申し込みが口コミで増えることが明らかになった。

サブスクリプション、マッチングサービス、翌日配送、それに加えて、社員のレイオフを経て、有能な人材に絞る戦略へ。結果的には、2002年5月にナスダック市場へ株式公開を果たす。

このような経験を積み重ねていく先に、ネットフリックスの社内文化が生まれた。

社内文化①〜自由と責任の文化

例えば、実験によって想定されるシナリオを一つずつ潰し、最終的に残ったものに賭ける。失敗に正直になること。徹底した正直(Candid)を大切にすること。自由と責任を大切にし、会社にとって利益は何か?の目線から責任を伴う意思決定一人一人の従業員が行う等だ。

このネットフリックスの会社文化を進めたのが、パティ・マッコード。「NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く(Powerful – Buliding a Powerful Culture of Freedom and Responsibility)」に、自由と責任の文化を深掘りをしつつ、人事の重要性について説明している。

ポイントは
1)従業員を大人として扱う
2)徹底的に正直になる
3)未来の理想からチームを考える
の3つ。

従業員を「大人」として扱う。一人一人、困難な課題を自力で解決する力をもっている。この考えが、自由と責任の文化を支えていることから、環境作りに着手。これも上記の実験精神を持って実践する。

例えば、従業員が、責任を持って時間を管理するため、有給休暇制度の廃止(適宜、上司と相談。休暇を取得するシステムへ)。上層部は率先して休暇を取ることを推奨。社長のヘイスティングスは6週間の休暇を取るそうだ。

同様に旅費規定も廃止。適切に判断して会社のお金を使ってもらうようへ移行させた。

徹底的に正直になるというのは、陰口や陰湿な社内政治を極力排除するため。批判を受けることにもオープンな文化が築くこと。そのために適切で迅速なフィードバックも従業員間で行う仕組みを取り入れる。問題になるのはフィードバックすることではなくて、フィードバックの与え方だ。フィードバックについては後述する。

最後の未来の理想からチームを考えるとは、チームに必要な最高な人材を集める。ここでいうチームは家族というよりも、スポーツチーム。成績を出すためのマネージャー、スタープレーヤーをどう確保するか、成果が上がらない人に対してどう対処するのか?等。

人材を採用するにあたって、ネットフリックスでは、
1)優れた人材の採用と従業員の解雇はマネージャーの責任
2)全職務は、人材ではなく、最高の人材を採用するよう務めること
3)優れた人材であっても、会社が必要とする職務のスキルに合わない場合は、進んで解雇すること
等をあげている。

社内文化②〜「4Aのフィードバック」の仕組み

最後に、ネットフリックスのフィードバックについてまとめたい。

ネットフリックスでは、性格に問題があることを指摘するのではなく、どのような行動を改善したらいいのか?に関するフィードバックが主になっている。

相手が具体的にどのような行動し改善していったらいいのか?理解できるようにするようアドバイスするようガイダンスを人事が示すのだ。ネットフリックスでは、これを「4Aのフィードバック」と呼ぶ。

「4Aのフィードバック」については、ネットフリックスの共同創業者であり、現CEOのリード・ヘイスティングスは「NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX(No Rules – NETFLIX and the Culture of reinvention)」に詳しい。

4Aのフィードバックとは、
1)相手を支援する目的で(AIM TO ASSIST)
2)行動変化を促す(ACTIONABLE)
3)感謝する(APPRECIATE)
4)取捨選択する権利がある(ACCEPT OR DISCARD)
のことだ。

フィードバックを与える側の2つのうち、1つは、相手を支援する目的(AIM TO ASSIST)で行うこと。自分を賢く見せる為、イライラを吐き出すため、相手を傷つけるため、フィードバックする「Brilliant Jerk(賢いけどやな奴)」的な態度ではなく、無私の率直さ「Selflessly Candid」を大切にすることだ。

無私の率直さでフィードバックをするとは、前向きな意図を持って、相手自身に行動を変えることで、会社にとってどのように役立つか?明確に説明し、2つ目の、行動変化を促す(ACTIONABLE)に結びつけることだ。

次に、フィードバックを受ける側は、感謝(APPRECIATE)し、そのフィードバックを真摯に耳を傾け、自分の考え方にとらわれない心で相手のメッセージを検討。言い訳や腹を立てることは一旦脇に置くということだ。

最後に、受ける側に取捨選択する権利がある(ACCEPT OR DISCARD)とし、フィードバックに対して、行動するかどうか、あくまでも選択権が自分にあるということを認識することだ。

この4Aのフィードバックが徹底され、ルールがないルールが支配するネットフリックス企業文化をマッコードが作ったことにより、ヘイスティングスは、有能な人材を集め、ストリーミングサービス、オリジナルコンテンツを含め、ネットフリックスのオリジナルなサービスを190カ国に提供できるようになったという。

まとめ

今回は、ネットフリックスはなぜ成功し、素晴らしいコンテンツを作り続けているのか?そのヒントが得られるのではないかと思って、ネットフリックスに関連する3冊の本手に取って読んでみた。興味深いと思ったことを中心にまとめさせていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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