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【N#204】健康寿命を延ばすためにどのように考えるか?──Peter Attiaの『Outlive』に学ぶ

はじめに

こんにちは。渋谷でロルフィング・セッションと脳科学をベースにした講座を提供している大塚英文です。

私は、「老いて生きる期間ではなく、若々しく生きる期間が長くなる」 すなわち「健康寿命」を延ばしていくために、どうしたらいいのか?について、情報発信をしている。

本格的に、健康寿命に興味を持つようになったのは、50代に入ってからだ。2019年11月から年長者(70代〜90代)向けにヨガのレッスンを提供。高齢者と接するようになり、生き方について考えるきっかけを与えてくれた。

そして、「2本のポッドキャスト紹介〜2023年を振り返って」に書いたように、健康長寿の専門家・医師のPeter Attiaさんのポットキャスト(The Drive)と出会い、定期的に拝聴。健康寿命を全うするための知識を身につけることができた。

The Driveでは、2〜3時間の枠で必ず専門家のゲストを呼んで、対談を行なっている。テーマは、「快適な睡眠の方法」「サプリメントの取り入れ方」「運動の方法」「心血管の予防」「がんの最新治療の現状」「神経変性疾患の予防」「糖尿病」「老化」「どのように生きるのか?」等、多岐にわたっている。

Peter Attiaは、もともと医師でありながら、コンサルティング会社出身という異色の経歴を持っている。更に、水泳、長距離自転車、マラソンといった持久系スポーツの経験に加え、トレーニングや栄養学への探究心は極めて実践的。

過去に、3年間にわたる厳格な糖質制限を実施し、自らの体でその効果と限界を検証してきた。こうした経験と、コンサルティングで培った論理的思考が融合し、彼の健康論は「感覚」ではなく戦略と戦術のフレームワークとして構築している。

2年前に『Outlive: The Science and Art of Longevity』を出版。繰り返し読んでいる本の一つだが、寿命の「長さ」よりも、健康寿命(Healthy Lifespan)をいかに最大化するかを中心に議論している。

健康寿命というゴール

健康寿命(Healthy Lifespan)とは、自立した生活を送れる期間のこと。平均寿命との差(多くの場合10〜15年)は、病気や身体機能低下の時間であり、この「不健康期間」を最小化することがAttiaの最大のテーマと言っていい。

Attiaはこの課題を、ビジネスのプロジェクト設計のように整理している。

戦略と戦術──フレームワーク思考

Attiaの健康計画は、コンサルタント的な戦略(Strategy)→戦術(Tactics)の構造を持つ。

  • 戦略(Strategy):長期的ゴールの定義
    例:「80歳になっても自力で階段を上がれる」「孫と山登りができる体力を維持する」
  • 戦術(Tactics):そのゴールを実現する具体的手段
    例:週2回の筋力トレーニング、VO₂ MAXを高める有酸素運動、睡眠改善、血糖値管理

戦略がないと戦術は散発的になり、効果が薄れる。逆に、明確なゴールを設定すると、日々の行動は「未来の自分」への投資となりうる。

老化のメカニズムを知る

老化は単なる年齢の数字ではなく、身体の機能低下という生物学的プロセス。Attiaは老化を4つの領域に分けて考える。

  1. 認知機能の低下:記憶力、注意力、処理速度の衰え
  2. 身体機能の低下:筋肉量・骨密度・バランス能力の減少
  3. 代謝と循環器の変化:インスリン抵抗性、心肺機能の低下、動脈硬化
  4. 免疫系の衰え:感染症やがんリスクの増加

これらは40〜50代から静かに進行する。だからこそ、早期から対策を始めることが重要になる。

健康寿命を支える4つの柱と測定法

Attiaは、戦略を現実化するための「4つの柱」を提案する。ここでは、それぞれの意味・重要性・測定方法を中心にまとめたい。

運動(Exercise)

VO₂ MAXとは?

VO₂ MAX(最大酸素摂取量)とは、運動中に体が取り込める酸素の最大量を示す指標の一つ。数値が高いほど、持久力や心肺機能が優れており、寿命との相関が高いことが研究で示されている。

  • 測定法
    • スポーツジムや医療機関での負荷試験
    • Apple WatchGarminなどのウェアラブルデバイスによる推定値

Attiaは、VO₂ MAXを高めるためにZone 2トレーニング(やや息が弾むが会話可能な強度の有酸素運動)と、週1〜2回の高強度インターバルトレーニング(HIIT)を推奨している。個人的には、ブラジリアン柔術のスパーリングをHIITの代わりに行なっている。

睡眠(Sleep)

ノンレム睡眠とは?

睡眠は大きく「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」に分かれる。

  • ノンレム睡眠:深い眠りで脳と身体を修復する時間。特に前半の睡眠で多く現れる。成長ホルモン分泌や記憶の固定に重要。
  • レム睡眠:夢を見ることが多く、感情や記憶の整理に関与。

ノンレム睡眠の質が低下すると、免疫、代謝、認知機能すべてに悪影響が出る。

  • 測定法
    • OURA RING(指輪型デバイス)
    • Apple Watchの睡眠アプリ
    • Fitbitなどのトラッカー

Attiaのお勧めもあり、私は、OURA RINGを使用中(2023年11月〜)。就寝前の光・カフェイン・食事のタイミングを調整し、深いノンレム睡眠を増やすことができるとのことだ。特に、サウナを活用すると、ノンレム睡眠が増えるらしい。

栄養(Nutrition)

血糖値測定

血糖値の急上昇は、インスリン抵抗性や糖尿病だけでなく、動脈硬化や認知症のリスクとも関係する。
食後血糖値を把握すると、自分の身体がどの食品・食べ方に敏感かがわかる。

  • 測定法

私は、Dexcomは使ったことがないのですが、Attiaは、リブレよりも勧めているらしく、どこかのタイミングで使ってみたい。上記の装置を使って、血糖変動を測定。それに沿って、減らす食事(高タンパク質、低精製炭水化物、食物繊維の活用)を提案する。最低90日間装着すると、習慣化が進むとのことだ。

感情とストレス管理(Emotional Health)

慢性的なストレスは交感神経優位を長引かせ、炎症や免疫低下を引き起こす。マインドフルネス瞑想や呼吸法、社会的つながりの維持は、健康寿命の重要な支えとなる。そして、ボディワークやエネルギーワークを受けることも一つの手助けとなる。

まとめ──フレームワークで未来を設計する

Attiaの健康論は、単なる「健康法リスト」ではなく、目的(戦略)から逆算するプロジェクトマネジメント

“Don’t just live longer, live better.”
「ただ長く生きるのではなく、より良く生きよ。」

  1. 戦略(生きたい未来像)を明確にする
  2. 戦術(運動・睡眠・栄養・感情管理)を数値で管理する
  3. 測定→改善→再測定のサイクルを回す

これが、未来の自分への最高の投資となる。

今後、健康長寿の延ばし方について、いろいろな角度から語っていく予定だ。

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