電子書籍の衝撃 佐々木俊尚 5冊目
最近、電子書籍のキンドルとアップルのiPadが話題になっている。実際、キンドルについては、弟からの紹介で、何冊か読んでいる。キンドルはまだ英語の本しか読めませんが、キンドルを手に取ってみて、本当にいいと思うのは目が疲れないこと。それが大きいと思う。
また、ウィスパーネットという無料のインターネットが付いていて、本に線をひいたり、ノートをしたりすることができ、それをインターネットを通じて、保存 してくれること。また、iPhoneやPCでもそのノートを見ることや、本を読むことができることなど、利便性が非常に高い。
これでも十分なのに今度は、iPadが出るとのこと。どうなるんだろうか?と思い、手にした本が、
電子書籍の衝撃 佐々木俊尚著とiPad vs キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏 西田宗千佳著の2冊である。
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)/佐々木 俊尚
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iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏 (brain on the e…/西田 宗千佳
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西田氏の本は、電子書籍について詳細に事実に基づいて書いていて、歴史についてよくわかった。日本の企業の名前がたくさん出てくるし、キンドルが出る前に日本の企業もその技術を使っていたことなど、面白いことがたくさんわかった。
一方で、佐々木氏の本は、電子書籍の大枠と今後日本の書籍はどのような方向で進むのか?という視点が語られていた。どちらかというといつも本を読む際には、大枠の方が興味があるので佐々木氏の方が面白く感じた。今回は佐々木氏の著作に絞って感想を書こうと思う。
佐々木俊尚氏の本では、iPodがなぜ普及したのか?そしてキンドルがその戦略をそのまままねることにより現在の隆盛を極めていることをわかりやすく説明 している。佐々木氏によると、iPodの成功はitunesストアによるとし、その成功要因として以下の三つをあげている。
1)多様なコンテンツが安く豊富にそろっていること
2)使い勝手が良いこと
3)アンビエントであること
そのうち、三番目は、環境や偏在と訳されるが、実際は「いつでもどこでもどんな場面でも自分が音楽を聴きたいと思った瞬間に手元のデバイスから魔法のように音楽を引き出す」ことが可能になったという意味である。
この戦略をキンドルはそのまままねて、
1)のコンテンツは実際に豊富にそろっていること、2)の使い勝手は、パソコンを経由しないで電子ブックの購入を可能にしたこと、3)はiPhoneとPCでも読めるようにし、アンビエント環境を実現させたのである。
そこで、iPadが登場する。
アップルは99セントで曲を、キンドルは9.99ドルで本を提供して、それぞれ価格決定権を確保した。ここまでアマゾンはまねたのだが、ただ、アマゾンは13ドルの卸値で本を出版社から購入し、9.99ドルで販売する、いわゆる赤字を覚悟で販売しているんである。
それに対して、アップルのiPadは戦略を変えて、エージェント契約を交わしている点。電子ブックを販売する代わりに代金の30%を受け取るという方式をとっている。
また、グーグルは絶版になった本に関して、オンラインで書籍の内容を販売、図書館や大学からの書籍の内容を無料でアクセスできるようにするなど、違った形で電子書籍へと参入してくる。
将来はどうなるか分からないが本がどんどん便利になってくることだけでは確かなようだ。
一方で、日本の現状はどうか。
日本では本の新刊の出版点数が60年代には1万点だったのに対して、70年代は2万点、80年代3万点、そして今や8万点になっているとのこと。それに対 して実際に売上冊数は増えていないこと。データでみると80年代で8億冊、現在、2008年で7億5000万冊まで減っている。
これに対して、佐々木氏は活字ばなれではなく、出版業界のシステムに欠陥があり、どんどん本を出さなければ赤字になるため、質が多少低くてもどんどん出さなければならないために起きていると分析している。
考えてみれば、この数年、書店に行くとすぐに新刊が並べられて、様変わりするということは目につく。それと、沢山売り上げた作者は似たような本を書く傾向 が見受けられる。そして最近面白い本が減っているという印象があったが、なるほど、こういった理由だったのかと!非常に納得した。
今 後、電子書籍がでると自費出版しやすくなるのではないかと思う。佐々木氏も西田氏もその点触れているが、将来音楽と同じように、細分化されてきて、全ての 人に売るために本を書くのではなく、ある興味を持ったマニアックなテーマを書く人が増えてくるのではないか。それこそ、本の醍醐味だと思う。本の将来は本 当に楽しみだ。