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第5回|組織経営に「身体知」をどのように活用するか?

はじめに

こんにちは、渋谷でロルフィング・セッションや脳科学ベースの講座を提供している大塚英文です。

今回は《経営者のための脳活講座》の第5回「身体から始まる“組織進化”──ティール組織・U理論と身体知の接点」 についてまとめました。

組織を“生きもの”として捉え直す──「機械」から「生命」へのメタファーの転換

現代の組織や経営において、私たちはいまパラダイムの転換点に立たされています。

かつては、組織とは「計画通りに動く機械」であり、経営とは「操作」や「制御」の技術でした。

しかし、変化が加速度的に起きている現在、それではもう間に合わない。通用しない。

そこで注目されているのが、組織を「生きている存在」として捉える、生物学的・有機的アプローチです。

機械的メタファー:かつての組織モデル

産業革命から20世紀の経営論において、組織は以下のように考えられていました:

  • 各部署は“部品”
  • 人は“役割”を果たす歯車
  • 経営者は設計者・コントローラー
  • 成功の鍵は「計画」「命令」「管理」

これは「外から操作する」ことを前提とした組織論であり、安定性・再現性・効率性を追求するには優れていました。

生物的メタファー:いま求められる組織観

これに対して今注目されているのが、以下のような生物学的・身体的な考え方です:

  • 組織は自律的に変化し、成長する生きもの
  • 経営は「制御」でなく、「環境のデザイン」と「場づくり」
  • 変化の兆しは“感覚”として現れる
  • 指示系統よりも“関係性”が動きを生む

ピーター・ドラッカーの言葉を借りると、

「知識社会において、組織はもはや機械ではなく、生きた有機体として機能しなければならない。」

この視点は、後述のティール組織U理論へとつながります。

身体知・感情・空気を“情報”ととらえる

この生物的組織論では、「人間の身体」もひとつの情報システムとみなします。

  • 緊張感のある会議室の“空気の重さ”
  • プレッシャーのある場面で感じる“胸のつかえ”
  • なんとなく話しづらい“空間のざわつき”

こうしたものは、言語化されないが確かに存在する情報(暗黙知、tacit knowledge)であり、“身体が先に察知している”ものです。

暗黙知と形式知の往復:野中郁次郎の知識創造理論

野中郁次郎氏は、組織における知の生成プロセスを「SECIモデル」で説明しました。

  1. 暗黙知 → 暗黙知(共同化、Socialization)
  2. 暗黙知 → 形式知(表出化、Externalization)
  3. 形式知 → 形式知(連結化、Combination)
  4. 形式知 → 暗黙知(内面化、Internalization)

この循環が回る組織こそが、知識創造型組織であり、新しい価値やイノベーションを生み出せる有機体なのです。

しかしこのプロセスは、身体性を抜きには語れません

  • 暗黙知は、多くの場合「言葉にならない身体的な知」から始まる
  • 表出化には、「感じたことを言葉にする身体性」が必要
  • 連結化には、「共に話し合い、動く」という協働が必要
  • 内面化には、「学びを体で落とし込むプロセス」がある

つまり、身体が知を生み出す現場であり、媒介であり、土壌なのです。

U理論:未来からの情報に耳を澄ます

オットー・シャーマーによるU理論は、組織や個人が「変容」するプロセスを、次のように表しました:

  1. Downloading(過去のパターンの繰り返し)
  2. Seeing(先入観なしに観る)
  3. Sensing(場全体として感じる)
  4. Presencing(未来の可能性とつながる)
  5. Crystallizing → Prototyping → Performing

このプロセスの中核も、「感覚」「沈黙」「場の質」がキーワードになります。

つまり、「見えないもの」「感じるもの」「暗黙のもの」こそが、次の変化を導くヒントなのです。

ティール組織と“進化する有機体”

フレデリック・ラルーの『Reinventing Organizations』では、「ティール組織(進化型組織)」という概念が登場します。

  • ヒエラルキーではなく“自己組織化”
  • コマンドではなく“進化する目的(evolutionary purpose)”
  • 業績管理ではなく“ホールネス(全人的な関わり)”

ここでも、人間の身体性、感情、感覚といった「非言語的な情報」こそが、組織全体の生命力の源泉だとされています。

脳活講座との接続:リーダー自身が“生きた感性”を取り戻す

《経営者のための脳活講座》では、まさにこの「生きている組織」を実現するために、

  • 身体知(Body Intelligence)
  • 神経系の自己調整力(Self-regulation)
  • マインドフルな意思決定
  • 感情を捉えるEQ
  • 変化の兆しを察知する感性

といった、人間本来の知性を取り戻すための実践知を扱っていきます。

つまり、単に「脳を鍛える」講座ではなく、「知・情・体」の統合によって、組織進化の基盤となるリーダーシップを育む講座です。

おわりに:経営とは「関係性」に深く関わること

機械のように“操作する”マネジメントから、
生きたシステムに“関係する”リーダーシップへ。

組織を「生きもの」として見たとき、
その細胞である私たち一人ひとりの身体知と気づきが、
未来をつくる源となります。

そしてその“感性の目覚め”は、いつでも自分自身の内側から始めることができるのです。

次回予告|第6回:なぜ「統合」がカギになるのか?

次回は、「統合と脳の使い方──感情・論理・身体をつなげる力」をテーマに、
バラバラに扱われがちな“思考・感情・感覚”をどう1つに統合し、判断力につなげるかを探っていきます。

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