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【N#175】人間の睡眠は短く深くレム睡眠が多い〜社会性、創造性を育むため

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

過去に睡眠についてブログ記事をまとめてきたが、今回は、一歩下がり、人間は、他の動物と比較して睡眠がどう違うのか?社会性と創造性を育むレム睡眠の割合が高いことを含め、紹介できればと考えている。

睡眠とは何か?

我々人間は、人生の3分の1は「睡眠」に費やすが、思いの外、その大切さが知られていない。例えば、厚労省によると、質の悪い睡眠は生活習慣病の罹患するリスクを高め、かつ症状を悪化させる等。

しっかりと「睡眠」をとると
「勉強したことを記憶する」
「身体の動き(球技、ダンス等)を覚える」
「記憶のスペースを確保する」
「適切な食欲の調節」
と脳にとって良いことが起きることがわかってきている。

睡眠のサイクル〜レム睡眠とノンレム睡眠

人間の睡眠は90分周期を5サイクル繰り返し、目覚めに向かうと考えられている。実は、睡眠の前半は、ノンレム睡眠が長く、後半はレム睡眠が長い。

レム睡眠は、1950年代に発見された睡眠。研究者が、昼夜の赤ちゃんの眼球運動(Eye Movement)を観察した際、寝てる時に、眼球運動が激しく動き、脳波の動きも起きている時と同じように活発になっている状態を発見した。「目が素早く動く」=「Rapid Eye Movement」=「REM」=「レム」睡眠と呼ばれるようになった。

一方で、眼球運動が起こる前後には、眼球が動かない、脳波の活動も穏やかな長い睡眠も認められた。やがてノンレム(Non REM)睡眠と呼ばれるようになった。この2つが睡眠中交互に現れるが、睡眠の前半はノンレム睡眠が多く、後半はレム睡眠が多いのだ。

睡眠は何に役立つのか?〜記憶の定着、食欲、記憶スペースの確保」にまとめたように、人間の睡眠は90分周期を5サイクル繰り返し、目覚めに向かう。深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)は、記憶との関係や精神を安定させる上で重要であることがわかってきている。

では、レム睡眠とノンレム睡眠とどっちの方が、人間にとって重要なのか?他の動物と比較するとより理解が深まると思うので、マシュー・ウォーカーの「睡眠こそ最強の解決策である」を参考にしながら、考えてみたい。

動物の睡眠の特徴〜片脳で睡眠が可能

イルカやクジラ(以下、水性哺乳類)は、ノンレム睡眠しかない上、脳の半分しか寝ていない。水中の中で生き残るために必要な行動を維持している。起きている間は、一つの脳として共同作業しているのだが、寝る時間になると、一つは起きていて、もう一つは寝に入るという。

鳥類もノンレム睡眠の場合、脳の半分で寝ることができる(鳥類はレム睡眠も行える)。水性哺乳類との違いは「見る」ために脳の半分は起きている状態になるという。周囲の危険に目を光らせておくためで、片目は目をつぶり、それに対応する脳は寝ている。

群れになると、違う眠り方をする。一列に並んだ群れの列の端にいる2羽の鳥以外は、両方の脳を眠らせる睡眠をとるのだ。しかし、左端と右端の鳥は、興味深い眠り方をする。左端は左脳だけ眠らせて左目を開け、右端は右脳だけを眠らせて右目を開いている。群れの周囲を警戒しながら、両方の脳を眠らせる個体を最大化できる。

参考に、鳥類は、レム睡眠の場合は、周囲の環境に関係なく、両方の脳で寝ているのだ。

人間の睡眠の特徴〜レム睡眠の割合が長い

人間は眠り方は、片脳で寝るということはできないが、チンパンジー、オランウータン、ゴリラなどの類人猿と比べても、特徴的な睡眠をとることが知られている。

まず、眠る時間が、他のサルに比べ短い。人間は平均して8時間だが、他の霊長類は皆10時間から15時間。合計の睡眠時間は短いが、レム睡眠の時間は長い。他の霊長類の場合は、レム睡眠の長さは全睡眠の9%だが、人間は20〜25%に及ぶ。なぜ、こうなっているのか?は、サルから人類の進化を見てみよう。

人間は地上で眠る動物だが、類人猿は、木の上で眠る。例えば、ゴリラなどの大型類人猿は、毎晩木の上に新しい寝床を作って寝る。木の上ならば、地上にいるハイエナを含めた大型捕食動物、ノミ・シラミ・ダニなどの血を吸う昆虫から身を守れる。しかし高い場所だと、レム睡眠中筋肉が弛緩する為、落下するリスクが高い。

人間の祖先で最初に地上で眠るようになったのが、ホモ・エレクトスだと言われている。彼らは腕が短く、木を登るのが難しかった。捕食動物や昆虫から身を守るために、活用したのが「火」だ(「人類の身体〜火の活用・調理による消化管・脳の変化」参照)。火のおかげで大型の肉食獣は炎で近づけず、煙が虫除けになる。

そうはいうものの、火は万能ではなく、地上で眠るのはリスクになる。そのため、短い時間で質の高い眠りを確保することが必要となった。その結果として、人類の眠りは、短く、深く、そしてレム睡眠が多い睡眠に進化していった。

レム睡眠の特徴〜社会性と創造性を育む

レム睡眠が増えたおかげで、脳が急速に複雑化し、つながりが増えるようになった。興味深いことに、レム睡眠は、社会情動的な情報を読み取る能力があること。顔表情や身体のジェスチャー、群衆行動といったもので、社会生活を営む上で必須。この能力がなくなると、自閉症などの障害が出る。

いわゆるEQの高さは、日々十分なレム睡眠をとっているかどうかで決まるといってもいい。

しかも、レム睡眠は、夢をみる睡眠として知られているが、創造性も育てることができることだ。ノンレム睡眠役割は新しい記憶を長期の保管庫へ移動させることだった。レムの役割は、新しい記憶を取り出し、それまでの経験のカタログと衝突させること。この記憶の衝突から創造性の火花が生まれると考えられている。

最後に、レム睡眠は、一歩引いて視野を広げ、答えのものを導き出すこともできる。バラバラの情報を個別に理解するよりも、情報全体が意味にすることも理解できる。結果、斬新なアイデアが思いつく。

このようにレム睡眠は、人間の特徴である「社会を構成する」と「創造性を促進する」という2つの役割があるのだ。

まとめ

今回は、睡眠について、人間が他の動物と眠り方がどう違うのか?水性哺乳類、鳥類、霊長類とに違い、レム睡眠の割合が高いこと、社会性、創造性を発揮するには、レム睡眠が重要であること、等。紹介した。

少しでもこの投稿が役立つことを願っています。

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