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【N#174】人類の身体〜火の活用・調理による消化管・脳の変化

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

栄養学や食事で登場する「カロリー」や「エネルギー」。これらは、西洋独特の概念として知られているが、東洋の「プラーナ」や「氣」と同じように語られる。以前、「カロリー」の考え方は、西洋の文化の中から生まれたことを書いた。

今回は、リチャード・ランガムの「火の賜物〜ヒトは料理で進化した」を参考に、食事に際し、人類は、他の哺乳類、霊長類とどう違うのか?火の活用や調理法を覚えることで、脳の大きさがどう変化したのか?を含め紹介できればと思う。

まず、知っていただきたのは、人類は、火を活用して食材を調理できるようになってから、他の哺乳類、霊長類と違う身体になったこと。食事に費やす時間が短くなり、脳が巨大化。活用する時間も増えたおかげで社会生活が大幅に変わったことの2つだ。

以下、人類の身体の変化、樹上生活を送っていた類人猿の時代から火の活用に時代へ、そして、脳が大きくなったという順番で説明していく。

人類の身体の変化〜消化管が小さくなる

まず、人類の身体の特徴は、霊長類と比べ、小さい口、弱い顎、小さい歯、小さい胃、小さい大腸、小さい消化管を持っていることだ。

チンパンジーの口は、人類に比べ大きく、筋肉の多い唇を持っている。果物や肉を食べているときは、大量の食事をほっぺたを含めた口に抱えることができ、歯を使って強力に噛むことができる。人類はそうもいかない。口が小さいため、少量の食事しか抱えることができない。

チンパンジーは、一気に1キロほどの果物を食することができ、1時間以上も噛み続けることができるらしい。参考に、現代の狩猟採集民は食事を噛んでいる時間は1日1時間、比較的柔らかい果実を食べる類人猿の5〜6時間よりはるかに短い。

口から食道を通って胃に行くと、人類の胃も小さい。大型類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ等)は、人類の2倍の重さの食事を摂る。なぜならば、前者の食事の30%は食物繊維を含み、後者は、わずか5〜10%で、それだけ消化するのに時間がかかるからだ。

実際、哺乳類動物の中で胃の大きさ(表面積)を体重あたりで比較すると、3分の1の大きさになる。

興味深いことに、食物の胃の中の滞在時間は、必然的に肉食動物で長くなる。生の肉を食する犬の場合は、2〜4時間、猫は5〜6時間、それぞれの滞在時間を持ち、小腸に送られ、素早く消化・吸収される。

対照的に人類は、他の霊長類のように、胃の滞在時間は1〜2時間。その後、小腸へ送られ、ゆっくりと消化・吸収される。こう考えると、人類の身体は、肉食動物のように、生の肉を消化するのに適していないと考えても良さそう。

消化・吸収の働きをする小腸は、霊長類と比べるとほぼ同じ大きさだが、大腸は、霊長類と比べ、体重あたり60%も小さい。腸内細菌が常在する大腸は、細菌たちによって食物繊維が消化・吸収される場でもある。大腸が小さいということは、大型類人猿のように、食物繊維を効率よく活用できないのだ。

全体的に、消化管を見ると、胃、小腸、大腸の全体の重さを調べると、霊長類の大きさから見ても、60%小さいのだ。

どう考えても、消化管に負担がかからないような調理された料理(柔らかい、高密度のカロリー食品、低い食物繊維の量、消化しやすい食事)を活用できるようになったことで、身体が変化したと考えなければ、辻褄が合わない。リチャード・ランガムの本ではこのように主張する。

では、次に、どのようにして人類は、火を使うことを思い立って、食事を調理するようになったのか?

火の活用と調理〜樹上生活から定住生活へ

初期のヒト族は、樹上生活を送っており、脳は現代のチンパンジーと同じ大きさだった。初期のヒト族のホモ・ハビリスは650グラムで、全身が毛で覆われており、腕と肩の力が強く、指が曲がっており、枝を掴めるようになっていて、上半身が木を登れるような身体になっていた。

樹上生活を送っていたのは理由があり、捕食者(ライオン、ハイエナの先祖等)に襲われる可能性が高かったからだ。脳が大きくなるということは、睡眠が必要だということ。無防備の人族に摂っては、木を登る能力は必要不可欠だった。

どのような経緯で、木から完全に降りれるようになったのか?一つの仮説として有力なのは、火を活用できるようになったから。定住式の宿営地を築き、焚き火を囲んで、腰を下ろせるようになった。副産物として、火を活用することで、肉や植物の調理ができるようになったのだ。

参考に、ローランド・エノス著の「「木」から辿る人類史〜ヒトの進化と繁栄の秘密に迫る」には、初期の人類は、乾燥した木の燃えやすさを活かして火をおこし、捕食者から身を守ったことをわかりやすく説明しておりおすすめの一冊だ。

火の活用のメリットは、生の食事から吸収できるエネルギーは60%であるのに対し、調理した食物では80%とはるかに大きなエネルギーを吸収できる。しかも、調理することで、消化に必要なエネルギーは約12%少なくなり、消化にかかる時間も半分になる。

ローフードの実践者は、いくら食物を噛んでも、消化に問題を抱え、体重を減らし体調を悪くしている。男性で20キロ、女性で25キロ体重が減り、生殖可能な女性の半数で生理が止まり、健康を損なうのだ。

人類の祖先、ホモ・エレクトスと脳の大きさ

食物を調理し始めたことで、前述のように歯や骨格に変化が出てきたのは、約200万年前のヒト族、ホモ・エレクトスが出現した頃だ。

肩が華奢で、指がまっすぐになっていること、木登りが不得意、調理した柔らかい食べ物しか噛めないような歯に変化している。そして腰の形が人類にそっくりで、生の食事を消化するために必要な、太鼓腹が必要がなくなった。

そして、ホモ・エレクトスの脳は、850グラムから1200グラムにまで大きくなった(現在の人類は)。消化管が小さくなったため、脳にエネルギーを活用することができるようになったからだ。

このように、人類史を調べていくと、今の身体がどのように進化したのか、明らかになるし、栄養学をどのように考えたらいいのか?深く理解できると思う。

まとめ

今回は、栄養学を考える際に、人類が他の動物とどう違うのか?食事と火の活用の視点でまとめさせていただいた。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています!

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