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【P#96】後発医薬品の供給不安〜医薬品の流通の仕組み、医薬品卸、薬価制度の視点から

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

2024年10月9日(水)、ZOOMにて対外セミナーを実施。題名は「製薬業界から見た「薬と健康」について語ろう!」で、以下の内容のセミナーを行なった。

医薬品の流通の仕組み

製薬業界にいた時、医薬品がどのように製薬会社から医薬品卸を経由して医療機関・薬局に届くのか?調べる機会があり、その流通の仕組みを通じて、医薬品の様々な課題を知ることができた。

なぜ、後発品(ジェネリック)の供給不安があるのか?品質は大丈夫なのか?財政逼迫は医薬品にどのような影響を与えているのか?等。

そこで、医薬品の流通の仕組み、医薬品卸の役割を伝えた上で、後発品の問題点について語った。

医薬品の薬価制度

医療用医薬品の市場規模は、9〜10兆円規模で、その内訳は、先発医薬品:6.1兆円、長期収載医薬品:1.8兆円、後発医薬品:1.6兆円、その他:0.6兆円になっている。

医療用医薬品は、薬価基準(省略して「薬価」)と呼ばれる公定価格が国によって定められている。公定価格が定められているのは、
1)医薬品が生活インフラになっている
2)医薬品が社会保険や税金などの公的財源で賄われている
からだ。

このため、医療用医薬品の薬価の決定は、政府(厚生労働省)の関与の下で行われる。参考に、公定価格が定められているのは、電気、ガス、水道、交通機関、通信関連だ。

医薬品卸と医療機関〜MRとMS

製薬会社から生産、供給される医薬品は、13,000品目。医療機関(全国の病院・診療所、薬局等)は、240,000軒に及ぶため、仲介業者として、医薬品卸が一定の役割を果たしている。

医薬品卸を経由して医薬品は、医療機関に届けられるが、国が問題にしているのは、医薬品卸から医療機関への納入価格と、保険者から支払われる公定価格の差(薬価差)だ。医薬品卸は、注文と代金の回収に終始することを余儀なくされ、製薬会社と医療機関の間で価格が決まり、医薬品卸の赤字は、製薬会社により補填された(値引補償制度と呼ぶ)。

事実、1989年の秋、旧厚生省の保険局長が国会で「薬価差益は、薬代の25%、推計で約1兆3248億円にのぼる」と報告したそうだ。1992年に医療機関と製薬会社との間の価格交渉を禁止。

製薬企業の営業(MR(medical representative))は情報提供、価格交渉は医薬品卸の営業(MS(medical specialists))が行うという役割分担に変更された。

医薬品卸の役割

医薬品卸の役割は、医薬品を医療機関に届ける役割がある。しかも、輸送途中の温度管理、品質を保つ、自然災害、パンデミックの中でも配送が必要。更に、医薬品の販売促進、価格交渉、回収管理、医療機関の経営支援、情報提供、医薬品の欠品や出荷調整時の需給調整、代替品の確保、提供を含め、総合商社的な役割を担う。

1990年代以前には、医薬品卸業界には、350社以上の地域卸の企業が存在。他社との差別化が難しく、値引き交渉に終始、1990年代から業界再編へ。現在、大手4社のシェアが90%を占めるまで統合されている。

医薬品の薬価の見直し

かつて、医薬品の薬価は、2年に一度見直しが行われていた。前年の医薬品卸から医療機関へ納入した価格(市場実勢価格とも呼ぶ)に基づいて決まる。

2016年に、一部の医薬品の薬価と実勢価格の大幅な乖離があったので、毎年薬価改定が行われるようになった。きっかけは分子標的薬のオブジーボ。何と、市場が拡大したオブジーボ(100mg)の薬価は、73万円から17万円へ強制的に見直された。

後発医薬品の供給問題

2016年前後で、抜本改革前の2.4%から改革後、5.0%と2倍も加速。後発品が煽りを受ける形になり、どんどん価格が低下。後発品メーカーの採算が合わなくなり、品質も問題になる。

2021年2月9日、後発品メーカー(小林化工)に、過去最長の116日間の業務停止命令が下る。抗真菌剤イトラコナゾールの製造過程で、睡眠導入薬が混入、200名の患者に健康被害を生じ、1名が死亡につながる。製造過程での原料の継ぎ足しの際に、本来2名で行う原料継ぎ足しを1名で行う品質手順書(GMP)違反が原因だった。

2021年3月3日、大手後発品メーカーの日医工に対して、32日間の業務停止命令が下る。審査当局のPMDAと富山県が日医工の富山第一工場に無通告立ち入り調査を実施。GMPで定められていない資料、メモ書きなどの不審な記録が見つかり、手順書で認められない製造工程が発覚した。

これは、氷山の一角で、上記のように数10程度の報告が出ており、2021年8月には、後発品4000品目にも及び、入手できなくなっている。後発品の薬機法違反は、品質の問題、原薬の供給の問題と合わせ、一番問題になっているのは、製造原価率が高いということだ。

後発品の過当競争により、価格が低下し、物価高騰、円安の影響により、後発品の赤字品目が続出している。安定供給に必要な後発品696品目(94社)が不採算へとなっており、実際、製造原価が薬価の80%以上が3割を占める。

後発品は、いざという時に必要とされる医薬品が多数含まれており、その供給は必要不可欠。薬価制度を含め、抜本的な改革が行われないと、将来薬がなくなるリスクが非常に高いと言わざるを得ない。

このようなメッセージで終えた。

今回紹介した内容について詳しく知りたい方は、ぜひ、武藤正樹さんの「日本から新薬が消える日」をチェックいただけばと思う。

まとめ

今回は、製薬業界で問題になっている後発品の供給不安の問題について、流通の仕組み、医薬品卸、薬価制度を含め、ご紹介させていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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