【P#55】妊婦と新型コロナ〜妊婦にワクチンを接種するか否か?〜1年半でわかったこと
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はじめに
こんにちは!東京・渋谷(恵比寿)でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。
新型コロナウィルスに対するワクチンが普及してから半年。様々なデータが集積されてきた。
通常、臨床試験の対象患者の中で小児と妊婦は、薬(ワクチン)の発売後にデータは集められるので、
これらの患者に対して、どう対策を取ったらいいのか?
どのようなことがわかれば、ワクチンの判断に役立つのか?
等、通常、ワクチンは人に使われることで、様々なことが明らかになる。
小児は「小児とコロナの後遺症〜そもそも小児のコロナ後遺症があるのか?割合は?」に書いたので、今回は妊婦についてまとめたい。
妊婦の免疫系〜免疫系とホルモンバランスの変化
人が妊娠をすると、胎児という異物が身体に宿ることになる(妊娠についての英語のわかりやすい解説記事は)。
免疫系が、胎児と母体の両方を守るため、ある免疫系は抑制され、別の免疫系は促進と仕組みの変化が起きる。
免疫系の変化以外にも、ホルモンバランスが変化し、主に尿路に変化が起きる。
尿路は、以下の4つからなる。
1)腎臓:尿を形成する
2)尿管:尿を腎臓から膀胱へと運ぶ通路
3)膀胱:尿が保管される場所
4)尿道:尿を膀胱から排出するための通路
妊娠により子宮が拡大し、尿管が圧迫。
一方で、身体は、ホルモンの一つ、プロゲステロンを多く作るようになり、尿管と膀胱の筋肉を弛緩させる。
結果として、膀胱に尿が留まる期間が長くなるため、尿路感染症のリスクが高まる。
もう一つのホルモンであるエストロゲンにより、カンジダ炎のリスクも高まる。
さらに、子宮が大きくなることで、他の臓器(胃、肺や心臓)押し上げられ、扁平した形になる。
結果として、徐脈や肺炎のリスクが上がる。
他にも、梅毒、リステリア症、肝炎、エイズ等もあり、注意を要することが多い。
ぜひ、妊婦に関して興味を持っている方で、英語が理解できる方は下記のYoutube動画をチェックください。
又、「Explainer on COVID19 vaccination, fertility, pregnancy and breastfeeding」(英文)は妊婦について有用な情報が満載なので、英語の文献にあたる前に、チェックすることをお勧めしたい。
新型コロナに感染した妊婦〜早産、新生児病棟に入るリスク等
まず初めに、新型コロナに感染したときに、妊婦に出産にどのような影響を与えるのか?
について。
それについては、2020年8月にBMJにて報告された論文がある。
又、新型コロナに感染した妊婦は、非妊婦に比べ、早産(37週未満での出産)になりがちで、新生児は新生児病棟に入院する可能性がある(帝王切開のリスクについては差がなかった)。
妊婦が新型コロナに感染した時の症状は?〜発熱、呼吸困難、筋肉痛
妊婦が新型コロナに感染したときに、どのような症状が出るのか?
先ほど紹介した、2020年8月にBMJにて報告された論文によると、新型コロナに感染した妊婦の症状として、発熱(40%)、咳(41%)、白血球の上昇(26%)、CRPの上昇(49%)だった。
興味深いことに、非妊婦に比べ妊婦は、新型コロナにより発症する症状が統計的に有意に少ないことが明らかになっている(4つの疫学調査、462,051の女性症例)。
例えば、非妊婦に比べ妊婦は、発熱(11本の疫学調査、240,324症例)、呼吸困難(11本の疫学調査、240,324症例)、筋肉痛(8本の疫学調査、240,105症例)の症状が少ない。
一方で、非妊婦に比べ妊婦は、集中治療室(ICU)に治療を受けるリスク、非侵襲的換気療法(は挿管、気管切開などの侵襲的な気道確保を行わずに、人工換気を行う療法)を受けるリスク、重度呼吸不全患者が受ける生命維持法の一つ体外式膜型人工肺の治療を受けるリスクが高まる。
又、新型コロナの重症化のリスクは、一般人と同様、高齢、既存の罹病歴、BMI(体重が多い)が高値等になっている。
妊婦、胎盤、胎児〜新型コロナや感染により免疫は伝わるのか?
妊娠すると、胎盤を通じて、免疫系の抗体(IgG)が胎児へ伝わることが知られている。
ちなみに、新型コロナの感染やワクチンを接種すると、まず最初にできるのがIgM。
その後、IgGが作られる。IgMは、胎盤を通過できない。
何と、モデルナmRNAのワクチンを1回、妊婦が新生児の誕生する3週間前に接種した症例報告がある。
興味深いことに、ワクチンによる抗体(IgG)が新生児の方にも伝わることがわかった。
又、妊婦65症例のうち、新生児5例がIgM抗体を持つことも報告された。
IgMを持つことは、すなわち、母子ともに感染する。
そして妊婦がワクチン接種を1回行ってから15日後、IgGが胎児に伝わることもわかった。
新型コロナのワクチンによって不妊は起きるのか?副反応は?
通常、臨床試験では、対象患者に妊婦は入っていない。
しかし、臨床試験の途中で、妊娠になるケースがある。
実際、臨床試験の全症例中、65症例で妊娠が認められた。
そして、ワクチンを接種した後に、妊娠症例が多数(米国やカナダ)で報告されている。
約35,000例の米国の妊婦の追跡調査では、発熱や倦怠感などの副反応の割合は非妊娠女性と同程度、胎児や出産への影響が認められなかった。
今回の新型コロナのワクチンは、S蛋白質を作ることで、感染予防に働く。
胎盤の中にS蛋白質と似た蛋白質のSyncytinの働きを阻害することで、不妊になるのではないかという仮説もあったが、
S蛋白質に対する抗体は、Syncytinには結合しないという報告があり、この説は否定されている。
日本の厚生労働省はどういっているのか?
厚生労働省は、妊娠中、授乳中、妊娠計画中の方でも、ワクチンが接種することを勧めている。
そして、mRNAワクチンが妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告がないとしている。
まとめ
妊婦について、現段階でわかっている情報を中心にまとめた。
これからも、色々とデータが出てくると思うので、時々ブログで配信していく予定だ。
ぜひ、少しでもワクチンを接種する際に、参考になれば幸いです。
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