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【P#82】脳・ADHD・ドーパミン〜脳内のネットワーク〜刺激薬の歴史③

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

ブログでは、3回に分けてADHD(Attention Deficit and Hyperactive Disorder、注意欠陥、多動性疾患)について取り上げている。1回目、ADHDで使用される「精神刺激薬」の歴史、2回目は、ADHDの診断の歴史、第3回目は、ADHD患者の脳の中で何が起きているのか?についてだ。

今回は、3回目。ADHD患者の頭の中で何が起きているのか?最新の脳科学が教えるADHDと、治療薬としてアンフェタミン、メチルフェネデートが効果を示す理由についてまとめたい。

脳の中にある3つの情報処理ネットワーク

今回は、脳がどのように情報処理しているのか?から話を進めたい。

「自宅を出て、最寄り駅まで歩く間、通過した家は何軒あったか?覚えていますか?」

といった質問が投げかけられたとしよう。毎日歩いていたとしても、情報が脳に伝わったとしても、正確な軒数を答えられる人はいないはず。なぜ、そうなっているかというと、注意を向けていないからだ。

「注意を向ける」「集中する」は、脳にとって莫大なエネルギーが必要な行為、疲弊させるのだ。そのため、脳内ではフィルターが働き、省エネのため「不要な情報には注意を向けない」という仕組みを作るようになった。

脳には、主に3つのネットワークによって情報処理が行われている。
1)デフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network、DMN):記憶や経験に応じて「自我」の形成に関わり、デフォルト(無意識)の状態で働く情報処理ネットワーク
2)セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(Central Executive Network、CEN):集中や注意を向ける際に、活発に働く情報処理ネットワーク
3)サリエンス・ネットワーク(Salience Network):1)と2)は対照的なネットワークなので切り替え役を担うネットワーク

もう少し詳しく知りたい方は、青砥瑞人さんの「ブレイン・ドリブン(BRAIN DRIVEN)」がわかりやすいので、チェックすることをお勧めします。

以下、ADHDとの関係で話を進めていきたい。

デフォルト・モード・ネットワーク〜自我の形成

2001年、ワシントン大学の神経科学者、マーカス・レイクルによってDMNが明らかになった。DMNとは、何もしていない時、無意識の時(デフォルト・モードという)に活動する部位として明らかになった。思考に関わる大脳と、記憶・感情などに関わる脳の部位をつなげるオーケストラの指揮者の役割を果たす。

なぜ、DMNが注目されたかというと、オーケストラの指揮者とは「自我」を意味する。要は、指揮者が全システムを管理し、一つにまとめ上げ「自我」というものを作り上げるのだ。

DMNは、外で何も起きていなくても、内面の思考が働く時に活性化するもので、自我を形成する上でストーリーを作る、他人の立場に立って考える等に関わっている。成人の人間に特徴的な脳の働きを示し、小児でも思春期の後の後期になるまで働かない。

人間は、大人になるにつれて「自我」を確立していく、同時にDMNが強化される。強化されると「内省」や「論理的」に物事を考えることができる。残念なことに内省が強くなりすぎると、内面に閉じこもることで、うつ病、依存症、強迫性障害、摂食障害など「思考パターン」が過度に固定されるような精神疾患になる。

瞑想実践者が自我を越えるときに、DMNが沈黙することから、マインドフルネスで初めて注目された。感覚として、自己と世界、主観と客観の区別ができなくなるのだ。

興味深いことに、幻覚剤(サイロシビン、LSD等)を摂取するとDMNを抑制することが研究者によって明らかになっている。このようなことから、マインドフルネス、幻覚剤が精神疾患の治療に役立つのではないかと臨床試験が進んでいる。

セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク〜集中、注意、業務の遂行

ぼーっとしている時にDMNが活発になるが、対照的に、集中や注意に向ける際、タスクを行っているときに活発になるCENが低下している。逆も然りで、DMNとCENは対照的な動きをする。

集中や注意を向ける際、タスクを行っている時に活発になるのがCEN。目的を達成する、物事を判断する、問題を解決する等に関わるネットワークとして知られている。参考に、注意ネットワーク(attention network、アテンション・ネットワーク)、業務(タスク)ネットワーク(task network)と呼ばれることもある。

ADHDとサリエンス・ネットワーク〜低ドーパミン仮説

サリエンス・ネットワーク(Salience Network)は、CENとDMNをうまくコントロールする。残念なことに、脳内のドーパミンの量が少ないと、サリエンス・ネットワークが働かず。CENとDMNのネットワークが同時に活発になり、脳が混乱。ADHDの症状を招いてしまう。ドーパミンの量が低いことで起きると考えられている。

ADHD治療薬の「アンフェタミン」と「メチルフェネデート」は、脳内のドーパミンを増やすことで、症状を改善させる。砂糖もドーパミンを上げることができるので、小児でADHDは甘いものを好む。大人のADHDも、砂糖、コーヒー、緑茶、タバコを好むのも、ドーパミンを上げることができるからだ。

瞬きとドーパミンとの関連性?

脳科学者のスタンフォード大学のAndrew Huberman教授のポッドキャスト(Huberman Lab)は、100万視聴と人気を誇っている。同ポッドキャストでは、ADHDで興味深いことを語っている。ADHD患者は、注意する時、瞬きの頻度が健常人よりも多いとのことと、一つのことに集中すると「過集中」になりやすいらしい。

実際、年齢を重ねるごとに、瞬きは多くなる。瞬きはドーパミンによって制御されていることから、瞬きの意識によってADHDが改善する可能性もある。他にも、ドーパミンを上げるようなサプリメントも注目されており、薬を使わずとも、日常生活でドーパミンを上げるようなことをすることで、ADHDの改善の可能性もある。

まとめ

今回は、ADHD患者の頭の中で何が起きているのか?情報処理ネットワークに支障が起きること。ドーパミンが不足すること等、最新の脳科学が教えるADHDを紹介。なぜ、ADHDの治療薬としてアンフェタミン、メチルフェネデートが効果を示すのかを含め、紹介させていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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