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【N#205】健康寿命を延ばすための「戦略」と「戦術」──未来を逆算する思考法

はじめに

こんにちは。渋谷でロルフィング・セッションと脳科学をベースにした講座を提供している大塚英文です。

前回のブログでは、Peter Attiaが提唱する「健康寿命を延ばすためのフレームワーク」を、運動・睡眠・栄養・感情管理という4本柱とともに紹介した。今回は、その核となる「戦略」と「戦術」の違い、そしてそれを継続的に改善するための「測定とフィードバック」の重要性を掘り下ることにする。

本記事の内容は、米国の医師、Peter Attiaによる著書『Outlive: The Science and Art of Longevity(未邦訳)』および彼のポッドキャスト”The Drive”で語られた内容をもとにまとめている。

戦略と戦術──軍事用語からの転用

「戦略(Strategy)」と「戦術(Tactics)」は、もともと軍事用語。

  • 戦略(Strategy):国家や軍全体の長期的な勝利のための計画や方針。どの戦場で戦うか、資源をどう配分するかといった、大局的な方向性を決める。
  • 戦術(Tactics):実際の戦闘現場での具体的な行動や方法。部隊の配置、攻撃のタイミング、兵器の使い方など、短期的で実務的な動きを現す。

この2つの違いは、戦争だけでなく、ビジネスや人生設計、そして健康寿命の延伸にも応用できる。

戦略がなければ戦術は迷走し、戦術がなければ戦略は絵に描いた餅になる──この関係性は、健康づくりにもそのまま当てはめることができる。

戦略と戦術の違い(健康寿命バージョン)

項目戦略(Strategy)戦術(Tactics)
定義長期的なゴールや方向性ゴールを達成するための具体的手段
時間軸年単位〜生涯スパン日々〜週単位
質問「どこに向かうのか?」「どうやってそこに行くのか?」
例(健康寿命)80歳で自力登山ができる体力週2回の筋トレ、Zone2有酸素運動、バランストレーニング

戦略から戦術を導く「逆算思考」

Attiaのアプローチの特徴は、「未来の理想像」から逆算すること。これは経営コンサルティングや軍事作戦計画の思考に近い発想と言っていい。

  1. 未来像を具体化する(戦略)
    • 年齢、体力、日常動作のイメージを数値化
    • 例:「85歳でも片足立ちで10秒」「階段を手すりなしで昇降」
  2. 必要な能力を分解する
    • 心肺機能(VO₂ MAX)
    • 筋力(特に下肢と体幹)
    • 柔軟性・バランス能力
    • 認知機能
  3. 能力ごとの戦術を設計する
    • 運動メニュー、食習慣、睡眠環境、ストレス管理法を選択
    • 必要に応じて測定機器や専門家を活用
  4. モニタリングと改善
    • 測定 → 改善 → 再測定のPDCAサイクルを回す

健康寿命の「戦略」事例

  • 戦略A:「90歳で日常生活を自立して送る」
    • 戦術:1日8,000歩、週2回の筋トレ、週150分のZone 2有酸素運動
  • 戦略B:「80歳で趣味のテニスを週1回続ける」
    • 戦術:下肢筋力トレーニング、瞬発力向上ドリル、関節可動域の維持
  • 戦略C:「85歳で世界一周旅行」
    • 戦術:長時間歩行トレーニング、荷物を持って移動する筋持久力強化、睡眠リズムの最適化

戦術を確実に実行するためのコツ

  1. 測定可能な指標を持つ
    • VO₂ MAX、筋力(握力・スクワット重量)、血糖変動、睡眠スコアなど
  2. 優先順位をつける
    • 一度にすべて改善しようとせず、1〜2項目に集中
  3. 環境を整える
    • 運動時間をスケジュール化
    • 睡眠環境を先に整える(暗さ・温度・光)
  4. 行動を習慣化する
    • 小さな成功体験を積み重ねる

戦略と戦術を結ぶ「問い」

Attiaは、戦略と戦術を繋ぐカギは「良い問い」だと言う。
例えば——

  • 「この行動は、未来の自分の役に立つか?」
  • 「もし時間が半分しかなかったら、何を優先するか?」
  • 「測定できる形で成果を示せるか?」

測定とフィードバック──改善サイクルを回す

戦略と戦術を立てても、それを放置すれば形骸化します。鍵は、定期的な測定とフィードバック。

測定の役割

  • 進捗を客観的に把握する
  • 改善点を数値で明確化する
  • モチベーション維持に繋がる

測定の例

  • 運動:VO₂ MAX、握力、スクワット回数、バランステスト
  • 睡眠:ノンレム睡眠の割合、就寝時間の安定性(OURA Ring、Apple Watch)
  • 栄養:食後血糖変動(リブレ・Dexcom)、体組成(筋肉量・体脂肪率)
  • 感情・ストレス:HRV(心拍変動)、自己評価スコア

フィードバックの方法

  1. 定期レビュー(月1回など)
    • 数値と体感を照らし合わせる
  2. 微調整
    • 例:VO₂ MAXが低下→Zone 2時間を増やす
  3. 再測定
    • 改善の効果を確認し、次の課題へ

まとめ──未来から現在を設計する

  • 戦略は「未来像」、戦術は「行動計画」
  • 未来から逆算し、能力を分解して具体的行動に落とし込む
  • 測定とフィードバックのサイクルで精度を高め、成果を維持する

本質は、「健康寿命の延伸は偶然ではなく、設計できる」ということ。未来の自分に投資する気持ちで、戦略・戦術・測定・改善の4点セットを回していくことが大事になる。

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