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【B#184】失敗をどう見るかで、人生も組織も変わる〜3種類の失敗から考える

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

なぜ失敗はネガティブに捉えてしまうのか?

「失敗する」と、人はなぜこれほどまでにネガティブに捉えるのだろうか。「失敗は成功のもと」と言葉では理解していても、これまで関わってきたクライアントや、会社員時代の同僚たちと話していても、失敗を極端に恐れる傾向は根深いものがあるように感じてきた。

だが、失敗とは本当に恐れるべきものなのだろうか。科学的な視点から見れば、「失敗」とはどのように定義され、評価されているのか。その構造を理解することで、私たちは失敗に対してもっと寛容になれるのではないか――。

そんな問いに応えるのが、ハーバード・ビジネススクール教授エイミー・C・エドモンドソンによる著書『Right Kind of Wrong』(2023年)である。

この本は、失敗には「質の違い」があり、正しく分類し、活かすことで、個人の成長にも組織の進化にもつながるという力強いメッセージを持っている。今回は、その内容を紹介しながら、「失敗」とは何か?その本質について考えてみたい。

失敗には種類がある:3つの分類による再定義

エドモンドソンは、すべての失敗を一括りにするのではなく、その原因と文脈によって3つに分類すべきであると説く。これにより、漠然とした「失敗」への恐れが、学習可能なプロセスへと変化すると考える。

基本的失敗(Basic Failure)

これは、本来避けることができる単純なミスを指す。たとえば確認不足による誤発注や、既存ルールの不徹底による作業ミスなどが該当する。これらは、教育や手順の見直しによって予防が可能であり、再発防止に注力すべき失敗と言ってもいい。

複雑な失敗(Complex Failure)

複数の小さな要因が連鎖的に作用し、誰か一人の責任に帰せないかたちで発生する失敗である。たとえば1986年に起きたNASAチャレンジャー号の爆発事故では、技術的な懸念が組織内で共有されなかったことが致命的な結果を生んだ。これは、失敗を「語れない文化」の危うさを象徴している。

インテリジェントな失敗(Intelligent Failure)

これは、成功例のない未知の領域で、仮説に基づき、意図的・計画的に挑戦した結果として生じる失敗である。新製品開発、医療研究、社会実験などがこれに該当する。

“Intelligent failures occur in new territory. They are the result of thoughtful actions—well-planned experiments or explorations.”
「インテリジェントな失敗は、未知の領域で生じる。これらは熟慮された行動や計画的な実験、探索の結果である」
― Amy C. Edmondson, Right Kind of Wrong, 2023

このような失敗は、むしろ積極的に受け入れ、そこから得られた知見を次に活かすべきものとして評価されるべきと、エドモンドソンは考える。

失敗は「語れる」ことで、学びとなる

エドモンドソンが繰り返し強調するのは、「失敗を語れる場」がなければ、学習は起こらないという点である。

“Learning from failure requires making it discussable. We must create environments where people feel safe talking about mistakes.”
「失敗から学ぶには、それを語れるようにすることが必要である。人々が安心して失敗について話せる環境をつくらなければならない」
― Right Kind of Wrong, 2023

この考え方を体現する例として挙げているのが、トヨタのアンドン・コードである。ライン作業中に不具合を見つけた作業者が、迷うことなく作業を中断できる仕組みであり、問題発見を促進する文化的装置でもある。これは基本的失敗を迅速にフィードバックに変換する事例の一つと言える。

また、Airbnbは創業初期から何度も「うまくいかない」試みを重ねながら、仮説と実験のサイクルを回すことで、現在のサービス形態にたどり着いた。これはまさにインテリジェントな失敗を文化として受け入れてきた企業の事例である。

一方、NASAのチャレンジャー号の事例は、「正しい懸念が正しく届かない」環境が、どれほど危険かを教えてくれる。失敗を語れることが、時に命を救い、未来を変えるのである。

誰にとっての一冊か?

Right Kind of Wrong』は、「失敗は悪いこと」「完璧にやらねばならない」という思い込みにとらわれがちなすべての人に薦めたい一冊である。

とりわけ、

  • 新しい挑戦を前に一歩が踏み出せない人
  • 部下のミスに過剰反応してしまう管理職
  • 教育や医療、技術開発など「正解のない領域」に関わる専門職
  • 失敗を過去に引きずってしまっている人
  • チームの中で「話しづらさ」を感じている人

こうした読者にとって、本書は失敗に対する認識のフレームを根本から変えてくれる力を持っている。

“If we want innovation, we must accept—and even embrace—the right kind of failure.”
「私たちがイノベーションを望むのなら、正しい種類の失敗を受け入れ、むしろ歓迎すべきである」
― Amy C. Edmondson, Right Kind of Wrong, 2023

失敗とは、未来の羅針盤である。それを恐れるか、情報として受け取るか。受け取り方をどうするか、認識のフレームが重要であることが伝わればと考えている。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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