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【B#55】意識と無意識とは?(1)〜意識は無意識の決定を記憶する装置?+物語を語る意識について

ゴールデンウィーク中に出会った本の中で最も面白かったのが「無意識の整え方」という前野隆司先生(以下前野先生)を中心に4名(合気道家、僧侶、パーソナルコーチ、医師)の専門家と
「無意識についてどのように整えたらいいのか?」
について対談した一冊だ。
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本書を紹介する前に

「無意識について科学的に何がわかっており、何がわかっていないのか?」

について紹介したい。

ロボット工学がご専門の前野先生によって唱えられた「受動意識仮説」は非常に興味深く、前野先生による著作「脳はなぜ「心」を作ったのか〜「私の謎を解く受動意識仮説」に詳しく述べられている。

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「意識は無意識の決定を記憶する装置にすぎない」というのが「受動意識仮説」。

ベースとなったのは、サンフランシスコ大学医学部のリベット教授による1983年に行われた実験。

実験とは、人間が指を動かそうするとき、脳にある「動かそう」と意図する働き(意識)と筋肉を動かせと脳が指令する随意運動野(無意識)の働き、そして実際に指が動くタイミングを計測するもの。
驚くべきことに、筋肉を動かすための運動神経の指令(無意識)は、心が「動かそう」と意図する脳の活動(意識)よりも0.35秒も先だということがわかったという。
本来は、意識が最初に「動かそう」とし、それに従って運動の指令(無意識)が出るというのが、筋。
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だが正反対、
つまり、
実験結果から
無意識が全てを決めていて、意識は後からついてくる
という考えに至る。
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ここでの無意識について、前野先生は以下の例を挙げている。
「立食パーティでワイングラスを片手に談笑する私たちは、コップを落とさないような力を「無意識」に手の筋肉を加え、転ばないような力を「無意識」に足の筋肉に加えている。又、ざわめきの中から話者の話を「無意識」に抽出してから聞き、相手の顔のどこに目があるのかを「無意識」に判断し、自分の目の内直筋を「無意識」に動かして視点を相手の目に定める」
実は、無意識は様々な共同作業によって成り立ってことが、一つの出来事からお判りいただけたかと思う。
では
「意識は何のためにあるのか?」
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エピソード記憶をする為に存在するのではないかと前野先生は考えた。
エピソード記憶を語る前に、
「記憶とは何か?」
から紹介したい。
記憶とは「覚えること」。
心理学的な用語でいうと、「記憶」には宣言的記憶と非宣言的記憶と分けることができる。
文章のような記号やイメージによって表せられる(宣言できる)記憶と表せない記憶という意味で2つに分けることができて、宣言的記憶には、エピソード記憶と意味記憶と分けることが可能だ。
エピソード記憶は、自分がいつ何をしたのか、エピソードという形で順番に覚えていく記憶。
意味記憶は、辞書で、モノやコトの意味の記憶。
非宣言的記憶には、身体的な記憶、例えば自転車に乗れた、スキーが滑れるようになったなどの記憶。
という意味になる。
そして「学習」は記憶している内容をより良いものに更新していく働きと位置付けられる。
もし、無意識が先で、意識がその後に続くのであるならば、
「意識は何のためにあるのか?」
実は、「意識」=「私」が、無意識によって様々な処理をしたものを、私という主人公でエピソード(又は一つの物語)として記憶するために、あるのではないかと。
そのように考えた上で、
「私たちの行動を本当に決めているのは、脳の無意識であり、意識はその決定を0.35秒後に受け取って「自分で決めた」と記憶しているだけではないか」
という仮説にたどりつた。
意識と無意識という漠然とした言葉がこのようにシンプルに科学的に説明されているため、非常に興味深い。
本題から脱線してしまうが「物語を語ることで意識が発達していった」についてユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」には面白い考えが紹介されている。
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ハラリ曰く、人間(ホモ・サピエンス)は、認知革命によって集団として行動できるようになったが、そのきっかけとなったのが虚構=Fiction(架空のこと)を語る能力(物語を語る能力)だったという。その結果として、神話を生み、その神話(後に、宗教、法律制度、貨幣、国家へ発展)に基づいて大勢で協力できるようになったというのだ。
さて、このように無意識が大事ということで、
「無意識をどのように整えたらいいのか?」
という観点で対談したのが「無意識の整え方」だ。
合気道、仏教、自然、日本文化や医療からみた無意識の考え方が紹介されており、実践的な内容になっている。
「型」と身体というのは意識から無意識へ入る行為であるということ、森を通じて無意識にアクセスする、日本の古典芸能、哲学、民俗学というのは医療と関係が深く、無意識とも関係があるという考え、等幅広く、ヒント満載。
スペースの関係上、次回、本書について紹介したい。
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