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【P#91】ニコチンと集中力〜身体と心への影響、がん、依存症、離脱症状

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

向精神薬の中で「精神刺激薬」(stimulant、upper、アッパー)として分類されるのがタバコの含まれるニコチン。タバコを吸わない人に比べて、たばこを吸う人は男性では4.5倍、女性では4.2倍肺がんになりやすいという国内データが出ているが、脳に与える影響について意外と知られていない。

今回は、タバコの含まれるニコチンについて集中力の強化、健康への影響、依存症、離脱症状を含め紹介したい。

ニコチンに含まれる植物〜タバコ、ナス科植物

ニコチンは、タバコに含まれるほか、ナス科植物(トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ等)にも少量含まれることが知られている。ニコチンは、昆虫を不妊にする効果があるため、殺虫剤として使用され、植物を防御するのに役立っている。

タバコを燃やし煙を、もしくは、蒸気をを吸うことで、ニコチンの摂取濃度が上がるため、タバコや電子タバコが人気になっている。

ニコチンと身体への影響〜心拍数、血圧、筋肉の弛緩

ニコチンの身体への影響は、脳への影響と並行して起こることが知られている。ニコチンは、油に溶けるため、血液脳関門を突破するのみならず、身体を自由に移動することができる。参考に、噛むタイプのニコチンは、血流に乗るまで約2~4分かかるが、喫煙で摂取する場合ははるかに速く吸収される。

身体への影響として、心拍数の増加、血圧の上昇、心臓組織の収縮力の増加が知られている。身体を覚醒状態にし、集中力を高める。興味深いことは、集中力を高めるのと同時に、筋肉(骨格筋)を弛緩させることができることだ。ニコチンは、身体の活動の向上には役立たないが、短期的な集中に役立つ。

ニコチンと集中力

集中力を高めていくためには「矢印」のモデルで考えるとわかりやすい。集中力に関わる物質(神経伝達物質)は3つ知られている。

原動力・エネルギー・警戒心に関わる「ノルアドレナリン」、注意、集中、焦点を一つ(スポットライト)に関わる「アセチルコリン」と、持続力、モティベーション、意識を外に向けることに関わる「ドーパミン」だ。

ニコチンは、思考を明確にし、モティベーションに関わる「ドーパミン」の部位を上げることが知られているだけではなく、注意を一つに向ける「アドレナリン」も上げ、注意、集中、焦点を一つ(スポットライト)に関わる「アセチルコリン」も上げる。このように集中力に関わる物質、3つ全てを上げることができるのだ。

ニコチンは、アセチルコリンの受容体であるニコチン受容体(α4-β2)に結合することで「アセチルコリン」をあげることが知られているが、同時に食欲を抑制することができる。ニコチンは、報酬経路を介してドーパミンをあげるだけではなく、GABAが減少するため、タバコを止めるのを難しくしている。

ニコチン、ドーパミンと依存症

アンナ・レンブケの「ドーパミン中毒(Dopamine Nation)」には、「脳内快楽物質」ドーパミンがどのようにして依存症を生み出しているのか?わかりやすく説明している。

「ドーパミン中毒」によると「快楽」と「痛み」を感じる脳の部位は近いところにあり、バランスをとることが知られている。ショッピング、チョコ、ゲーム、喫煙を含め、極端に「快楽」(ドーパミン)を求めると、バランスをとるため、極端に「痛み」へ舵を切る。

このように似たような刺激(快楽)を繰り返すと、「快楽」の方が弱く、短くなってきて、その後の「痛み」が強まるといった、神経適応という現象が起きる。そして、薬物依存の場合、もっと薬物を要求するようになるのだ。

喫煙とベイパー(加熱式・電子式タバコ)

一見、喫煙よりもベイパー(加熱式・電子式タバコ)の方が安全のように見えるのだが、ベイパーは、ニコチン濃度を急速に上げるため、それに伴ってドーパミンも急激に上がる。このため、薬物依存が喫煙よりも起こしやすいとも。

喫煙とベイパー(加熱式・電子式タバコ)による弊害は指摘されている。スタンフォード大学教授のAndrew Hubermanの「NICOTINE FOCUS & YOUR BRAIN」よると、ペニスのサイズの縮小、組織への血流を減少させることで、勃起能力を妨げる可能性や、血管の内皮細胞を傷つけ、臓器に悪影響を及ぼすことも知られている。

更に、心臓発作、脳卒中、認知機能の低下(短期記憶力の低下、作業記憶力の低下)の増加が指摘されているのみならず、噛みタバコは、口腔がんの50%増加、粘膜がんのリスク増加が示唆されている。

ニコチンと離脱症状

喫煙者の約70%が禁煙を望むが、中毒性と禁断症状が認められる。禁断症状の中には、タバコを吸いたい、イライラ、落ち着かない、集中できない、頭痛、体がだるい、眠い、眠れない、便秘等の症状がある。

禁煙に成功するのは5%、75%が最初の1週間以内に再発する。実際、禁煙後4時間以内に焦燥感や渇望感を感じる(上記の「快楽」と「痛み」のバランスで「痛み」へ)。

禁煙のために、ニコチンパッチやニコチンガムなどが知られているが、薬理学的なアプローチ(Bupropion/Wellbutrin)で20%の禁煙成功率が知られている。一方で、自己催眠を1回行うと、薬理学的なアプローチを上回る23%の禁煙成功率が認められ、注目されている(Reveriというアプリを使う)。

まとめ

今回は、タバコの含まれるニコチンについて集中力の強化、健康への影響、依存症、離脱症状を含め紹介させていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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