【E#286】「NO」のあとに、どうやってYESを取り戻すのか──間が生まれると、仕事の質も変わる
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はじめに
渋谷を拠点に、ロルフィング®やコーチング、タロット、脳活講座を行き来しながら、考えること・感じること・身体感覚(肚・丹田)が、自然にひとつの判断としてまとまっていく状態を取り戻すための場をつくっている大塚英文です。

最近、身体性についてのコラムを書き続けている。前々回は、「考えることを言語化する力」と「実際に起きている経験を言語化する力」のズレについて述べた。
前回は、身体が「NO」と言っているにもかかわらず、私たちはそれを無視してしまうことがある、という話を書いた。
今回は、その続きである。
身体のNOに気づいたあと、どのようにしてYESを取り戻していくのか。
その点について考えてみたい。
緊張したまま働くということ
筋肉に強く力が入った状態で仕事をするのと、適度に力が抜けた状態で仕事をするのでは、仕事の効率はまったく違う。
力が入りすぎていると、呼吸は浅くなり、視野は狭くなり、判断は急ぐ方向に傾く。
一部の筋肉だけを使い、一部の思考だけを使って、「早く結果を出そう」とする。
その状態は、身体が小さなNOを出しているにもかかわらず、頭で押し切っている状態でもある。
気功で体験したこと
友人の紹介をきっかけに、2023年から年に3回、岡山市在住の梁薇先生に気功を学んでいる。教わった動きをひとつひとつ丁寧に行いながら、気の流れを感じ、身体の状態を知り、自分の感情を見つめる。自分の内側に向かう気づきの多いワークショップである。
3年間の経験の中で、徐々に分かってきたことがある。
初心者の頃は、頭でうまくやろうとし、身体をうまく動かそうと意識していた。しかし梁薇先生からは「身体がガチガチで、動きがスムーズではない」と指摘を受ける。最初は、どこに緊張があるのか分からず、戸惑いがあった。
やがて明らかになってきたのは、緊張した身体には共通した特徴があるということだ。
- 一部の部位だけを使っている。
- 身体を早く動かそうとする。
- 頭だけで身体を動かしている。
興味深いのは、何度か練習を重ね、身を委ねることや「今ここ」に意識を向けること、つまり頭で考えることやエゴを手放したときに、身体の動きが変わるという点である。
- 関節一つひとつを動かして、使っている。
- 筋肉一つひとつをゆっくり動かしている。
- 呼吸や、身体感覚も動員している。
動きは急がない。そこには「間」がある。
その「間」が生まれるとき、これまでNOと言っていた身体が、現実をあるがまま受け入れ、YESへと移行していく。無理に動かさなくても、自然に次の動きが立ち上がるのである。
梁薇先生は「うまく力が抜けると、仕事も効率が上がり、成果も上がっていく」と話していたが、私もその言葉には深く頷ける。
ブラジリアン柔術で起きること
もうひとつ例を挙げたい。
2024年5月から、週3回、ブラジリアン柔術・ARTA広尾(旧CARPE DIEM広尾)道場で練習を続けている。
ヨガを長く続けているにもかかわらず、「なぜそんなに力が入るのか」と言われる日々だった。実際、力任せに動こうとするとすぐに疲れ、身体ごと崩れてしまう。黒帯の先生から指導を受けても、頭で理解しても、身体がついてこない感覚があった。
練習を始めて1年半が過ぎ、ヨガや気功で学んだ「空間」や「間」を感じる感覚を柔術の中でも意識できるようになると、不思議な変化が起きた。
時間がゆっくり流れているように感じるのである。
焦りが消え、相手の重心や圧の方向がはっきり分かる。すると、驚くほど小さな力で動ける感覚が少しずつ掴めてきた。
ここでも鍵になるのは「間」である。焦って動かず、身体の反応を待つ。
そのとき、NOを無視した動きは消え、YESが自然に浮かび上がる。
YESは、整った身体から生まれる
YESは頭で決めるものではない。身体が整い、余計な緊張がほどけ、スペースが生まれたときに自然に浮かび上がるものである。
ロルフィングで鎧が外れ、骨盤が立ち(私が「決断できる姿勢」と呼ぶ状態)、コーチングで長い沈黙のあとに内側の声が立ち上がる瞬間。いずれも本質は同じである。
身体がNOを言わなくなるのではない。NOを聞けるようになり、間をつくれるようになった結果として、YESが見えてくる。
仕事の質が変わる
間のない働き方は、常に緊張状態である。間のある働き方は、余白の中で判断できる。
これは精神論ではない。
筋肉の状態が変われば、呼吸が変わり、神経系が変わり、判断の質が変わる。
NOを無視する働き方から、YESが浮かび上がる働き方へ。
その違いは、生産性や創造性にも確実に現れる。
まとめ
身体のNOに気づくこと。そして、急がずに間をつくること。
気功でも、柔術でも、ロルフィングでも、そして仕事でも、本質は同じである。
YESは、力を入れて作るものではない。
間の中で、自然に立ち上がるものである。





