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【P#73】幻覚剤の歴史⑨〜中世、魔女、薬草採集、医薬品

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

幻覚剤の歴史については、LSDサイロシビンメスカリンMDMADMTを取り上げた。法律で禁止される前に、どのような歴史を辿ったのか?IT業界のメッカ、シリコンバレーとの関や、最終的に法規制がどのように入り、現在のルネサンスを迎えたのか?についてまとめた。

今回は、歴史を遡り、中世のヨーロッパの魔女たちについて。魔女たちは、薬草採集を扱い、どのように医薬品につながっていったのか?そして、幻覚剤の麦角・LSDが登場したことについて、P・ルクーター・J・バーレサンの「スパイス、爆薬、医薬品:世界史を変えた17の化学物質」を参考にまとめたい。

中世のヨーロッパと魔女狩り

中世のヨーロッパ。科学のなかった古代から、超異常現象を扱ったものがたす発見されている。

動物の姿をした神々、怪物、魔法をかける女神、妖術使い、妖怪、幽霊、精霊、森、湖、海、地中にいる神々。キリスト教以前にも、魔術と迷信に満ちた世界があり、キリスト教がヨーロッパに広がった際には、異教徒たちの儀式や祭りを引き継いでいる。

1350年以前には、魔術(Witchcraft)は、妖術という自分自身の利益のために自然をコントロールする手段を実際する手段とみなされていた。魔術により、農産物や人々を守ると信じられ、精霊に働きかけ、供養することが行われていた。生活の一部として受け入れられていたが、魔術が害を起こした時に罪とみなされていた。

キリスト教は魔法に対して反対しなかったが、教会外で行う魔法は悪魔の仕業として見做していた。13世紀に入ると、ローマ・カトリックの異端審問所が「魔女」を扱うようになる。背景となったのは、1233年頃に「異端者」を取り締まるために設立された裁判所だったのに、その頃には「異端者」がいなくなったからだったらしい。

普通の法律が魔女に通用しなくなると、訴えのみが証拠となり、拷問も行われるようになった。いわゆる「魔女狩り」と呼ばれているが、魔女の90%は女性だった。

最後に、魔女の処刑が行われたのが、オランダで1610年、イングランドで1685年、ドイツは1775年、スイスは1782年、ポーランドで1727年と。結構長い間処刑が続くことになる。18世紀には、魔術を理由とする処刑が正式に廃止されるが、しばらくは一般人による裁判は引き続き行われていたらしい。

薬草採集者としての魔女〜現代の医薬品につながる

なぜ、このように魔女が取り締まりの対象となったのか?魔女として告発されていた女性の中には、薬草採集者が多かったのも要因の一つとして考えられている。

土地の植物を使って、病気を治し、痛みを施す技術に長け、伝統的に代々受け継がれてきたのだ。その中には、薬草を使ったり、治療の処方することも含まれており、非常に危険な仕事でもあった。植物の部位が違っていれば、有効物質の量が違ってくるし、治療効果に差が出てくるからだ。

例えば、ヤナギ、シモツケソウは、ヨーロッパ全土にあり、薬効成分のサリチル酸を含み、バイエルがアスピリンを販売する前から知られていた。セロリの根は筋肉痙攣を防ぐにに、パセリは流産を起こす、ツタは喘息の治療に使われた。キツネノテブクロからジキタリスは抽出され、心拍数を減らし、収縮力を高めることができる。

更に、鎮痛薬のコデイン、マラリア薬のクロロキン、覚醒薬のコカイン等。現代で使われている医薬品も含む。

植物のオオカミナスビ(Atropa belladonna)由来のベラドンナは、黒い実を絞った汁を目に垂らすことで、瞳孔を開かせる。目が美しく見えるので、イタリア語で「美しい婦人」のベラドンナと呼ばれるようになった。

ヒヨスは、催眠剤、鎮痛剤(歯の痛み)、麻酔薬、毒薬として長い歴史を持つ。ヒヨスから、体液抑制や、解毒に使われるアトロピンと、麻酔薬として使われるスコポラミン等がある。

このように考えると、魔女たちは、現代の錬金術師、医薬品開発担当者、医師を3つ兼務するような大きな役割を担っていた可能性が高いのだ。

麦角とライ麦〜幻覚剤の発見につながる

魔女たちは、植物から作られる生理活性物質の「アルカロイド」を扱うプロだった。しかも、医薬品だけではない。多くの魔女が火炙りの刑に処されることにつながる麦角菌(Claviceps purpurea)も扱っていたのだ。参考に、微生物の死亡事故として、麦角中毒は、細菌やウィルスの感染症に次いで多かったのが麦角中毒だった。

麦角由来のエルゴタミンは、血管を収縮させ、エルゴノビンは、人や家畜を流産させ、さらに他の麦角由来のアルカロイドは、神経、精神状態を乱すものもある。痙攣、卒倒、下痢、嗜眠、躁状態、幻覚、手足の痒み、嘔吐、引きつけ、血管循環の悪化による壊死等の症状が出て、聖なる火、聖アントニウスの火とも呼ばれた。

収穫直前に雨が続くと、ライ麦に麦角菌が生えやすくなる。穀物を湿気のある状態で保存すると、菌がさらに成長。挽いた粉にほんのわずかに麦角が入るだけで、中毒症状を示す。

紀元前600年にはアッシリア人がすでに「穀物の耳の有毒な吹き出物」と記述。「毒のある草」が牛に流産を起こしたとペルシア人が紀元前400年に報告。ヨーロッパでは、ドイツのライン川(757年)で初めて報告され、フランスで4万人(994年)、12000人(1129年)にそれぞれ死亡が確認されたという。

「薬に対する戦争」と「魔女狩り」

このような危険な物質を扱う「魔女」ということもあったのでしょう。せっかくの貴重な技術を扱う人たちだったのに、何らかの超自然的な手段で他者を害することのできる人がいると見做されるようにあり、今でいう「War on Drugs(薬に対する戦争)」という形で「魔女狩り」が行われるようになったと考えても良さそう。

Brian Murareskuは「The Immortality Key」では、魔女たちが培った薬草の知識(幻覚剤を含む医薬品)は、古代ギリシャを発祥とし、古代キリスト教徒を経由して、代々引き継がれていうという仮説を、説得力のある言葉でまとめている。この本がきっかけとなり、ハーバード大学で研究機関が立ち上がっており、これからの研究に期待が持てる。

参考に、麦角由来のアルカロイドは、毒性があって危険ではあるが、治療薬としての長い歴史を持ち、分娩促進、堕胎に活用されてきた。最近では、血管収縮剤として偏頭痛、分娩後の出血の治療、出産時に子宮を収縮させるのに使われている。実際、このような叡智があったから、アルベルト・ホフマンは、LSDを発見できた。

まとめ

今回は、中世のヨーロッパの魔女たちが、どのような植物を扱い、それが医薬品につながっていったのか?幻覚剤の麦角・LSDが登場したことについてもまとめさせていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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