科学との正しい付き合い方 内田麻理香 14冊目
私は、かつて研究者を目指して、大学院に入って学位もとった。しかしながら、興味が発散しがち、深く一つのテーマを追求できないという自分の考え方及び 研究者としての限界に気付き、7年前に研究者をあきらめた経歴を持っている。お陰で、社会に出るのが遅くなったが、その分、新鮮味を持って仕事に取り組ん でいる。
かつて、サイエンスを伝える仕事に就きたいなぁ、と漠然と思い、それを目指していたが、いろいろな人との出会いがあり、現在の製薬会社でマーケティングの仕事にたどり着いた。人の運命というのは分からないものだ。
さて、同じように研究を目指し、大学院に入ったが、途中で研究者を辞め、サイエンスライターの道に入った内田麻理香氏の本「科学との正しい付き合い方」を今週末読んだ。
経歴が私に似ているところのみならず、サイエンスを伝える人はどのようにして伝えているのだろうか?という点にすごく興味を持った。
内田氏によるとサイエンスを伝えていく際には、「見える科学技術」として伝える方法と、「見えない科学技術」として伝える方法の二つがあるとのこと。
見える科学技術の表現法としては、いわゆる、正統的な科学技術を伝えるスタイル、すなわち「正確に」「わかりやすく」伝えることになる。例えば、
川の浅瀬の流れが早い。その急流は岩にせき止められたのち、流れは二つに分かれる。
これに対して、指摘されないと分からないような、暗示的に伝える方法、すなわち「見えない科学技術」で同じように上記の文章を伝える場合には、
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ 崇徳院 (小倉百人一首)
となる。
サイエンスを伝える場合には、科学論文からはじまり、ブルーバックスなどの本が有名だが、どうしても「見える科学技術」の本が多くなりがち。そのため社会 と結びつきが希薄になる傾向がある。やはり社会との結びつきがあるからこそ、面白いわけだから。実際、ノーベル文学賞を見ているとサイエンスをやる人から は出ていないという例も興味深い。
もっともっと、「見えない科学技術」による表現方法に注目されるべきだとのこと。そうすることで、より科学に対する興味を増すということを伝えたいと思った。
考えてみれば、科学については、ミステリーと結びついた、ダン・ブラウンの本や東野圭吾の「ガリレオ」がある。社会とサイエンスがもっと結びつくような伝え方ができるとおそらく、科学に対する興味を増し、いまのようなサイエンス離れは食い止められるのではないかと思う。
サイエンスの経験があるので、自分自身、もっとサイエンスについても社会との関係で今後、発信してきたいと思う。
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