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【P#47】「イベルメクチン」と新型コロナ〜既存の薬から治療効果を探す意味について

はじめに

コロナウィルスの感染症が中国・武漢市から広まってから1年半。

過去にmRNAワクチンについては、2回に渡ってブログに紹介した(「mRNAワクチン〜技術的に何がすごいのか?」)(「ワクチンの接種は1人1人が情報を収集して判断することが大事」参照)。

結論から言えば、
「ワクチンについては、接種するか否かは、自己責任で一人一人判断していくしかない」
なぜならば、
「ワクチンついての情報は調べられている最中で、限られた情報で判断が求められる」
からだ。

コロナウィルス感染症の治療薬〜事実は何か?からみる

大事なのは、
「誰がいったか?」
ではなく
「事実は何か?」
の視点で考えること。

そのために、
「今わかっていることから、どう判断するか?」
の仮説から「自分なりの答え」を出すことが求められる。

今、ワクチンが普及しているのと同時に、コロナウィルス感染症について様々な治療薬が試されている。
その中で、注目されているのが、寄生虫の薬の「イベルメクチン」だ。

ノーベル賞受賞の大村智教授とイベルメクチン

イベルメクチンは、大村智博士と製薬会社のメルク社のウィリアム・キャンベル博士の2名によって発見された物質。
大村博士は、日本全国にある土を採取。
そこにいる様々な微生物が作る物質を見つけ出すことを行う研究者の一人だ。

大村博士の履歴はユニークだ。
ぜひ「ストックホルムへの廻り道」を読んでいただきたいが、その内容の一部を紹介したい。
山梨大学を卒業後、一時夜間の工業学校の教師として勤務。
そこから、研究者として志して、東京理科大学の大学院へ入学して修士を修了。
その5年後に、東京大学で博士号を取得している。

当時珍しかった、製薬業界から研究費を得て産学協同で研究を行うことを、いち早く取り組む。
薬になるような物質を見つけたら特許を取り、所属する北里研究所の運営資金にする。

北里研究所附属の病院の待合室の雰囲気を良くするために絵画を購入し、美術館まで作ってしまう、という魅力的な人生を歩んでいる。
私も、東京大学大学院医学系研究科で博士号を取得。いろいろな研究者を見てきたが、こんなユニークな履歴を持った方は、初めて。「ストックホルムへの廻り道」は興味深く拝読した。

さて、製薬業界では、大村博士が行っている研究のことを探索研究(スクリーニング)と呼ぶ。
スクリーニングの中から、高血圧に効果を示す薬や、血栓を溶かす薬が生まれる。
しかし、見つけ出すのは、困難に近く、成功確率は0.0040%だ。

大村博士は、絶えず他人がやらないスクリーニングの方法を考えて、この問題を解決した。
従来の方法だと、病原菌の働きを抑える、酵素の働きを妨げるといった、活性を指標に、物質を探す。
一方で、大村博士は最初に化合物を見つけた上で、それから性質や活性を調べた。

結果として、抗生物質を7種類だけではなく、世界初の分子標的薬(グリベック)や脂肪酸生合成阻害剤(セルレニン)等。
大村博士の研究室だけで10種類以上の重要な物資を発見している。

その中で、ノーベル医学・生理学賞に繋がったのが、イベルメクチン。
土壌から分離された微生物が作る、寄生虫(線虫類など)に有効な「エベルメクチン」を発見。
細菌や真菌などを殺菌するのではなく、寄生虫(鉤虫、回虫、肺線虫、糸状虫などの線虫類)やダニ、ハエの成虫や幼虫などに少量で殺虫作用を示すことがわかった(発見の経緯については「エバーメクチン」参照)。
エバーメクチンは、マウスに対する毒性があったため、少し化学構造式を変えた「イベルメクチン」が作られた。

イベルメクチンの特許は、米メルクが出願、新薬承認へ(特許成立は1978年、今は特許切れ)。
世界で1億2千万人がかかると言われる「オンコセルカ症」に有効であることがわかった。
今では、人だけではなく、動物への寄生虫対策にも使われており、現在までの総売上高は3兆円。
得られた特許料は、200億円にも及ぶ。

イベルメクチンとコロナウィルス感染症

「イベルメクチンがコロナウィルスに使えないかどうか?」
2020年1月のコロナウィルスの感染流行が開始。
医療現場で、コロナウィルス感染症の治療薬で片っ端から、調べて行く途中で「イベルメクチン」が注目された。

イベルメクチンは臨床現場で約30年使われ、長期に渡って安全性が確認されている。
その上、簡単に手に入れることができることから、南アフリカおよびラテンアメリカの一部の国々において、治療目的に使われている。

米メルクとイベルメクチン〜科学的エビデンスが不十分

ただし、問題点もある。
特許が切れた薬剤のため、製薬業界にとってうまみがない上、大規模臨床試験が行われていない。
現に、特許を持っている当の米メルクが
新型コロナウイルス感染症流行下におけるイベルメクチンの使用に関する Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.のステートメント

1)前臨床試験では新型コロナウイルス感染症に対する治療効果を示す科学的な根拠は示されていない
2)新型コロナウイルス感染症患者さんに対する臨床上の活性または臨床上の有効性について意義のあるエビデンスは存在しない
3)大半の臨床試験において安全性に関するデータが不足している

と表明。
米メルクは、イベルメクチンに効果がないといっている。

FLCCCとイベルメクチン〜最新科学エビデンスを紹介

さらに、米国のバイデン政権は、2021年6月20日までに、治療薬の開発に約30億ドル(約3300億円)を投資すると発表した。(「U.S. to Invest More Than $3 Billion in Covid-19 Antiviral Development」参照)。
既存の薬を使って、コロナウィルスの治療は可能だと考える米国の医師もいる。

Joe Rogan Experienceで米国の臨床現場でコロナウィルス感染症の治療に関わっているDr. Pierre KoryとBret Weinsteinへの3時間に及ぶインタビューを公開(下記のリンクから)。
効果があることをわかりやすく(英語ですが)話している。

参考に、Dr Pierre Koryは、FLCCC(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)の団体の責任者として、イベルメクチンを推奨。
FLCCCのホームページでイベルメクチンについて情報公開している。

イベルメクチンについて、下記の結果を紹介している。
1)60の臨床試験(うち30が無作為臨床試験)に573名の科学者、21,825症例でイベルメクチンが投与されてきた
2)感染予防のためイベルメクチンを投与した、13の臨床試験で、85%の予防効果を発揮
3)コロナウィルスの感染症の初期治療にイベルメクチンを投与した、26の臨床試験で、74%の予防効果を発揮
4)コロナウィルスの感染症の初期治療にイベルメクチンを投与した、26の臨床試験で、43%の予防効果を発揮
5)コロナウィルスの感染症に対してイベルメクチンを投与した際に、死亡率を調べた23の臨床試験で、66%の改善
6)コロナウィルスの感染症に対して30の無作為臨床試験で59%の改善が認められた

このように一定の効果が認められている。

イベルメクチンと日本

日本でも動きがある。
大村博士が直接、日本では製薬会社の一つ講和に臨床試験を依頼。
2021年7月1日に興和が「新型コロナウィルス感染症患者を対象としたイベルメクチンの臨床試験を開始する」と発表した。
軽症者1000人の規模の臨床試験を年内までに行い、厚生労働省に承認を求めたいとのことだ。

参考に、本邦で承認されているコロナウィルスの治療薬として、
1)レムデシビル(ギリアド・サイエンシズ株式会社)
2)バリシチニブ(日本イーライリリー株式会社)
があるので、合わせて情報共有させていただく(承認情報は「PMDAにおける新型コロナウイルス感染症対策に係る活動について」を見てください)。

まとめ

今回は、イベルメクチンについて紹介した。
Newsweekの記事(「大村博士発見のイベルメクチンは新型コロナの「奇跡の治療薬」? 海外で評価割れる」)でも、イベルメクチンの評価が割れているようだ。

特許が切れた薬で安全性も確立しているので、新規の薬に開発費を投じるのもいいが、既存の薬で成果の出るものに目をつけてみるのも大事だと思う。

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