【P#63】活性酸素と新型コロナの重症化との関係〜なぜ、グルタチオンやNACが重症化の予防に役立つ可能性があるのか?
Table of Contents
はじめに
新型コロナの感染で一番問題になるのが、重症化。
ワクチンを接種する理由は、重症化(入院、死亡を含む)予防にある。
過去にビタミンD3、亜鉛を生活に取り入れることで重症化予防に役立つことをブログで紹介してきた。
今回は、視点を変えて、新型コロナと「活性酸素」との関係について取り上げたい。
それを理解するためには、
「新型コロナに感染すると何が起こるのか?」
「活性酸素が多くなると、新型コロナの重症化を招くのだが、それはなぜか?」
「活性酸素が多い状態=酸化ストレスの負荷がかかった状態で、どのように対処していくのか?」
を知る必要がある。
参考にしたのは、Dr SeheultのMedcramの動画。
英語のわかる方は、ぜひともチェックいただきたいので共有します。
新型コロナの重症化と活性酸素〜なぜ活性酸素は重症化を引き起こすのか?
今回は、
「新型コロナに感染すると、ACE2の働きが弱まる。その結果、AT-II(Angiotensin-I、アンジオテンシン-II)の血中濃度が高まり「活性酸素」が多く作られる。通常、活性酸素は身体内の酵素で対応できるが、負荷がかかりすぎると、活性酸素が身体へ悪影響を及ぼし、新型コロナの重症化へとつながる」
と
「酸化ストレスに対処するために、グルタチオンの働きを高めるサプリメント(NACを含む)が注目されている」
の2つについて取り上げたい。
そのためには、
1)レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)の仕組みを知ること
2)ACE2について知り、生体内でどのような働きをしているのか知ること
3)活性酸素とは何かを知り、対処法を知ること
の3つのことを説明したい。
血圧を上げる仕組み〜レニン・アンジオテンシン・アルドステロンの仕組みとACEとの関係
新型コロナの感染は、人間の細胞の表面にある蛋白質の一つACE2(ACEは、Angiotensin Converting Enzyme(アンジオテンシン変換酵素)の略)に結合することで起こる。
新型コロナを理解していくための重要なACE2。
ACE2は、血圧調節に関わる「レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)」に深く関わっている。
基本、人間の身体はRAA系を使って血圧を調整している。
RAAには、肝臓、腎臓、肺、副腎といった臓器が役割分担し、(ホルモンや酵素を通じて)コミュニケーションを取りながら血圧の調整を行なっている。
最初のステップは、血圧を上げる場合は、まず、肝臓から「アンジオテンシノーゲン」と呼ばれる蛋白質が作られる。
アンジオテンシノーゲンは、肝臓から血液に分泌され、血流に乗って腎臓へ。
腎臓でレニンにより分解され、AT-I(Angiotensin-I、アンジオテンシン-I)になる。
AT-Iは更に、肺で作られるACE(Angiotensin Converting Enzyme、アンジオテンシン変換酵素)により一部分解され、AT-IIへ。
AT-IIは、ATR-1(Angiotensin II Receptor -1、アンジオテンシン受容体1)と結合して、血管収縮の作用(それ以外にも肺浮腫、急性呼吸窮迫症候群等)を発揮すると同時に、副腎に働きかけ、アルドステロンの産生を促す。
アルドステロンは、ナトリウムの吸収を促進させ、血液の量を増加。
最終的に、体内の血圧を上昇させる。
参考に、降圧剤として、ACE阻害薬とARBが、治療薬として使われる。
1)ACE阻害薬はACEの活性を阻害(例、レニベース、タナトリル、テモカプリル等)
2)ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)は、ATR1を阻害することで、降圧作用(血圧を上昇するのを抑える)(例、ミカルディス、ディオバン、ブロプレス、ニューロタン等)
ACE2とAT-1,7〜抗炎症(活性酸素の産生を低下)、血管拡張(血圧の低下)
次に、
「RAA系とACE2とはどのような関係になるのか?」
について紹介したい。
AT-IIの濃度が低い時は、ACE2が働き、AT-IIが分解され、AT-1,7が作られる。
AT-IIは、血管の収縮や炎症作用に関わるのに対して、AT-1,7は、AT-IIとは違い、血管の拡張や、抗炎症作用といった拮抗(反対)の作用を持っている。
参考に、AT-IIの濃度が低い時は、ACE2が働き、AT-1,7が、濃度が高い時にATR-1にAT-IIが結合して、AT-IIの働きを示す。
ACE2は、肺(呼吸器系の2型肺胞細胞、肺胞単球細胞)、腸(腸上皮細胞)、内皮細胞、眼や腎臓(の上皮細胞)、マクロファージなど一部の免疫細胞、大脳皮質、脳幹などの神経系細胞などにも広く分布することがわかっている。
新型コロナのS蛋白質がACE2に結合することで、感染。
ACE2を分解してしまうため、必然的にAT-IIの濃度が高まってしまう。
冒頭で述べたように、
「新型コロナに感染すると、ACE2の働きが弱まる。その結果、AT-II(Angiotensin-I、アンジオテンシン-II)の血中濃度が高まり、活性酸素が多く作られる。これが身体にとって害となり重症化につながる」
の理由の一部を説明させていただいた。
次に
「新型コロナ感染によってAT-IIの濃度が上がると、なぜ活性酸素が多く作られるのか?」
説明したい。
活性酸素とは何か?どのように作られるのか?〜身体への影響について
人間は、炭水化物、脂質、蛋白質を材料に、エネルギーを得ている。
やや専門的になるが、それぞれの代謝系(解糖系、TCA回路)を通じて、炭水化物、脂質、蛋白質を分解し、電子が抜き出される。
電子がミトコンドリアの中にある電子伝達系の蛋白質を移動し、水素イオンの密度勾配ができて、生体に必要なエネルギーを得る。
電子自体は生体に害を与えるので、酸素と結合し、水に無毒化される。
ポイントは酸素と電子が結びついて水になること。
さて、酸素が水になるためには、4つの電子を取り入れる必要がある。
酸素が電子を1つ吸収すると、スーパーオキシド、2つ吸収すると、過酸化水素、3つ吸収すると、ヒドロキシラジカル、4つ吸収すると水に変化する。
そして、もう一つ、酸素を紫外線・放射線で当てると、一重項酸素ができる(今回これは取り上げない)。
通常、酸素は4つの電子を得て、水に変わって、無毒化を進めるが、なんと、酸素の!%は、電子を中途半端に受け取り、活性酸素になってしまう。
これが、身体に害を及ぼしてしまう。
活性酸素は、酸素そのものよりも活性の強い分子(種)のこと。
通常、身体内の酵素によって、無毒化を進めていくが、その働きが間に合わないと
「活性酸素が多くストレスがかかった状態」=「酸化ストレス」がかかった状態
になる。
参考に、4つを合わせて活性酸素種と呼ぶが、老化、心不全、虚血、糖尿病、高血圧などによって増えると報告されている。
活性酸素種は、食細胞も作ることができる。
病原体が侵入している組織に住みついている食細胞(マクロファージ、樹状細胞等)が殺菌性物質を出して、病原体を食べる(貪食(どんしょく)と呼ぶ)
この殺菌性物質の一つが活性酸素(スーパーオキシド)で、NADPHオキシダーゼという酵素を使って酸素から作られる。
新型コロナの重症化〜活性酸素(スーパーオキシド)との関係
ここで大事になるのは、スーパーオキシド。
「レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系」において、AT-IIは、スーパーオキシドを増やすという報告があり、一方で、AT-1,7は、逆にスーパーオキシドの量を減らす抗炎症作用や酸化ストレスの減少によって、血管の保護し、動脈硬化を予防する効果があると報告されている(下記の図参照)。
厄介なのは、新型コロナによる感染だ。
新型コロナは、ACE2に結合することで、AT-IIからAT-1,7への分解が抑えられる。
結果的にスーパーオキシドの産生は増えてしまう。
更に、新型コロナによって、食細胞(好中球)が増えることが報告されている。
食細胞は、NADPHオキシダーゼの酵素を活性化させることで、酸素からスーパーオキシドが作られてしまうことも明らかになっている。
このように
「新型コロナ感染によってAT-IIの濃度が上がると、スーパーオキシドが作られるが、ACE2により作られるAT-1,7は、スーパーオキシドの量が減る」
ことがわかった。
スーパーオキシドを無毒化する体内の酵素の働きが弱まると、酸化ストレスの負荷がかかり、血管内の内皮細胞の働きが弱まり、血液凝固系の因子が働き、血流を妨げる血栓が作られるリスクが高まる報告がある。
糖尿病を含めた心血管疾患を抱えている新型コロナ陽性患者は、重症化されやすいことは、流行当初から知られているが、心血管疾患を抱えた人たちは、活性酸素が増えるので、重症化を予防していくためには、活性酸素の無毒化が鍵になると考えられる。
活性酸素への対処の方法として〜SOD、カタラーゼ、グルタチオン
活性酸素を無毒化するために、身体に備わっている酵素はSOD(スーパーオキシドデスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンの3種類ある。
4種類の活性酸素のうち、これらの酵素が対処できるものはスーパーオキシドと過酸化水素のみで、それ以外のヒドロキシラジカルと一重項酸素は、外部から食事、サプリメントから取り入れる必要がある。
新型コロナで問題になるのが「スーパーオキシド」の解毒だ。
スーパーオキシドを酸素か過酸化水素にする酵素がSODだ。
興味深いことに、亜鉛、銅、マンガンの3つの微量ミネラル(必須ミネラルとも呼ばれる)がないと、酵素が働かないことだ。
銅・亜鉛型のSODは、赤血球と細胞質に存在し、マンガン型のSODはミトコンドリアに存在する。
参考に、SODは、肝臓>副腎>胃>膵臓>血液>肺>脳>腸>卵巣>胸腺の順で活性酸素が発生しやすい順番で分布している。
亜鉛、銅を含めミネラルが適切に補充されていないと、SODは働かない!
SODにより過酸化水素に変換された後、登場するのがカタラーゼとグルタチオンだ。
カタラーゼは、鉄の助けを借りて、過酸化水素を酸素、もしくは水へと無毒化してくれる酵素だ。
身体内で水に次いでに多いのがグルタチオン。
グルタチオンは、過酸化水素を水にしてくれる。
酵素としては、グルタチオンペルオキシダーゼが働き、ミネラルとしてセレンの助けを借りる。
グルタチオンは、システィン、グリシン、グルタミン酸の3つのアミノ酸が結合したトリペプチド(トリ=3つのアミノ酸が結合(複数のアミノ酸が結合することをペプチドと呼ぶ)したもの)だ。
グルタチオンに含まれるシスティンに含まれる硫黄がさまざまな有害ミネラルに結合して、身体の排泄を促すが、活性酸素の無毒化にも働く。
グルタチオンが十分に作らなければ、活性酸素の処理が間に合わなくなる。
例えば、脳・心疾患(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血,心筋梗塞等)の患者や高齢者は、身体内のグルタチオンの濃度が低くなることが知られている。
そして、グルタチオンの働きが低下すると、酸化ストレスが大幅に上がり、免疫の働きも低下することから、新型コロナの重症化につながるとも。
このため、重症化予防にグルタチオンが注目されている。
グルタチオン、NACを取り入れる意味〜活性酸素を除去していく上で
グルタチオンを外部から取り入れる際、
1)NAC(Nアセチルシスティン、グルタチオンの材料の一つシステインを代謝しやすいように合成したもの)
2)吸収率を高めたリポソーマル型グルタチオン(舌下で摂取)
3)ビタミンC+グルタチオンの注射(週1回)
4)タチオン錠剤
の4つの方法がある。
個人的には、リポソーマル型グルタチオンとビタミンC+グルタチオン注射の併用を行うようになってから、疲労感が取れる印象だ。
何しろ、私自身、栄養療法を行なっていて、グルタチオンの解毒能力が低いので、サプリメントだけでは間に合っていない状況なので。
参考に、ビタミンC+グルタチオンの注射のメリットは、ビタミンCにより、スーパーオキシドを過酸化水素にした後、グルタチオンにより水に解毒することが期待されるのと同時に、グルタチオンを再利用する上で、ビタミンCが役立つ。このように相乗効果が期待できる。
iherbで入手できるのは、NAC(Nアセチルシスティン)(残念なことに、入手が困難)。
グルタチオンを構成する3つのアミノ酸のうちの一つシスティンの誘導体(Nアセチルシスティン)で体内で代謝されシスティンとなり、グルタチオンを作る上での材料となる。
NACは、グルタチオンの働きを高める(グルタチオンの濃度を高める)ことや、グルタチオンの再利用促すことで、活性酸素の無毒化、抗炎症効果を発揮、新型コロナに対する重症化などにも効果があるとも言われている。
ビタミンD3、亜鉛と並んで、試してみる価値はあると思う。
まとめ
今回は、
「新型コロナに感染すると、ACE2の働きが弱まる。その結果、AT-II(Angiotensin-I、アンジオテンシン-II)の血中濃度が高まり「活性酸素」が多く作られる。通常、活性酸素は身体内の酵素で対応できるが、負荷がかかりすぎると、活性酸素が身体へ悪影響を及ぼし、新型コロナの重症化へとつながる」
と
「酸化ストレスに対処するために、グルタチオンの働きを高めるサプリメント(NACを含む)が注目されている」
の2つについて取り上げた。
少しでも参考になれば幸いです。