【N#209】風邪とは何か?症状と対処法を4つの視点から整理する
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はじめに
こんにちは、渋谷でロルフィング・セッションや脳科学に基づいた講座を提供している大塚英文です。
先週末から今週の初めにかけて(2025年8月15日〜19日)、39度近くの発熱と咳・鼻・喉の症状に悩まされた。10ヶ月ぶりの発熱に伴う風邪であり、頭も働かなくなる時期もあった。

今回も、OURA RINGを使って身体の変化を計測したところ、以下のようなデータの変動が見られた。
- 安静時心拍数:49(拍/分) → 61(拍/分)へ上昇
→ 安静時の心臓の拍動数。健康な状態では低いほど良好とされるが、上昇は身体がストレス状態にあることを示す。 - 心拍変動(HRV):27(ms) → 10(ms)に低下
→ 心拍の間隔のゆらぎを示す指標。数値が高いほど自律神経(特に副交感神経)が優位で回復力が高いことを意味する。低下はストレス負荷や疲労を示す。 - 呼吸速度:15.0(/分) → 17.0(/分)に上昇
→ 1分間の呼吸回数。上昇は体内で酸素需要が増え、感染や炎症による代謝亢進を反映する。
これらの変化からも分かるように、風邪によって身体は大きなストレスにさらされていたことが客観的に確認できた。
そこで、今回の体験をきっかけに「風邪とは何か?」について整理し直してみたい。もし、詳しく知りたい方がいらしたら、岸田直樹先生の「誰もが教えてくれなかった「風邪」の診かた(第2版):感染症診療12戦略」をチェックいただきたい。

風邪とは何か?
医学的に「風邪」とは、自然に治癒するウイルス性の上気道感染症を指す。
ここでいう「上気道」とは、鼻腔・咽頭・喉頭など、空気の通り道のうち肺より上にある部分を指す。典型的には「咳・鼻汁・喉の痛み」が同時期に現れるのが特徴の一つ。原因となるウイルスは200種類以上存在するとされる。そのため、臨床現場で原因ウイルスを同定することはほとんど不可能。
ウイルス感染と細菌感染の違い
風邪を理解するには、ウイルス感染と細菌感染の違いを知っておくことが重要である。
視点 | ウイルス感染(例:風邪、インフルエンザ) | 細菌感染(例:肺炎、扁桃炎、中耳炎など) |
---|---|---|
原因 | 数百種類のウイルス | 細菌(肺炎球菌、溶連菌など) |
症状の広がり | 複数部位にまたがる(鼻・喉・気管など) | 原則として1つの臓器に限局 |
経過 | 自然に治癒することが多い(1週間前後) | 放置すると重症化することがある |
薬 | 対症療法(症状を和らげる薬のみ) | 抗生物質が有効な場合がある |
例 | 普通の風邪、RSウイルス感染 | 肺炎、細菌性扁桃炎、中耳炎 |
この比較から分かるように、風邪は基本的にウイルス性で自然に治るのに対し、細菌感染は適切な抗生物質による治療が必要なケースがある。自己判断で抗生物質を使うのは危険であり、医師の診断に基づく対応が必須である。
どういう時に病院に行くのか?
風邪は多くの場合、1週間前後で自然に回復する。しかし、以下のような場合は受診が推奨される。
- 38度以上の発熱が続く
- 強い倦怠感や息苦しさがある
- 咳が3〜4週間以上持続する
- 一度改善した後に再び悪化する(二峰性の経過を示す場合)
これらは細菌の二次感染や肺炎への移行を示唆する可能性があるため、医療機関での診察が必要となる。
風邪の症状を理解する
風邪の症状は様々だが、代表的なものは以下の通りである。
- 鼻水・鼻づまり(約95%)
- 咳(約80%)
- 喉の痛み(約70%)
- 発熱(約60%)
- 倦怠感(40〜70%)
原因となるウイルスによって症状の組み合わせや強さは異なるが、複数の症状が同時に現れる点が風邪の特徴である。
症状別の薬の選び方
風邪そのものを治す薬は存在せず、薬は症状を緩和する目的で使用される。すなわち「対症療法」が基本である。いずれも、市販薬として、薬局で購入することができる。
- 発熱・頭痛・関節痛 → 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)
- 鼻水・鼻づまり → 抗ヒスタミン薬、鼻粘膜収縮薬
- 咳 → 鎮咳薬(乾いた咳)、去痰薬(痰が絡む咳)
- 喉の痛み → トローチ、うがい薬、鎮痛解熱薬
- 倦怠感 → 睡眠、栄養補給、ビタミン・サプリの補助
重要な点は、抗生物質はウイルス性の風邪には無効であるということ!!しかも抗生物質を不用意に用いると、腸内細菌叢を含む体内の微生物バランスが崩れ、免疫機能や消化吸収に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、ウイルス性の風邪では極力避けるべき。
一方で、細菌性感染が疑われる場合には抗生物質の使用が有効であり、肺炎など重篤な合併症を防ぐために必要となる。このような場合には、ご自身で判断するのではなく、必ず病院へ受診。医師によって細菌感染症の診断を受けることが重要になる。
腸内細菌と免疫の関係
人間の腸には100兆個以上の細菌が棲息しており、その数は体の細胞数を上回るとされる。腸内細菌は大きく善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分けられ、これらのバランスが健康の鍵を握る。
腸内細菌は以下のように免疫と深く関わっている。
- 腸は最大の免疫器官であり、免疫細胞の7割が腸に存在すると言われている。
- 腸内細菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作り出し、腸粘膜のエネルギー源や抗炎症作用として働く。
- 腸内環境が乱れると、炎症反応が全身に波及し、感染症にかかりやすくなる。
抗生物質を安易に使うと、この腸内細菌叢が破壊され、免疫力の低下や下痢、さらには生活習慣病やアレルギーのリスク増加にもつながる。そのため、風邪がウイルス性である場合には抗生物質を避け、腸内環境を整えることが回復につながる。
ビタミンと免疫
ビタミンは、身体の回復や免疫機能をサポートする上で欠かせない栄養素として知られている。特に以下のものは風邪との関わりが深い。
- ビタミンC
抗酸化作用を持ち、白血球の働きを助ける。感染症にかかっているときは消費量が増えるため、柑橘類やキウイ、野菜から積極的に摂取すると良い。 - ビタミンD
免疫細胞を活性化し、抗菌ペプチドの分泌を促す。日光を浴びることで体内合成されるが、現代人は不足しがちである。風邪やインフルエンザの予防効果が報告されている。 - ビタミンA
粘膜の健康を保つ。鼻や喉の粘膜バリア機能を強化し、ウイルスの侵入を防ぐ役割を果たす。 - ビタミンE
強力な抗酸化作用を持ち、免疫細胞の働きを助ける。ナッツ類や植物油に豊富に含まれる。
これらのビタミンは食事で摂った方がいいと考える人や、現代の食材にはビタミンが不足しているという人もいる。
個人的には、ビタミンA、C、Dは、サプリメントで補うことで、風邪の予防対策をとっている。そのために、定期的に、これらの血中濃度を医療機関で測定し、足りない分は補う形で。これを行うことで、昨年(2024年)3回風邪を引いていたのが、今年は1回に抑えることができている。
ぜひ、ご興味のある方は、分子栄養学に造詣のある医師にご相談ください。
まとめ
風邪は単なる体調不良ではなく、免疫や生活習慣と深く結びついた現象である。
- 風邪の正体を理解する
- 病院に行くべきタイミングを見極める
- 代表的な症状を把握する
- 薬を症状ごとに適切に使い分ける
- 抗生物質は安易に使わず、腸内環境を守ることが大切である。ただし、細菌性感染時には医師の判断のもとで適切に使用する必要がある
- 腸内細菌と免疫の関係を理解し、食事や生活習慣を整えることが、風邪予防と回復の両面で重要である
これらを知ることで、不要な不安を減らし、正しいセルフケアにつながる。
セルフケアについてご興味のある方は「日常生活でできる風邪予防〜薬・サプリ以外で」にまとめました。チェックください!