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【B#74】「人生の扉を開く「万能の鍵」」〜百年前と今、転換期と大いなる叡智

2017年11月2日(木)、新宿三丁目にてPrimary Club(プライマリークラブ)主催のイベント「「出逢いと気づき」〜人生は何によって変わるか〜」に参加してきた。演者はサンマーク出版の第三編集部・編集長の斎藤りゅう哉さん(以下りゅう哉さん)(詳細は「「出逢いと気づき」~人生は何によって変わるか~を拝聴して」参照)。

その時にラルフ・ウォルドー・トライン(Ralph Waldo Trine(1866年〜1958年)、以下トライン)の「人生の扉を開く「万能の鍵」」という本が取り上げられていた。

りゅう哉さんが昔、出会い、ご自身のバイブルにしている一冊。縁のある方のバイブルはチェックするようにしているのと、以前より紹介させていただいている「大いなる叡智」(「「宇宙にゆだねて人生を楽しもう」〜コラボイベントを開催して」参照)の考えを知る上でも興味を持ち、本書を手にとってみた。

面白いと思ったのは、百年前に書かれていた本にもかかわらず、今の時代に何が必要なのか?について書かれていたこと。
トラインが生きていた時代は、19世紀。米国では、ニューソート(The New Thought Movement、新思考)というキリスト教の一つ運動が発生する。Wikipediaによると、現生利益の追求を戒め、「神の教え」=聖書に忠実に従い、禁欲を徹底するキリスト教プロテスタント系カルヴァン主義への反発から生まれたという。
考えてみれば、欧米や日本を含めた先進国は、IT企業や人工知能の台頭(「人工知能と未来(1)人間と人工知能のそれぞれの強みをどう理解するか?」参照)。貧富の差が拡大(「資本主義と経済格差(1)〜富裕層の台頭と所得格差の拡大はなぜ起きているのか?」参照)、そして人生も100歳を前提に生きる必要があること(「LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略」参照)、等。

転換期を迎えた今、何を信じていいのか?どのようにして地に足についた上で、生きていったらいいのか?
19世紀もキリスト教に変わる新たな生き方を模索した人がどのように考え、どうしたらいいのか?本質的に書かれている。
さて、ニューソートは、聖書の内容を従来とは違った立場から解釈。
「人間の意識は宇宙と繋がっている」

「そもそも「原罪」は存在せず、あらゆる人々がキリストの力を内包している」
のように考え、根拠を聖書に求めるようになる。

源流にあるのは、
「病気の本質は患者が持つ誤った信念=マインドにあり、マインドを直せば病気が治る」
という思想。
「ポジティブ・シンキング」や潜在意識を通じてマインドに働きかけるジョセフ・マーフィーの成功法則等もニューソートの運動の一環として捉えることができ、一種の成功哲学とも呼ばれている。
実際、日本にも明治後期から昭和初期にニューソートの関連図書が翻訳され、中村天風さんや稲盛和夫さんの思想に影響を与えることになった(両人の思想については「「宇宙にゆだねて人生を楽しむ」の関連本(2)〜「生き方」と「祈り」について」参照)。

ニューソートの時代の流れに登場したのが、トライン。
Wikipediaによると、ニューソートに関わった人たち(ラルフ・ワルド・エマーソン等)から影響を受け、著述と講演を通じて活動。1879年に出版された「人生の扉を開く「万能の鍵」(In Tune with the Infinite)」は20カ国語に翻訳、100万部販売されたという。そして、エピソードとして、ビクトリア女王やヘンリー・フォードの愛読書ともいわれ、役員たちにトラインの本を配ったともいわれている。

本書では、
「大いなる叡智」

「無限の生命のスピリット」=「神」
と表現。
すべての生命は一つであり、皆一つの共通の宇宙の生命に繋がっているという前提から、以下のような自己実現のことを述べている。
「あなたの身体の力、精神力、ビジネスでの成功、付き合う仲間に与える喜び、それは皆、あなたの思考の性格に左右される。あなたがどんな気分でいるかによって、あなたのスピリットはその気分に応じた見えない実体を受け取る。これはスピリチュアルな法則であり、化学の法則である。化学は見える要素にのみ限られているわけではない。肉眼では見えない要素の方が、見えるものの千倍もたくさんあるのだ」
「断固として自分が望むものだけを期待するようにしなさい。そうすれば望むものだけが引き寄せられるだろう」
本書の興味深いところは、キリスト教徒向けに書かれていることから宗教と「大いなる叡智」との関係について書かれているところだ。

例えば、
イエスの
「まず神の王国と義を求めよ、そうすれば後のことは自然にやってくる」
という言葉を紹介。以下のように解説している。
「神の王国を見つけるとは、私たちの生命(人生)には聖なる生命が源として宿っており、それこそが本質だと認識することだ。人の心と行動を聖なる意志と目的に調和させることだ。人々を低い自己意識から救い出し、高い自己に気づかせることであり、高い自己とは永遠の神、「父」と一つであるとイエスは教えている」
そして、宗教というのも、同じ源から発生していることを仏教を事例に以下のように紹介している。

「ブッダとなったゴータマの生涯と教えにも同じ偉大な真実が貫かれている。人々は縛られている、何故ならば、「我」という考えを捨てられないからだ、とゴータマはいった。個がバラバラであるという考え方を捨てて、自分と「無限」とが一つであると悟ること、それがゴータマの教え全体に息づいているスピリットである」
「生きる知恵や人生とは何か?」
1世紀前に書かれたとは思えないほど具体的に書いてあり、
「思考の力で、心は求めた現実を実現する」
ということがよく理解できる1冊になっている。
是非とも、転換期を迎え、人生について振り返り、新たな考え方を知りたい方には勧めたい一冊だ。
本書を紹介いただいたりゅう哉さんには感謝したい。

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