【E#74】「気合」や「根性」よりも問題解決策を模索すること
高校時代、テニス部に入り「気合」や「根性」、精神力の重要性を学ぶことができた。日々に練習、ラケットを握っていない時に、声を出すこと。灼熱の夏に合宿に参加することなどを通じてだ。
努力や一所懸命取り組むことによって、物事を成し遂げていくのが大切だという価値観がこのように自然と身についたのでしょう。大学受験や大学院でもそのような姿勢で物事に取り組んできたと思う。
そして、大学院博士課程時代も、Nature、Science、Cellなど超一流欧米科学雑誌に掲載している研究室に所属。実験室にこもり実験をしていった。
転機が訪れたのが、28歳だった頃。気合や根性でやってきたことが通用せず、成果もあげることができず「燃え尽き症候群」みたいな状態となりやる気が全く出なくなった。
いわば、大切な大学院博士課程の4年間のうち、貴重な1年間、全く実験が手につかず大学院に通うだけで背一杯だったという状態にまで追い込まれて行ってしまったのだ。
周囲に弱音を吐いたり、自分でこの世を去りたいという気持ちが芽生えるようになり、初めて外への解決策を求めるようになった。様々な分野の人たちと話し、本にも当たるようになった。そして、親も頼りにならないこともわかってきた(父親が亡くなったのもこの頃)。
その結果として、精神で物事を進めるということに限界を感じ、成り行きに任せて自分の与えられた課題一つ一つに取り組むようなマインドに変わっていた。
最終的に実験に取り組み大学院の博士号(医学)は無事取得。その後、二年間の博士研究員として自立した研究者を目指したが、向かないという結論を出して33歳に民間企業に移る。
民間企業に移ってからは、大学での研究生活よりも遥かに精神的に楽になった。そのため、目の前のことを大事にすると同時に、身体のケアについての考える余裕ができていた。それが、ジムでの筋肉トレーニング、ヨガの練習を日々取り入れる習慣へとつながる。
今感じるのは、燃え尽きたという経験が20代の頃経験できたという幸運。それを経験できたからこそ、人の痛みや精神的な悩みをどう取り組めばいいのか?わかるようになった。
今この瞬間を大事にして、自分の中に答えがあり、自力で道筋を見つけていくことを30代以降大事にするようになったからだ。
今、ロルフィングという身体のケアを提供している。身体に意識を向け、必要ではないところに力を抜くためにはどうしたらいいのか?手助けする仕事だ。
気合や根性を言っている人は、私がそうであったように身体の力を抜くことがうまくできていない。それが腰痛や肩こりという形で現れている(また、自分の意思がうまく伝えていないと首の痛みという形で)。
【RolfingコラムVol.16】で触れたが、肩こりや腰痛がある場合には、肩や腰に関わる様々な筋肉が緊張していて、共同で筋肉が働けない状態(偏った使い方)になっている、それはある程度動くためのスペースが出来ていないために起きているとも言える。
ロルフィングでは、筋膜の緊張を解くことによって肩や腰を含め、身体の全体を調える。結果として身体内のスペースが広がるような意識を持てるようになり、筋肉の動きが改善されていく。
そのことで、「身体=今ここ」という意識が強くなる。気合や根性といった無理に力を入れる必要がなく、自分の身体の意識が向上。結果として、自分の身体をあるがままに受け入れられるようになり、自分の持っている長所、個性を使えるマインドへシフト。精神力よりも、問題解決するためどういう方法論をとったらいいのか?自分の中からの答え・直感を導くことができるようになると確信している。
これからも数多くのお客さんを通じて、ロルフィングの意義はこう言ったところにある、ということを伝えられればと考えている。