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ルポ貧困大国アメリカIとII 堤未果 4冊目

今週末は、時間があったので、たくさん本を読みました。まず、自分がいる業界の医療業界について書かれた本から紹介します。
ジャーナリストの堤未果さんのベストセラー 「ルポ貧困大国アメリカ」は自分の読書リストの中に入っていたが、なかなか読む時間がとれず、今回初めて手に取ってみた。
ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)/堤 未果

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ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)/堤 未果

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この本は、アメリカの現在抱えている問題点を取り上げており、驚きの連続で本当に面白い本だった。たとえば、
1)貧困層は食事にお金が掛けられないため、ファストフードに走る。そのため、肥満児が増えていること
2)被災地対策が民営化されてしまったため、ハリケーンのカトリーナの対策が遅れてしまったこと
3)戦争の民営化、軍隊の勧誘に貧困層やワーキングプアがターゲットになっていること
4)公教育にお金がかかりすぎてしまい、卒業と同時に莫大な借金を背負う形になっていること
5)刑務所のビジネスの巨大化。刑務所からは140種の製品をサービスを外部企業に提供している。一方で、囚人の待遇が年々悪化していること
といった興味深いトピックスを取り上げているが、医療問題が一番深刻かつ、アメリカの病巣を語るもっとも大きな問題なので、ここではそれを取り上げる。
堤 氏によると、医療費の負担は年々増加しており、アメリカの国民一人当たりの平均医療費負担額は、国民皆保険制度のある他の国に比べ、2.5倍、一人当たり で年間5635ドルになるとのこと。しかも、民間の医療保険に加入していても、カバーされる範囲はかなり限定される。そのため、重病になれば、借金漬け、 ひょっとしたら自己破産する例も出てくるとのことです。
たとえば、日本では、盲腸の手術代は約6万円なのに対して、アメリカではニューヨークで243万円もかかる。
問題は、保険会社は高い掛け金を請求するのみならず、薬の掲載リストも決定できる。そして、もし自分たちに何か不都合でもあれば、あれこれ理由をつけて支払いを拒絶することがある。
必然的に製薬企業と保険会社(堤氏はこれを医産複合体と命名)がコラボし大量のロビーを雇い、政府に働きかけることより自分たちの利益に合致したことを実現させている。そこには薬の処方権のある医師の影響力もない(薬を実質選べない)ので恐ろしい。
もちろん、メディケアやメディケイドという米国の公的保険はあるが、使える薬に限りがあること、また国の財政を圧迫しているため、今後どこまで維持できるかというのは不明とのこと。
この背景をもとに、さまざまなインタビューを試みて、アメリカの問題点を語っている。結びの言葉は非常に印象的だ。
「民主主義であるはずの国で、持たぬものが医師にかかれず、普通に働いている中流の国民が高すぎる医療保険料や治療費が支払えずに破産し、善良な意志たちが競争に負けて次から次へと廃業する。そんな状態は何かが大きく間違っているのです」
オバマ政権になってから、医療制度についての改革が叫ばれ始めているが、はたしてどこまで医産複合体に切り込めるのか。このテーマを扱った本はもっと読んでみたいので、ブログでまた改めて書きたいと思う。

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