【N#172】人類の先祖が食べてきたもの〜何を食べたらいいのか?
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はじめに
東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。
人間に必要な5大栄養素は、炭水化物(糖質)、脂質、蛋白質、ビタミン、ミネラル。これらをバランスよく食べると教わる。知識として知られているのは、その通りなのだが・・・
「何を食べたらいいのか?わからない人が多いのではないでしょうか?」
なぜ、このような悩みが生まれるかというと、人間はなんでも食べることができる「雑食動物」として進化してきたからだ。
ハーマン・ポンツァー著「運動しても痩せないのはなぜか」には、人類学の視点から栄養学について語っており、学ぶことが多い。今回は、この本を基に、過去に人類は何を食べてきたのか?まとめていきたい。そして、後半は、何を食べたらいいのか?見失った現代人について取り上げる。
人類の先祖が食べてきたものは?〜植物性食品
人類の先祖(ホミニンと呼ぶ)が、チンパンジー、ボノボから分岐したのが700万年前。その頃、類人猿と同じように植物性食物を主食とし、化石から植物食に適した歯(大臼歯の先端が丸みを帯びている)を持っていた。更に、腕が長く、手指が少し曲がっており、木を登り、果実や他の植物性食物を得ていたらしい。
チンパンジー、ボノボが行っているように、時々、サルを含めた小動物の狩り、昆虫なども採集していた可能性もあるが、中心は植物性食物だった。
400万年前から200万年前の人類(アウストラロピテクス属)野生の塊茎を掘り出して、主食として食べるようになる。今の人類は、ジャガイモを含めたでんぷんを含む野菜を好んで食べるが、この傾向は、現代人(ホモ・サピエンス)登場以前から見られたとのことだ。
狩猟採集民の登場〜植物性食品+肉食
約250年前に、狩猟採集が開始。人類の狩猟採集が盛んになるにつれて、食事に占める肉の割合が高まる。動物の骨に石器による切断の跡が見られるようになるのが、250万年前。180万年前に、ホモ・エレクトスは、レイヨウ等の動物を食べていた。
40万年前にはホモ・ハイデルベルゲンシスが日常的に野生の馬や大型動物の狩りをしている。10万年前には、ネアンデルタール人は、トナカイやマンモスを食べていたらしい。
植物性食物から動物性食物へ変化するということは、食事の内容が変化するということ。一口に多くのカロリー特に脂肪(飽和脂肪酸)が含まれ、より少ない量で、カロリーを確保できるようになったのだ。植物性食物に必要な大臼歯や、強い消化管も不要となる。他の仕事に使えるように変化。
何と、菜食主義者の大型類人猿と同じ身体で比較したときに、消化管の大きさは40%、肝臓は10%低いのだ。この結果、240キロカロリー分の節約が生まれ、脳に使えるようになったのだ。
興味深いことに、狩猟採集していたからって、狩りだけをしていたわけではないらしい。ネアンデルタール人の歯を分析したところ、穀粒や植物性食物のでんぷんが見つかっており、大型動物を狩るネアンデルタール人も穀物や炭水化物が豊富なでんぷんを食べていたことも明らかになっている。
現代の狩猟採集民〜炭水化物が6割
現代の狩猟採集民でよく研究されているハッザ族は、食事に占める炭水化物の割合が高い。何と、ハッザ族だけではなく、農作も行う狩猟採集民(チマネ族、シュアール族)も、1日のカロリー消費量の65%は、炭水化物。しかも、いずれも脂肪の摂取量は少なく、1日の消費カロリーに占める割合は20%に満たない。
参考に、ハッザ族は、ハチミツ、塊茎、塊茎のようなでんぷんを含む野菜が主食。炭水化物は悪者にされがちだが、心臓には全く問題がなく、心血管代謝疾患が見られないのだ。しかも、高齢になっても問題ない。
興味深いのは、ハッザ族の食事は、自分たちでとりに行く必要があり、様々な食事が身の回りにあるわけではない。調理すると、少し塩を使う程度で味がない。食物は生か、焼くか煮るかで、提供される。加工食品もないのだ。
人間は「雑食動物」だからこそ抱える矛盾
現代は、ボーダーレスの世の中になり、情報化社会を迎え、様々な加工食品が氾濫している。どれが身体にいいのか?選択肢が多いため、判断するのが難しい。せっかく、人類学や過去の叡智(食文化)があるにもかかわらずだ。今回、人類学からわかっていることを取り上げたのは、少しでもヒントになると思ったからだ。
マイケル・ポーランの「雑食動物のジレンマ(Omnivore’s Dilemma)」は、生産者からスーパーマーケットへ食材がどのように届けられているのか?わかりやすく説明しており、興味深い本になっている。そこで、強調しているのは、人類は「雑食動物」のため、何を食べたらいいのか?自分自身を失っている現実だ。
そもそも人類は、自然がもたらしたありとあらゆる生物を食べることのできる「雑食動物」だ。色々な種類の食事をとることが大切なはずだが・・・。牧草や穀物を食べる牛に比べ、人類は複雑。上述の人類学を見ると、食に関して、外部にアドバイスを求めることなく、各集団の文化内でその問題を解決してきたと言っていい。
今、「何を食べたらいいのか?」について問いを発したら、誰が答えるのでしょう?ジャーナリスト?栄養学者?医師?それとも、FDAが作成したフード・ピラミッドか?他の動物は自分で決められるのに、人間はどうなのか?
実は、現代の食事は、科学者や食品業界、政府にも献立を委ねるようになった。食事の指針は頻繁に変更になり、栄養ガイドラインも理解しにくく複雑。加工食品が氾濫し、昔の人たちが食べていたものが入手しにくくなっている。
自分で答えを出すことの大切さ
私が調べた限りでは、食事については、健康な人が、健康を維持するのに必要な食事と、疾患や健康でない人が必要な食事は分ける必要があると考えている。なぜならば、多くの栄養学の研究は後者に力点が置かれているからだ。
健康な人が何を食べたらいいのか?エビデンスがほとんどないと言ってよく、体質が一人一人違うので、かえって病気の栄養学が役立たないのだ。最終的に、一人一人、試行錯誤で、答えを出していく必要があるのだ。だからこそ、
まとめ
今回は、人類学から見た食事について、過去に人類は何を食べてきたのか?を中心にまとめた。そして、後半は、何を食べたらいいのか?判断軸を失った見失った現代人について取り上げた。最後に、健康な人の食事は、体質もあり、自分で答えを出していくことが大事だということも紹介した。
少しでも、この投稿が役立つことを願っています!