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【B#239】“The Courage to Be Imperfect” ― 不完全である勇気

はじめに

こんにちは、渋谷でロルフィング・セッションや脳科学をベースにした講座を提供している大塚英文です。

私たちはしばしば、「弱さを見せることは恥ずかしい」と感じてしまう。しかし、ブレネー・ブラウン(Brené Brown)は、ご自身の研究の中で、この“脆弱性(vulnerability)”こそが人間のつながりと創造の源であることを明らかにした。

前回のブログ記事では、脆弱性についてまとめた。ブレネー・ブラウン(Brené Brown)は、この「弱みを曝け出すこと」への恐れを十数年にわたり研究している。彼女を有名にしたのが、2010年6月、米国・ヒューストンで行われたTED Talkの講演だった。

彼女はTED Talkの中でこう語っている。

“Vulnerability is not weakness. And that myth is profoundly dangerous.”
― 脆弱性は弱さではない。この思い込みこそが、私たちを最も深く傷つけるのです。

脆弱性とは、不確実性やリスク、感情的な曝露を引き受けながらも、自分の心を開く勇気である。それは、失敗や拒絶の可能性を含みながらも、「それでも前に進む」という決意の形であり、人間らしさの核心である。

ところが、私たちは多くの場合、「完璧であれば恥を避けられる」と信じてしまう。ブラウンはこう指摘する。

“Perfectionism is not self-improvement. It’s the belief that if we look perfect and do everything perfectly, we can avoid the pain of blame, judgment, and shame.”
― 完璧主義とは自己改善ではない。完璧に見え、完璧に行動すれば、非難や恥の痛みを避けられると信じることなのです。

完璧主義は努力の仮面をかぶった恐れであり、創造性を最も強く阻む心の防衛である。今回のブログでは、完璧主義の鎧を静かに解き、本当の意味で“生きたつながり”を取り戻すための七つの資質――
Authenticity(本当の自分であること)
Compassion(思いやり)
Resilience(回復力)
Mindfulness(気づき)
Spirituality(つながりの感覚)
Faith(信頼)
そして Creativity(創造性)――
を探る。

Authenticity ― 本当の自分で生きる勇気

Authenticityとは、他者の期待を満たすための仮面を脱ぎ、自分の価値観に正直であることである。

ブラウンは下記のように定義する。

“Authenticity is the daily practice of letting go of who we think we’re supposed to be and embracing who we are.”
― オーセンティシティとは、「こうあるべき自分」を手放し、「今の自分」を受け入れる日々の実践である。

「自分を偽る」ことは脳の防衛反応を高め、扁桃体を活性化させる。一方で「ありのままでいる」と、報酬系が働き、心身はリラックスして創造的になる。

Authenticityとは、完全ではなく誠実である勇気を選ぶこと。それがすべてのつながりの出発点である。

Compassion ― 思いやりは自己批判を溶かす力

完璧主義者はしばしば、他人よりも自分に厳しい。小さな失敗にも「自分には価値がない」と責め立ててしまう。この悪循環を断ち切るのが思いやり(compassion)である。

ブラウンは下記のように定義する

“When we work from a place that says, ‘I’m enough,’ we stop screaming and start listening.”
― 「私は十分である」という場所から生き始めるとき、私たちは叫ぶのをやめ、人の声に耳を傾けられるようになる。

思いやりとは、まず自分に対して向けられるものである。自己への優しさが扁桃体の興奮を鎮め、オキシトシンを分泌し、心を「安心とつながり」の状態に戻す。それは“弱さを受け入れる力”であり、“他者と共にいる力”でもある。

Resilience ― 立ち直る力は失敗を恐れない心から生まれる

レジリエンス(回復力)は、「倒れない力」ではなく、「倒れても再び立ち上がる力」である。脆弱性を受け入れる人ほど、失敗を通してより深い学びと創造を得る。

ブラウンは下記のように定義する。

“Vulnerability sounds like truth and feels like courage. Truth and courage aren’t always comfortable, but they’re never weakness.”
― 脆弱性は真実の響きを持ち、勇気の感触を伴う。真実と勇気はいつも心地よいわけではないが、決して弱さではないのです。

脳科学では、ストレス下で扁桃体が過剰に反応すると、前頭前皮質の思考機能が低下する。しかし、呼吸・運動・瞑想などによって神経可塑性を保てば、感情の嵐から回復する回路が育つ。Resilienceとは、「完璧さではなく、柔軟さ」に宿る力である。

Mindfulness ― 気づきによってコントロールを手放す

完璧主義の思考は、絶えず「次」「もっと」と自分を追い立てる。マインドフルネスとは、その暴走を止め、「今ここ」に意識を戻す訓練である。

ブラウンは下記のように定義する。

“Mindfulness allows us to fully feel our vulnerability without letting it define us.”
― マインドフルネスは、脆弱性を感じ切りながら、それに自分を支配させない力を与えてくれる。

呼吸に意識を戻すと、前帯状皮質と島皮質が活動し、感情と身体の情報が統合される。その瞬間、コントロールへの執着が緩み、心に余白が生まれる。マインドフルネスは、「何かを直す」のではなく、「ただ気づく」ための実践である。

Spirituality ― 不完全さの中にある“つながり”

スピリチュアリティとは、宗教的信仰ではなく、自分を超えたつながりを感じる感覚である。

ブラウンは下記のように定義する。

“Spirituality is recognizing and celebrating that we are all connected to each other by a power greater than ourselves.”
― スピリチュアリティとは、私たちが自分を超えた力によって互いに深く結びついていることを認め、祝福することです。

孤独や恥は「分離」の感覚を生むが、スピリチュアリティは「私はこの世界の一部である」という感覚を取り戻す。それは、完璧を求める心を静かにほどき、「不完全なままで十分だ」という確信へ導く。

Faith and Uncertainty ― 不確実性の中で心を開く力

脆弱性を生きるとは、コントロールを手放し、不確実性の中に身を置くことでもある。

ブラウンは下記のように定義する。

“Faith is a place of mystery, where we find the courage to believe in what we cannot see and the strength to let go of our fear of uncertainty.”
― 信頼とは、神秘の中に身を置き、見えないものを信じる勇気と、不確実性への恐れを手放す力のことです。

Faith(信頼)とは、「見えないものを信じる」精神的筋力であり、Uncertainty(不確実性)はその力が試される場である。脳科学的には、信頼を感じるとき、扁桃体の活動が低下し、前頭前皮質が穏やかに制御を取り戻す。Faithは、未来が不透明でも“つながりを選ぶ”勇気の別名である。

Creativity ― 完璧主義を手放したとき、創造性は戻ってくる

完璧主義と創造性は、同じ心の土壌を取り合う。完璧主義が恐れと比較でその土壌を硬くする一方で、創造性は「遊び」と「試み」によってしか芽吹かない。

ブラウンは『The Gifts of Imperfection』でこう語る。

“There is no innovation and creativity without vulnerability.”
― 脆弱性なしに、革新も創造性も存在しないのです。

創造とは、結果が保証されないまま手を伸ばす行為である。それは「恥をかくかもしれない」「失敗するかもしれない」ことを受け入れる勇気を前提としている。

脳科学的には、創造的思考の際にデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が活性化し、自己表現や想像のプロセスが働く。しかし完璧主義が強いと、扁桃体がDMNを抑制し、「失敗を避ける安全な思考」しか生まれない。

創造性を取り戻す第一歩は、恥の声を静め、“まだ完璧ではない自分”で試すことである。それは、恐れを超えて世界と関わる最も人間的な行為であり、脆弱性の実践そのものである。

おわりに ― 不完全さを抱えて“全心で生きる”

Brené Brownは、以下のように述べている。

“Imperfections are not inadequacies; they are reminders that we’re all in this together.”
― 不完全さは欠点ではない。それは、私たちがこの旅を共にしていることの証なのです。

完璧を装うことで安全を得ようとするのは自然な防衛である。だが、その鎧は愛・共感・創造性といった“生の力”をも遮断してしまう。

Authenticityは「自分を偽らない」力、
Compassionは「自分を責めない」力、
Resilienceは「再び立ち上がる」力、
Mindfulnessは「今ここに戻る」力、
Spiritualityは「つながりを思い出す」力、
Faithは「不確実性の中で信じる」力、
そしてCreativityは「不完全なまま世界に参加する」力である。

脆弱性とは、弱さではなく、真実・勇気・思いやり・創造・つながりの入口である。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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