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【B#194】人類は「歩いて広がり、つながって進化した」─『人類の起源』から読み解くホモ・サピエンスの旅

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

人類(ホモ・サピエンス)は、どこから来て、いかにして現在に至ったのか。

篠田謙一著『人類の起源──古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』(中公新書)は、古代DNAと最新の考古学的知見をもとに、人類の壮大な移動と進化の軌跡を描き出している。

今回、ホモ・サピエンスについて、
・歩いて広がる力」
・脳の容積の変化ー他者とつながる力
・多様性を受け入れる柔軟性
の3つの視点から、紹介させていただく。

歩いて広がる─アフリカからパタゴニアまで─5万年に及ぶ地球規模の旅

ホモ・サピエンスは、約20万年前にアフリカで誕生し、約6万年前に「出アフリカ」を果たした。その後、ユーラシアを横断し、最終的には南米最南端のパタゴニアへと到達した。

この移動距離は地球半周、すなわち約2万kmに及ぶ。平均的な歩行速度を時速約5kmと仮定すれば、直線的に移動すれば4年ほどで踏破できる距離である。しかし実際には、氷期・寒冷期・地形的障壁など多くの困難を乗り越え、約5万年の歳月をかけてこの旅を成し遂げた。

人類は単なる移動だけでなく、その道中で気候や環境への適応、文化の創出、他種との交雑など、多様な経験を通じて進化していった。

脳の進化と社会性──知性は「つながり」とともに拡大した

人類進化の中で特筆すべきは、脳の容積の変化である。

脳は極めてエネルギーを消費する器官であり、その進化は単なる形態の変化にとどまらず、食性・行動・社会構造と深く関係している。

以下に、主要な人類の種とその脳容積の推移をまとめる。

脳の進化の流れ(目安値)

時代・種名脳容積(ml)特徴
約440万年前:アルディピテクス属300〜400チンパンジーとほぼ同等
約200万年前:ホモ・エルガステル約760道具使用、火の利用
約100万年前:北京原人・ジャワ原人約930狩猟、移動の拡大
約60万年前:ホモ・ハイデルベルゲンシス約1170より複雑な社会的協力
約40万年前:ネアンデルタール人約1450高緯度適応。視覚系の後頭葉が発達
現代人:ホモ・サピエンス約1490前頭葉が発達。創造性、言語、社会性の飛躍

特にホモ・サピエンスでは、思考・創造・関係性を司る前頭葉が著しく発達した点が大きな特徴の一つである。

150人という限界─「ダンバー数」が示す社会の単位

脳の進化は、認知機能の向上だけでなく、人間が構築できる社会の規模とも密接に関係している。

進化心理学者ロビン・ダンバー(Robin Dunbar)は、脳の新皮質の大きさと安定した人間関係を保てる人数に相関があることを示し、これを「ダンバー数」と呼んだ。

以下は、脳の進化と社会規模の関係を示したものである。

🧑‍🤝‍🧑 社会規模と脳容量の関係(目安)

種/段階社会集団の規模備考
猿人(アルディピテクスなど)約50人チンパンジーに近い規模
原人(エルガステル等)約100人狩猟採集の基盤形成
ホモ・サピエンス約150人現代社会にも通用する「ダンバー数」

この150人という数は、狩猟採集社会から現代の企業や軍隊、SNSのグループ規模に至るまで、人間が無理なくつながりを保てる限界としてさまざまな場面に現れている。

交雑と多様性──「純血」ではなく「共存」が進化の鍵だった

ホモ・サピエンスは出アフリカの後、他の人類種と遭遇し、競合するだけでなく、交雑という柔軟な方法で関係性を築いた。

  • ヨーロッパではネアンデルタール人と交雑
  • アジアではデニソワ人と交雑

その結果、現代人の中にも、ネアンデルタール人やデニソワ人由来のDNAが1〜2%ほど残っていることが明らかになっている。

このことは、交雑が「弱さ」ではなく、「適応のための戦略」であったことを示している。多様性こそが、進化と生存を支える力だったのである。

気候変動と離合集散──動き続けることが適応を生んだ

約5万年前からは寒冷化が進行し、約2万1000年前の最終氷期最寒冷期を経て、1万3000年前頃から再び温暖化へと転じる。このような気候変動は、人類の移動と再構成を促し、「離合集散」のダイナミズムを生み出した。

この動きは、環境に対する適応力を高めるだけでなく、新たな文化的・遺伝的融合をもたらす契機となった。

日本列島の成り立ち──「二重構造モデル」が示す融合の歴史

日本列島の人類史もまた、「多様性と統合」の一例である。

  • 縄文人は、アフリカ起源のホモ・サピエンスが東アジアに定着した子孫であり、日本列島に1万年以上前から住んでいた
  • 弥生人は、後に大陸から移住してきた農耕民であり、ユーラシア内陸の「ステップ地帯」に由来する

この両者の融合が、現代日本人の遺伝的・文化的基盤を形成している。

また、北海道のアイヌ、南西諸島の琉球民族、本州・四国・九州の本土日本人の間には、形質的にも遺伝的にも違いが残されており、日本人自体が多層的な集団であることが分かる。

まとめ─「一つの種、多様な旅」

ホモ・サピエンスは、単一の起源を持ちながら、数十万年にわたって多様な旅を続けてきた。

  • 直立歩行による行動範囲の拡大
  • 脳の発達による社会性と創造力の深化
  • ダンバー数に支えられたコミュニティ形成
  • 他種との交雑による遺伝的柔軟性
  • 気候変動への動的適応
  • 縄文人と弥生人の融合に見られる「文化の共存」

これらすべてが、「人類は一つの種でありながら、多様である」という事実を裏付けている。

本書をお勧めしたい人たち

人類の進化や起源に関心がある人

  • 「人類はどこから来たのか?」という根源的な問いに関心がある人
  • ネアンデルタール人やデニソワ人との違いや共通点を知りたい人
  • ホモ・サピエンスがなぜ生き延び、繁栄したのかを理解したい人

 脳の進化と社会構造に興味がある人

  • なぜ人は言語を持ち、社会を作ったのかを知りたい人
  • 脳の進化が人間関係や集団規模にどう影響したかに関心がある人
  • ダンバー数や社会脳仮説など、進化心理学に興味がある人

文化の多様性や交雑に価値を感じる人

  • 「純血」や「単一のルーツ」に違和感を持つ人
  • 異文化や他者との関係性を大切にしたい人
  • 融合・混交の中に創造性や可能性を見出す人

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