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【P#49】新型コロナの起源は?(2)〜構造からみた「自然感染説」と「研究所流出説」

はじめに

2020年1月から始まった新型コロナウィルスの感染症が流行して、明らかになっていないことが一つある。
「そもそも、新型コロナウィルスはどのようにして世界に広まったのか?」
についてだ。

新型コロナウィルスの起源の2つの説:研究所流出説か?自然感染説か?

前回、新型コロナウィルスの起源は、
1)武漢ウィルス研究所(Wuhan Institute of Virology、WIV)で研究していたウィルスが外部へ漏れた(研究所流出説)
2)コロナウィルスは、中国の武漢の生鮮市場で売買されていた動物を通じてウィルスは全世界へと広がった(自然感染説)
の2つが有力であること、

それぞれの説を支持する証拠はないものの、両方とも並列に考えることが大事だと書いた(「自然発生説」と「研究所流出説」〜動物から人への自然感染か、ラボから漏れたのか?〜どちらが有力なのか?」)。

今回は、やや専門的になるが、
「新型コロナウィルスの構造」より「自然発生説」と「研究所流出説」について考えていきたい。

コロナウィルスの構造:S蛋白質とACE2について

新型コロナウィルスの構造を知ることは、このウィルスの性質を知る上で重要。
基本を知ることは、理解を深めていく上で重要なので、ぜひ辛抱強くお付き合いいただきたい。

上写真は、よく見かける新型コロナウィルスの写真。
赤色の三角の形をしたタンパク質はS(Spike=棘)蛋白質と呼ばれ、人間の細胞に感染するために重要な役割を果たす。
コロナ=Coronaの意味は冠。冠の形をしたウィルスのためこの名前がついている。

今までコロナウィルスは7種類わかっており、SARSやMERSもコロナウィルスの一つだ。

 

新型コロナウィルスが人間に感染するためには、人間の細胞の外に出ている受容体に結合する必要がある。
その役割を担うのが、ウィルスはS蛋白質、人間の細胞はACE2だ(ちなみに、2002年〜2003年に流行したSARSも全く同じ)。

S蛋白質の構造を細かく見ていこう。
S蛋白質は、S1サブユニットとS2サブユニットの2つの部品=サブユニットから構成。
S1とS2の間が切断されることで働く。

なお、S1は、ACE2(Angiotensin Converting Enzyme、アンジオテンシン)と呼ばれる蛋白質と結合し、人間の細胞の中に入ると考えられている。
S1の中で、ACE2と結合に関わるのが、RBD(Receptor Binding Domain、受容体結合部位)で、ACE2と実際に結合するのが、RBM(Receptor Binding Motif)と呼ばれる。

S2は、細胞膜に融合、細胞の中に取り込まれるのに使われることが明らかになっている。

「ACE2は、人間の中で肺、どの人間の細胞にACE2があるのか?」によってウィルスの感染力が決まる。
参考に、ACE2は、呼吸器系、目の角膜や腸内(上皮)細胞にあるため、新型コロナウィルスの感染力が強いと考えられている。

新型コロナウィルスは、RaTG13に似ているが、S蛋白質のRBMは似ていない

新規コロナウィルスの構造は、石正麗博士によりNatureへ発表された(2020年2月)。
この論文で、突然「RaTG13(コウモリコロナウィルス)」が出てきて、新型コロナウィルスが96%似ていると発表したのだ。

実はRaTG13は、WIV以外の人にとっては初耳のことで、誰もその存在を知らなかった。

しかも、
「RaTG13は、中国南部の雲南省の洞窟に生息するコウモリ由来のウィルス」
と書いてあるだけで、
「いつ、どのようにRaTG13が発見されたのか?」
について書いていなかった。

RaTG13に目をつけ、「自然発生説」に対して疑いを示したのが、
在野のカナダ人のバイオテクノロジーの起業家Yuri Deiginだった。
Deiginは、分子生物学の知識を下に、エッセイをMediumへ投稿(2020年4月)した。
(このエッセイは必読だと思う、ぜひ英語がわかる方は読んでいただきたい)

前回の投稿で紹介した素人集団・DRASTICが、雲南省の鉱山坑道中から見つかったコウモリ由来のコロナウィルス株とRaTG13は同一であることを明らかにしていく。

Yuri DeiginがRaTG13と新型コロナウィルスとの比較で明らかにしたことは、
1)RaTG13の骨格は新型コロナウィルスに似ているが、S蛋白質のRBMの部分は似ていない。
2)S蛋白質は、コウモリ由来ではなく、センザンコウ由来のコロナウィルスに似ている
3)S1とS2が共同して働くためには、FURIN部位があり、新型コロナウィルスのS1とS2の間に挟まっていること
の3つだ。

順番に説明していきたい。

Pangolin(センザンコウ)の登場〜S蛋白質は、人間のACE2に結合する

2020年2月に中国の研究者が、Pangolin(センザンコウ)由来の新型コロナウィルス株を報告したのだ。
興味深いのはPangolin株由来のMP789株は、新型コロナウィルスと90%似ているのだが(RaTG13よりも低い)、面白い特徴があることがわかった。

先ほど書いた、S蛋白質のRBM(実際にACE2に結合する部位)は人とMP789株と非常に構造(違うのは1アミノ酸だけ)が似ていて、RBMの近くの左側と右側では、RaTG13株に似ていることがわかった。

なんと人間と全く関係のないPangolinとRBMの部位で新型コロナウィルスと一致しているのは、偶然なんだろうか?
それとも・・・。
後ほど、取り上げたい。

さて
「中国の研究者たちはどのようにしてセンザンコウを手に入れたのだろう?」
実は、2019年3月から12月の間に、4匹の中国産、25匹のマレーシア産のセンザンコウがコロナウィルスと似た重篤な肺炎になり広東省の林業局の税関で没収。
動物病院に運ばれたが救助の努力も虚しく、亡くなったそうだ。

S1とS2の間に存在するFURIN部位〜なぜここに挟まれているのか?

さて、RaTG13株、センザンコウ由来のMP789株、新型コロナウィルス株の3つの蛋白質の配列を並べてみると、以下のようになる。

どういう訳だか、赤色のPRRAがRaTG13やMP789にはなく、新型コロナウィルスに紛れ込んでる。
S蛋白質は、S1とS2から構成されていることは、前書いた通りだ。

S1は、ACE2蛋白質と結合し、S2は、細胞膜に融合、細胞の中に取り込まれるのに使われることがわかっている。
S1とS2は同時に作られるが、S1とS2は切断されないと、働かない。
ウィルスには、切断する酵素がないため、感染する側(人間)に備わっている切断酵素(蛋白質分解酵素)があるかどうかが重要だ。

FURIN部位は、S1とS2の間に位置し、FURIN部位をなくした新型コロナウィルスは、感染力がなくなることがハムスターの実験で明らかになっている。
そして、人にはFURIN部位を分解する酵素が少なくとも3つあり、簡単にFURIN部位を分解し、S1とS2にすることができる。

今話題のδ株(旧インド株)は、FURIN部位に変異が入っていて、より人間のの蛋白質分解酵素によって分解されやすい。
このため、感染力が強いと考えられている。

厄介なのは、高齢者で基礎疾患(高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、心疾患等)のある患者は、プラズミン(Plasmin)と呼ばれる酵素がたくさん作られ、これがFURIN分解に寄与。
高齢者の新型コロナウィルスの予後が悪いのはプラズミンなのではないかという仮説もある。

不思議なことに、FURIN部位のPRRAは、MERS、コロナウィルス(SARS)には、存在しない。自然感染に場合にはどのように入ったのか?説明するのが難しい。

一方で、研究室レベルでFURIN部位をウィルスの中に挿入するのは、簡単。実際、10年以上前に、日本と米国のウィルス研究者たちは、実験で示している。

今まで、コウモリ、Pangolin由来のコロナウィルス、S蛋白質のRBMとFURIN部位について取り上げた。

最後に「自然発生説」と「研究所流出説」の2つについて紹介したい。

「自然発生説」〜人間に感染する前の動物が見つかるのか?

2002年〜2003年にSARSが流行したときに、S蛋白質は、コウモリからイノシシへ感染したときに、6回突然変異が起こった。
更に14回突然変異が起こったのちに、人間にうまく適応でき、最終的に4回変異が起きたのちに、SARSの大流行が起きたそうだ。

興味深いことに、新型コロナウィルスについては、出現してからすぐに人間に適応できる株になっていたことをAlina Chanが明らかにした。
何と不思議な感じがする・・・。

そして石博士と共同研究をしていたNorth Carolina大学のDr Baricは、感染流行の初期で、ウィルスは単一のものから発生した可能性があることをNEJMに書いている。

Nicolas Petrovskyは、S蛋白質がどれだけ強くACE2に結合するか、コンピュータ・シミュレーションで調べた。
驚くべきことに、新型コロナウィルスのS蛋白質がACE2に一番強く結合した動物は人。
次にPangolin、犬、サル、猫で、コウモリ、へび、マウスには結合しなかった。

自然感染説を支持するには、Pangolinとコウモリのコロナウィルスが同時に人に感染して、変異を起こしてとなるが、Pangolinのコロナウィルスの大流行は起きていないので、Pangolinを経由したとは考えにくい。

自然発生説が正しいと証明されるには、人間の前に感染した動物の発見が必須。
残念ながら、1年半過ぎた時点でもいまだにその証拠が出てきていない。

「研究所流出説」〜RaTG13+PangolinのS蛋白質+FURINの3つで、人工的に合成

「研究所流出説」の方はどうか?
Yuri Deiginが唱えているように
1)コウモリ由来のRaTG13が新型コロナウィルスの骨格になっている
2)RaTG13のS蛋白質は、Pangolin由来のRBMに置き換わっている
3)S1とS2の間にFURIN部位(4つのアミノ酸)を遺伝子工学の技術で挿入する
ことで、人工的に作ることは、今の技術で可能だ。

このように、WIVに査察に入らなくても、コロナウィルスの構造から「研究所流出説」を推測することが可能だ。
配列から推測しても、やはり大事なのは、本当にこれが行われたかどうか、証拠が必要だと思う。

まとめ

今回、コロナウィルスの構造から「自然感染説」と「研究所流出説」についてまとめた。
両方ともいまだに証拠は出ていないので、「自然感染説」と「研究所流出説」の両方は、並行して議論すべきものだと考えているが、どちらか一方を完全にシャットアウトするのは間違えだと思う。

いずれも仮説だと思って、見てほしいという願望のもと、筆をおきたい。

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