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【P#60】亜鉛の欠乏と新型コロナとの意外な関係性〜亜鉛と胃酸との関係は?どのように亜鉛を取り入れるか?

はじめに

コロナウィルスの感染症が中国・武漢市から広まってから1年半。

Our World in Dataによると、世界の中で、日本ではワクチン接種率(2回とも接種した割合)は50%を超え、順調に進んでいるかのように見える。

ワクチン反対派もいるので、今後接種率はどこかで頭打ちになる可能性がある。
「新型コロナへの感染予防や、感染した際に、重症化、入院、死亡をどう予防していくか?」
そのために、感染予防のための免疫を正常に働かせること(巷でいう「免疫力」を高めること)が大事だ。

免疫の働きを高めていくために〜ワクチン接種以外でできること

新型コロナと免疫〜消化・吸収と免疫との関係、mRNAワクチンはどこまで効果があるの?自然感染に比べどうなの?」では、免疫の働きは、食事・栄養の消化・吸収によって決まることを書いた。

免疫の働きに関わる蛋白質、ビタミンやミネラルのことの理解が深まれば、ワクチンを接種してない方(あるいは、ワクチンをすでに接種した方)に対しても、もう一つの治療の選択が増えるのではないかと思う。

ワクチンを接種している方、あるいはワクチンを接種したくないが、身体内の自己治癒力を信じて、色々と試してみたい方がいらっしゃるかと思う。
個人的には、感染予防及び、感染後の重症化を予防していくための栄養素として、
1)ビタミンD3
2)亜鉛
3)マグネシウム
4)ビタミンA
5)グルタチオン(NAC(Nアセチルシスティン))による解毒
等を注目している。

ビタミンD3については「ビタミンD3の欠乏と新型コロナとの意外な関係性〜年齢、肥満、人種、異性化糖の影響」にまとめたので、参考にしていただくことにして、今回は「亜鉛」について取り上げたい。

亜鉛欠乏によって新型コロナ陽性患者の重症化リスクが高まる

世界保健機関(WHO)は、世界人口の3分の1が亜鉛欠乏だと指摘しており、世界の呼吸器感染症の16%が亜鉛不足によるものであるという報告がある。これがヒントとなり、世界中の研究者は、新型コロナと亜鉛との関係を調べるようになった。

実際、新型コロナによる感染で認められる症状と、亜鉛欠乏による症状には共通点がある。
Frontiers in Immunologyのレビューによると、慢性閉塞性肺疾患、気管支肺炎、心血管疾患、自己免疫疾患、腎疾患、腎透析、肥満、糖尿病、がん、動脈硬化、肝硬変、免疫抑制、既知の肝障害の患者は、血液中の亜鉛の濃度が低い。
新型コロナの陽性者でこれらの病気にかかっていると、重症化するリスクが高まる。

日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針 2 0 1 8」によると、亜鉛欠乏により、味覚異常、皮膚炎、脱毛、貧血、口内炎、男性の場合には、性機能異常、易感染性,骨粗しょう症などが発症することがわかっている。
新型コロナの症状も、発熱や咳などの呼吸器症状、強いだるさ(倦怠感)、頭痛、嘔吐、下痢、結膜炎、臭覚・味覚障害があり、似ているところもある。

2020年9月にInternational Journal of Infectious Diseasesに発表された論文によると、健常人(105.8μg/dL)に比べ、新型コロナの陽性患者(74.5μg/dL)の血液中の亜鉛濃度が統計的に有意に低いことが報告された。

又、欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)の報告(2020年9月)では、新型コロナ陽性者の入院患者の血清亜鉛濃度を解析。
生存者の血清亜鉛濃度が63.1μg/dLだったのに対して、死亡患者は43μg/dLと統計的に有意に低くく、入院時の血清亜鉛濃度が50μg/dL以上に比べ50μg/dL未満の症例の方が死亡するリスクが2.3倍に及ぶという。

日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針 2 0 1 8」では、60μg/dL未満を「亜鉛欠乏症」を定めていることから、この値以上に保つことがデータからも裏付けられている。

亜鉛と免疫の働きについて〜300種類以上の酵素の働きに必要

亜鉛は、300種類以上の酵素(蛋白質)の働きに必要で、先ほど書いたように、肺、免疫、腎、膵臓を含め様々な臓器に影響を与える。

免疫関連だけでも、
1)ウィルスが細胞に入るのを予防する働き
2)ウィルスが細胞の中で増える(複製)を防ぐ働き
3)免疫のバランスを整える(例えば、Th1/Th2のバランス)
といった働きがあり、呼吸器系での感染症に、亜鉛のサプリメントによって症状の軽減や、風邪の引きやすさが減るといった報告が出ている。

亜鉛は、免疫に重要であり、新型コロナの重症化を予防することが理解できたと思う。
しかし、問題がある。
亜鉛は、サプリメントとして取り入れる際に、注意が必要なのだ。
下記に、そのことについて書きたい。

意外と知られていない亜鉛の消化・吸収〜食事との組み合わせが大事

亜鉛の消化・吸収についてだが、胃では全く吸収されず、主に、十二指腸と小腸(空腸)で吸収される。
吸収率は、20〜40%で、細胞内にある蛋白質により、取り入れられるが亜鉛の量によって変動すると考えられている。

特に、亜鉛と共になんの食事を取ったのか?によって、吸収率が変化する。
例えば、種子、米糠や小麦なのど穀類、豆類などの植物由来の食品に多く含まれるフィチン酸は、亜鉛の吸収を阻害。
カルシウム、乳製品、食物繊維、コーヒーに含まれるタンニン、オレンジジュース、アルコールなども吸収を阻害する。
肉類、魚類に含まれる動物性蛋白質、クエン酸、ビタミンC等は、亜鉛の吸収を促進することが知られている。

このように「亜鉛の消化・吸収には、食事の組み合わせが大事!」なのだ。

亜鉛の消化・吸収〜胃酸との関係、日本人は胃酸分泌が弱いこと

亜鉛の消化・吸収に蛋白質が関係しているということは、蛋白質の消化・吸収に関わる胃酸の分泌についても考慮する必要がある。
ここで胃酸分泌について興味深いことを紹介したい。

奥田昌子さんの「胃腸を最速で強くする・体内の管から考える日本人の健康(幻冬舎新書)」によると、
日本人の胃は、たいてい釣り針のように曲がった形をしていて、縦に長いため逆流しにくく、出口が少し高い位置にある。食べたものがしっかりと撹拌できるという。
欧米人の胃は、スッキリした形をしていて、胃の内容物が腸に速やかに移動できるという。

なぜかというと、
日本人は、食物繊維を豊富に含む穀物を主食にしており、強く、固いのでしっかりと砕いておかないと消化の妨げになる。
欧米人は、肉食中心で、蛋白質と脂肪は小腸に行けば問題なく消化できる。このことから、大量に胃酸を出して、胃での処理を速やかに終えて、内容物を腸に送り出す方がいい。

このため、欧米人は胃酸の分泌量が日本人よりも2倍多く、胃の筋肉も分厚く、内容物を力強く押し出す能力が高いのだ。

このように日本人はもともと胃酸分泌が弱いのだ。

厄介なのは、菜食主義の人は、動物食に含まれるビタミンB12、葉酸、鉄が欠乏する(逆に、これらが不足する場合に、胃酸分泌不足を疑う)。これらの栄養素は、全て胃酸分泌に関わっており、これらが欠けると、亜鉛の吸収が妨げられてしまう。

これに加え、胃薬の中でプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃酸分泌を抑えるだけではなく、その後慢性的に胃酸不足を招いてしまう。

亜鉛の吸収率を上げるために、胃酸の分泌をどう上げるか?

胃酸の分泌は、ストレスによる交感神経優位や低栄養(ビタミン不足)によって起こる。
更に、胃酸の材料となる水素イオンは、解糖系のピルビン酸からアセチルCoAで発生する二酸化炭素と水によって出来るが、この反応にビタミンB群(特にビタミンB1)が必須になる。

胃酸の分泌を促すために、栄養素(ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸)を補いつつ、副交感神経優位にし、よく噛んで、ゆっくり食べるといったこと等が求められる(ちなみに、ビタミンの値は血液検査で測定可能)。

胃酸分泌に関しては、ペプシノーゲンの血液検査で調べることができる(私は胃酸分泌が弱いことがわかった)が、より簡単な方法がある。

100%レモン水を希釈して食事を取った際の変化をみる。胃がスッキリしたような感じがあったり、いつもよりも腹が減った感覚があった場合には、ほぼ8割の確率で胃酸の分泌が低下している可能性がある。

ぜひご興味のある方、試してみてください!

まとめ

亜鉛が新型コロナの重症化の予防に対して働くことをデータで示した上で、身体内でどのように吸収されるのか?について紹介。
亜鉛の消化・吸収には、胃酸の分泌が大きな影響があることから、
1)交感神経優位なのか?
2)ゆっくりと噛んで、食事を取っているのか?
3)栄養素は足りているのか?(ビタミンB群、鉄)
等を含め、総合的に判断すること。

参考に、サプリメントとしての亜鉛は、iherbで入手可能で、胃酸が分泌される食後に摂ることが最も吸収が高い。
一方で、処方薬として「ポラプレンジンク」と「酢酸亜鉛」がある。
ぜひ試してみてください。

少しでも、今回の情報が参考になれば幸いです。

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