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【N#129】食と健康の判断をしていく上で③〜人との繋がりを見ること〜物質と依存症との関係

はじめに

みなさん、こんにちは!
東京・渋谷でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。

いい食事、悪い食事って本当にあるの?

みなさん、食事や栄養といったら、何を思い浮かびますか?
「いい食事」と「悪い食事」がある!
糖質制限がいい、マクロビがいい、砂糖を抜いた方がいい、
断食した方が、腸にとっていい(ファスティング)等

栄養や科学に抜けているのは?〜人や物との絆(関係性)を考慮に入れていない

私は、基礎医学の世界で博士号を取得し、長年の製薬業界で医薬品の研究開発の現場にいたが、気になることがある。

今の科学は、
1)自分や他人とのつながりを完全に無視して、人間を独立した一個の存在として見る
2)人間を「心」と「物質」を分けて考え、物質(蛋白質、糖質、脂質、遺伝子)へ、どんどん細かく見ていくことで、全体像が見える
という前提で解明を進めていることだ。これは、いわば専門的になりすぎ、知識がマニアックになっていることへの弊害だと思う。

最も重要な、
「人や物とのつながりの中で、科学の知識をどう活用するのか?」
という視点が完全に抜けてしまっているのだ。

ヨハン・ハリさんの「麻薬と人間〜100年の物語」を参考に、興味深い事例を紹介したい。

ベトナム戦争中、米兵の20%がヘロイン依存症〜帰還後どうなったのか?

ベトナム戦争(1954年〜1975年)の時、米兵との間に、ヘロイン中毒が話題となった。

ヘロインとは、1898年、製薬会社のバイエルが開発した、痛み止めのオピオイド系の薬物。痛み止めのモルヒネから合成的に作られる。参考に、モルヒネとは、植物のケシの実から採取される果汁を乾燥させた「アヘン」から精製された薬物成分のこと。モルヒネは、癌の疼痛に使われており、処方箋医薬品に指定されている。

歴史的には、アヘン戦争が有名だ。イギリスは、インドで製造した「アヘン」を、清に輸出して巨額の利益を得ていた。アヘン販売を禁止していた清は、アヘンの蔓延に対してその全面禁輸を断行。イギリス商人の保有するアヘンを没収・処分したため、イギリスが反発。イギリスと清との間に2年間の戦争となり、結果的にイギリスが勝利。香港の割譲が決まった。

ヘロインは、モルヒネから合成されるが、医薬品指定から外れるのは、1920年代。

ベトナム戦争で、米国の中央情報局(CIA)がベトナムのメオ族を支援していた。メオ族は、ベトナムの共産圏に対抗するために雇われた人たちで、米国とフランスがサポート。メオ族は、昔からアヘン栽培で収益を上げており、そこに目をつけた。このアヘンから高純度のヘロインが合成され、南ベトナム中流の米国兵に渡ったのだ。

当時、米兵の20%ヘロイン中毒(米国全土のロイン依存症患者の数以上)にも及んだと言われた。大麻は、厳しい規制と監視(麻薬検査犬)や、戦場という極限の環境に置かれたいたが、ヘロインの使用は麻薬検査犬の監視下をくくり抜けることができることが影響したとも言われている。

しかしながら、米兵が帰還した後に、ヘロイン依存症の割合がどうなっていたのか?意外と知られていない。実に、ヘロイン依存症の95%は、ヘロインを完全にやめ、残りの5%が依存症を抱えるという結果になった。しかも、5%は、小児期に問題のある家庭にいたか、ベトナムに行く前から既に依存症を抱えていたか、のどちらかだったという。

麻薬の依存症は?〜孤立した条件で起こる

ラットの実験で、一度ヘロインを摂取したら、脳がハイジャックされ、ずっと依存すると・・・1980年代、アメリカの広告で盛んに宣伝されていた。

この実験に対して、Bruce Alexander博士は疑問を持つ。実験条件を調べたところ、この実験は何もない、孤立した一匹のラットがいた条件で行われていたそうだ。

そこで、Alexander博士は、ラットを2つのグループに分けた(ラットパーク(Rat Park)実験と呼ばれる)。
1)同じように孤立した条件(一匹)を飼育
2)楽園になるような条件(木の壁に囲まれた部屋、回し車、色のついたボール、贅沢な食事、異性が同居)を飼育

これに加え、2つのボトルを用意。一つは水、もう一つは、モルヒネ(ヘロインと同じような作用を持つ)。毎日、ボトルの重さを測定していったが、孤立した条件では、25mgのモルヒネを使ったのに対して、楽園の条件では、モルヒネがほとんど使われていなかった(5mg以下)という衝撃的な結果が出る。

安全で、幸福な環境、人々との絆がうまくいっており、やりたいと思うことをやっている場合、依存症に対して抵抗力があることが明らかとなった。人間は、孤立している、無力で、目的を失った状態になると、依存症を引き起こしやすいのだ。

これは、過食症、拒食症も同じ原理であることが明らかになりつつあり、物質(薬物、食物)が依存症を起こすのではなく、環境が大きいということだ。

現代は、食事(栄養、麻薬、口に入るもの)を含め
「一人一人には、健康に良いものがあり、解剖学や生理学によって細かく見ていけば、自分で答えが見つかるものだ!」
と現代科学では説明する。

しかし、人間は、環境(人間関係、社会的地位、住んでいる場所、外傷、受けた教育)によって大きく影響を受けるのだ。

実際、人間は、飲み会を通じて、親睦を深め合うことを行うが、動物界でこれを行うのは、人間のみ。チンバンジーやゴリラは、自分の食べ物は基本、自分で確保。他人に与えることはしない。如何に、社会性が高いかよくわかる。

まとめ

今回は「麻薬の依存症」を中心に、物質が依存症を引き起こすのではなく、環境によって引き起こされるという事実について、ご紹介させていただいた。少しでも、この投稿が役立てれば幸いです。

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