第6回|“右から左へ、下から上へ”──脳の統合と意思決定の質
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はじめに
こんにちは、渋谷でロルフィング・セッションや脳科学ベースの講座を提供している大塚英文です。

今回は、《経営者のための脳活講座》第6回のテーマ「脳の統合」についてご紹介します。
脳は上下・左右に分かれている?
私たちの脳は、大きく次のように区分されます:
- 上下の階層(bottom-up / top-down)
下層は脳幹や大脳辺縁系(感情・生存本能)などを含み、上層は前頭前野(理性・計画・共感)を司ります。 - 左右の分担(right brain / left brain)
右脳は空間・直感・非言語的情報を、左脳は言語・論理・分析的情報を処理する役割を担っています。
現代の経営では、論理的思考や数値化が重視されがちですが、それだけでは不十分です。感情・身体感覚・直感といった“非言語的な情報”が、意思決定やリーダーシップにおいてますます重要になってきています。
「統合」こそが判断の質を高める
こうした上下・左右の脳の働きをつなぐ力、それが「脳の統合(integration)」です。
例えば:
- 情動に飲み込まれず、俯瞰して選択できる
- 身体の違和感を“無視”せず、意思決定のシグナルとして扱う
- 非言語的な違和感を、メタ認知を通じて明確化する
──これらは、情報の分断ではなく、情報の“橋渡し”ができている状態です。
マインドフルネスは統合を促す
この“統合力”を高める実践の一つが「マインドフルネス」です。
心理学者ダニエル・シーゲルは、マインドフルネスを「内外の注意を統合する力」と定義し、前頭前野の発達や感情制御力の向上を明らかにしました。
また、Daniel GolemanとRichard Davidsonの『心と体をゆたかにするマインドエクササイズの証明(Altered Traits)』でも、マインドフルネス実践が以下の機能強化に寄与することが示されています:
- 感情の自己認識(Emotional Self-Awareness)
- 身体状態のモニタリング能力(Interoception)
- 他者との共感力(Empathy)
- ネットワーク全体の統合性(functional integration)
マインドフルネスは「脳の機能を一時的に止める」のではなく、脳内ネットワークの再構築(統合)を促すアクティブな行為なのです。
統合的意思決定へ──VUCA時代の知性とは
「速く正確に判断する」から「ゆっくり統合的に納得解をつくる」へ。
VUCA時代に求められるのは、「正解」に依存しない判断力です。そのためには、
- 感情を否定しない
- 身体感覚を無視しない
- 直感と論理の両方に耳を澄ます
といった“統合的知性”が必要です。
この講座で得られること──なぜ「脳の統合」が重要なのか?
《経営者のための脳活講座》では、このような脳の階層的・左右的な構造を理解しながら、自分の思考パターンと行動パターンを可視化・再設計していくことを目的としています。
特に第6回では、
- マインドフルネスを実践しながら自律神経の状態を観察する
- 思考・感情・感覚の分断を見つけ、つなぎ直す
- 感情の自己認識力(EQ)を高める
といった体験を通して、「全体としての自分の脳」を使える感覚を育てていきます。
単なる“スキルの習得”ではなく、経営判断・リーダーシップ・人間関係のすべてに通じる脳の使い方を学ぶ場として設計されています。
🔜 次回(第7回)の予告
次回は、《経営者のための脳活講座》第7回(最終回)。
「“感じる力”が未来をつくる──身体感覚と共感が導くリーダーシップの在り方」をテーマに、感受性・共感力・身体の直感が未来志向のリーダーシップにどうつながるかを深掘りしていきます。
どうぞお楽しみに!