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第4回|意思決定は“速い脳”と“遅い脳”の対話である

はじめに

こんにちは、渋谷でロルフィング・セッションや脳科学ベースの講座を提供している大塚英文です。

今回は《経営者のための脳活講座》第4回として、「意思決定の2つのモード」に加え、EQ(感情知性)・マインドフルネス・身体知性が、どのように意思決定の質を左右するのかを探っていきます。

「速い脳」「遅い脳」──2つの判断モード

心理学者のDaniel Kahnemanは、脳の判断モードを大きく2つ(システム1とシステム2)に分けて考えました。

特徴速い脳(システム1)遅い脳(システム2)
処理スピード非常に速い(無意識的)ゆっくり(意識的)
エネルギー消費少ない多い
内容本能・直感・習慣論理・熟慮・計算
主な領域扁桃体、脳幹、小脳など前頭前野(PFC)
活性化のタイミング危機・瞬間判断・自動反応問題解決・熟慮・学習

日常的な判断はほとんどが「速い脳=システム1」によるものですが、
複雑な問題や大局的視点が必要な局面では、「遅い脳=システム2」が重要になります。

EQ(感情知性)と「自分の状態に気づく力」

一方で、心理学者のDaniel Golemanは、EQ(Emotional Intelligence)の中核に「自己認識」を置いています。

“自己認識とは、自分の感情がどのように自分の行動に影響を与えているかを理解する力である。”

つまり、「いま怒っているな」「不安だな」と自分の内的状態に気づくことができれば、それを一時停止し、脳のモードを切り替える(システム2へ)ことが可能になります。

EQが高い人ほど、自動反応のループから脱し、選択肢を持てるのです。

マインドフルネス──“変性特性”が脳を変える

マインドフルネス(Mindfulness)とは、「今・ここ」に意識を向け、自分の状態に気づく力を育む実践法です。

Daniel GolemanとRichard Davidsonは『Altered Traits(邦題:心と体をゆたかにするマインドエクササイズの証明)』で、マインドフルネスによって生じる脳と性格の変化を“altered states(変性状態)”ではなく、altered traits(変性特性)”=持続する変容”と定義しました。

科学的に証明されている効果:

  • 扁桃体の反応性が低下 → ストレスへの反応が穏やかに
  • 前頭前野が活性化 → 集中力・意思決定能力が向上
  • 島皮質やACCが強化 → 内受容感覚と自己調整能力がアップ
  • デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の静止 → 雑念の減少と注意力の向上

このように、マインドフルネスは単なる「リラックス法」ではなく、脳の構造と習慣的反応を根本から書き換える神経訓練と言える。

身体知性(Body Intelligence)と判断力の関係

意思決定の多くは、脳だけでなく身体との協働作業です。

たとえば、

  • 緊張して肩が上がる → 呼吸が浅くなる → 判断が焦る
  • 腸が張る → 不安や直感のシグナル → NOと言うべきタイミングを逃す
  • 呼吸を深める → 交感神経が静まり → 前頭前野が活性化 → 落ち着いて判断できる

これらはすべて、身体が先に反応し、脳があとから意味づけするプロセス。
つまり、“思考を変えるには、まず身体を感じること”が鍵となるのです。

EQ・身体知・マインドフルネスで整える「判断の質」

この3つを統合すると、意思決定のプロセスに以下の変化が生まれます:

  1. EQ:自分の内的状態に気づく(自己認識)
  2. 身体知:感情と感覚にアクセスし、整える(自己調整)
  3. マインドフルネス:注意の焦点を選び、思考・感情に飲まれない(自己統合)

変化の激しい時代に必要なのは、知識やスキルよりも、内なるコンパス=判断軸を持つこと。
それを実現する実践体系こそが、脳活講座なのです。

脳活講座が目指す「しなやかなリーダーシップ」

脳活講座では、座学だけでなく、呼吸・感覚・姿勢・意識の向け方を実際に体験しながら、
“感情と思考と身体がつながった意思決定”を育てていきます。

  • 脳科学・心理学・身体感覚の知見を統合し
  • 「感じる力」から「選び直す力」へ
  • 自分と他者、組織と環境との関係性を再構築する

まさに、“速い脳”と“遅い脳”の対話を可能にする、新しいリーダーシップのトレーニングです。

次回予告|組織は生きている

第5回では、「ティール組織」「U理論」といった、組織を“生命体”と捉える新しい考え方を取り上げます。

組織が生き物であるならば、その中心に立つリーダーもまた、“感じて変化する存在”でなければならない。
そのヒントを、身体感覚と結びつけながら探っていきます。

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