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【B#144】出会った本・ベスト5〜2023年を振り返って(2)

はじめに

こんにちは!東京・渋谷でロルフィング・セッション脳科学から栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。

2023年12月22日、今年12回目の読書会を綱島で開催した。今年の1月から綱島で行うことになり、恵比寿に比べ人数は減るのではないかと予想していた。幸運だったのが、平均4名の方にお越しいただき、予想以上に多くの方にお越しいただいた。改めて感謝申し上げます。

私自身、読書は趣味の一つ。2023年も様々な本と出会い、オーディオブック(Audible)44冊を含め、合計で84冊(月7冊)を読んだことになる。毎年100冊近く読んでいるが、今年は84冊程度に留まったのは、ポッドキャストを聴くようになったためだ。ポッドキャストについてはこちらで紹介した。

2022年・ベスト5の紹介

昨年一昨年に続き、今年(2023年)も最も印象的だった5冊(2022年末から2023年にかけて出版された本を中心)を本コラムでシェアしたい。

山極 寿一著:共感革命:社交する人類の進化と未来

ゴリラ研究者から見た人間と霊長類との違いは何か?
「それは、共感だ!」
という視点で語った一冊が「共感革命:社交する人類の進化と未来」だ。

私の愛読書の一つにユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」がある。人類(ホモ・サピエンス)が文明を築き、世界を制覇した理由は?を、人類の誕生から狩猟採集、農業革命を経て、現在に至るまで、人類の成功の秘訣について、学術的になりすぎず、大枠にこだわって語った一冊で、昔感銘を受けた。

霊長類学者が「サピエンス全史」を描いたら、どうなるのかを語ったら「共感革命」になると考えてもいいと思う。ゴリラ、チンパンジー、サル、類人猿と人間の違いを30年以上のフィールドワークから語った1冊で、あっという間に読める「新書」の構成になっている。

一部の内容を下記の紹介したい。ぜひ、下記をチェックいただき面白かったら本書を手に取っていただきたい。

1)人類の特徴の二足歩行
人間が二本足歩行を選択した理由は、仲間の存在、気持ちを想像し、仲間のために離れた場所から食物を運ぶためだった。それは、弱みを強みに変える人類特有の生存戦略の出発点だった。以来私たちは、長い間、「共感」によって他者とともに暮らしてきた。

2)胃腸が弱く、非弱だった人類
森の弱者として出発した人類は、その弱みを強みに変えながら課題を解決し、他の霊長類が踏み出さなかった新たな環境へと進出していく。現代人は、野生の植物をたくさん食べることはない。

サル類も胃や腸に大量のバクテリアを共生させているので、多少の毒素があっても分解できるし、食物繊維も消化できる。ところが、類人猿は腸にしかバクテリアを共生させず、しかもその量がサルよりも少ない。そのため、多くの種類の葉や樹皮を少しずつ食べながら、昆虫なども食べるようになり雑食化した。

人類は、類人猿の胃腸の弱さを継承している。硬い葉はそのままで噛めないし、野草独特の渋みやえぐみが苦手な人も多い。水に浸けたり、火を用いて調理したりすることで、植物の持つ防御壁を取り除く調理技術が発達した。我々が普段食する野菜は柔らかいが、野菜を栽培し始めたのも、元々胃腸の弱さをカバーするためだった。

ゴリラやチンパンジーは、活動時間の半分以上を食べたり消化したりするために費やしている。これに比べ、人間の食事時間は極めて短い。これは、現代人が消化率の良い食べ物を摂るようになったから。

3)人類は繁殖力が強い
霊長類のメスは、授乳している期間は妊娠できない。乳を産生するプロラクチンを出して排卵を抑制するから。赤ちゃんがお乳を吸わなくなると、自然にお乳は出なくなり、排卵が回復する。

類人猿の赤ちゃんを見ると、ゴリラは3年から4年の間、乳を吸う。チンパンジーで5年、オランウータンでは7年ほどになり、この期間は妊娠できない。

サルの赤ちゃんは、半年から1年で離乳するので、少なくとも2年に1度は、子供を産める計算になる。現代人の赤ちゃんは、1歳前後で離乳してしまうと、はるか昔の人類も理由が早かった。これは人類の祖先が熱帯雨林を離れて草原へ進出したことに起因する。環境によって、人類の祖先は出産間隔の短縮を選択したからだ。

ウォルター・アイサックソン著:イーロン・マスク

イーロン・マスクといえば、電子決済の「ペイ・バル」、宇宙事業の「スペースX」、電気自動車の「テスラ」、ソーシャルネットワークの「ツイッター」の買収、OpenAIの創業(ChatGPT)等に関わっており、現代社会を知る上で、これほど適した人物はいないと思う。

伝記作家のウォルター・アイサックソンは、アップルの創始者の「スティーブ・ジョブス」の伝記を刊行して以来、彼の本を読むようになったが、綿密な取材と、人間関係の模様を細部にわたって描いているところが面白い。ジョブスの伝記を書いた人だから「イーロン・マスク」も面白いに違いないと思い手に取った。

Elon Muskの南アフリカの幼少時代、どのような親と過ごしたのか?アメリカへ移住した理由(おそらく、日本ならば、決して受けれられない人間性(Aspergerの側面を持ち、共感能力が低い)のように感じる)。

なぜ、宇宙事業(Space-X)、電気自動車(Tesla)、太陽光に興味を持つようになったのか?そして、現代進行形のTwitter買収とOpen AIへの投資とChat GPT 4に対抗する形で生まれたx-AI等。

ほぼ年代別に細部に入ることなく、要点を絞って
「なぜ、このような発想が生まれ、どのように製品ができてきたのか?」
「どのようなマネジメントスタイルで、部下と対応して、期限に間に合わせてきたのか?」
「なぜ、6社を同時に経営することが可能となったのか?」
「なぜ、火星に人を送りたいのか?」

等、それを裏付けられるような出来事をまとめているのが、過去に読んだ、Elon Muskの伝記(Tim Higginsの「Power Play(Teslaの創業の話)」、Eric Bergerの「Lift off(Space Xの創業の話)」)と違っている点。

この本を読むだけでも、一通りにElon Muskのことがわかり、しかも、AIがどのように進み、どう今後進展して行くのか?わかる。電気自動車、AI、宇宙についてご興味のある方、翻訳の本は分厚く、一見とっつきにくいように見えるが、あっという間に読み終えることができると思う。

河合香織著:老化は治療できるのか?

今、アンチエイジングの限界に挑むビジネスが世界中で高い注目を浴びている。

Googleの創始者のラリー・ベイジは寿命を劇的に伸ばす「カリコ(Calico)」を設立し、15億ドルを投資。Amazonのジェフ・ベソス、ペイ・パルのピーター・ティールは、老化細胞除去薬の開発を目ざすバイオ医薬品会社の「ユニティ・バイオテクノロジー社」に投資した。

実際に、人は何歳まで生きれるのか?そして老化は治療できるのか?綿密な取材をもとにわかりやすくまとめた本が河合香織さんの「老化は治療できるか」だ。

本書の1番の大きな発見は「人は何歳まで生きられるのか?」という問いに対して、統計学分野からの答えが一旦出ていることが明らかになっていること。

2016年に米ニューヨークのアルバートアインシュタイン医科大学の研究グループが論文を発表。同グループが世界40ヵ国以上の死亡率などをまとめた統計データによる疫学調査を行った。

1900年以降、これらの国では平均寿命が伸び続けているが、100歳以上の生存率の改善を調べたところ、生まれた年に関係なく、生存率の向上は100歳前後でピークに達し、その後急速に低下していることがわかってきた。そして、彼らは、死亡年齢のデータから、人間の平均最大寿命は115歳と結論。

世界のどこかで125歳まで生きている人を見つける確率は、1万分の1未満と計算した。彼らは、現在寿命を伸ばすための費やされている資源は代わりに健康寿命を伸ばすために使われるべきなのだろうと、結論づけている。

この本では、健康寿命を全うするためには?若返り物質は?長寿の生活習慣をはじめ、いろいろな視点で廊下を扱っており、老化に興味をもってる方がいらしたら、一番最初に手に取っていただきたい。

秋田茂著:イギリス帝国盛衰史 グローバルヒストリーから読み解く

ヨーロッパの二流国に過ぎなかった英国。なぜ、産業革命を起こし、7つの海を支配する世界を動かす帝国になり得たのか? 従来の説ではわからなかった「帝国化」と「帝国経営」の実態が、最新の「グローバルヒストリー」研究によって明らかになってきた知識がふんだんに盛り込まれたのが「イギリス帝国盛衰史」だ。

英国の発展の舞台はアジアだった。帝国を広げるきっかけとなったのは、アイルランドへの進出。英国の繁栄を決定させた名誉革命、英国のシティが世界金融の中心になった理由とオランダとの関係。どのように覇権が英国から米国に移ったのか?日本が英国の歴史から学べること。等。

個人的には、英国は何回か訪れており、歴史の本は何冊か読んでいるが、最新の知識が盛り込まれているこの本は面白く、歴史書の中で久々に発見が多かった。

Peter Attia:Outlive – The Science and Art of Longevity 

今年出会った洋書の中で、最もインパクトがあったのが、Peter Attiaの「OutLive – The Science and Art of Longevity(人生を生き切る、長寿の科学と技術について)」だったと思う(面白かったので、ポッドキャストとkindleで2回読んだ)。2023年3月に出版されたため、残念ながら、邦訳が出ていない。

長寿に関しては、David Sinclairさんの「LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界」が有名だが、基礎科学に留まっている。一方で、Peter Attiaは医師でかつ、コンサルの会社を経由して、医療コンサルタントとして、最先端の科学と臨床をわかりやすく伝えることをモットーにポッドキャストThe Driveを主宰。

The Driveには、長寿に必要な、血液検査の臨床値の何に注目したらいいのか?インスリン抵抗性、糖尿病、がん、神経疾患、心疾患をどう予防していったらいいのか?専門家との対談で、科学論文を読まなくても、ある程度の知識を身につけることができる。

個人的には、このポッドキャストを通勤時に聴いていて、学びも深い。がんの知識も深まったし、この本を購入するきっかけとなった。

医療の対処療法から予防医学に変えていくために、どのような改善が必要なのか?コンサルのマッキンゼー社の出身だけあって、医療も戦略(目的)と戦術(方法)を分けて考えることを提唱。食事、運動、睡眠を行う前に、自分は何のために生きるのか?

目的に応じて、食事、運動、睡眠という方法を選択し、実践していくことの大切さを紹介。長く生きると、身体でどういった変化が起きるのか?筋肉の減少、認知の減少、ストレス耐性への影響も理解が深まる。運動、食事、睡眠をどのように生活に取り入れられれば、長寿が実現するのか?現段階でわかることをシェアしていた。

ぜひとも、ピンとくる方、手に取っていただけるといいと思う。

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