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【N#140】意外と知られていない塩分不足〜塩分が足りないと何が起きるか?

はじめに

みなさん、こんにちは!
東京・渋谷でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。

塩分過多により高血圧が悪化するのか?〜エビデンスはどうか?

最近、James DiNicolantonio博士の The Salt Fix: Why the Experts Got it All Wrong and How Eating More Might Save Your Life(邦訳なし)という本に出会った。この本では、通説と反する話が書かれていて、面白かったので取り上げたい。

塩分は、身体の体液(血液)の濃度を保ち、細胞の働きをよくすること、脳、筋肉の働きを良くすること、食欲を改善することなど、さまざまな役割を果たすと言われているが、増塩より、減塩に向きがちだ。特に、世の中は、高血圧患者が多いため、減塩によって改善していく情報を聞くことが多い。

この本では、塩分は高血圧との関係は、相関しているが、因果関係は証明されていないというデータから紹介する。実は、高血圧と塩分との関係に注目するが、正常な血圧の人(120mmHg/80mmHg)の80%は、塩分によって血圧に変化が出ず、高血圧の予備軍の人たちの75%、高血圧患者の55%は、それぞれ塩分に対して血圧が変化しないいうデータがあるのだ。

この本では、アメリカの医療業界がどのようにして塩分と高血圧との関係で、減塩が重要だというメッセージを伝えていったのか?年表を示しながら、如何にして、エビデンスがないまま、進めていったのか?まとめている。ローマ帝国の時代、ルネサンスの時代の方が塩分の接種が多かったにも関わらず、心疾患の報告が今よりも多くなかったことなど、興味深いエピソードを紹介している。

塩分不足によって引き起こされる問題〜体重増、脂肪の蓄積、糖尿病

実は、身体は、塩分不足によって、身体がパニックになり、インスリンを分泌する。というのも、血中の塩濃度を低下させないため、腎臓に、塩(ナトリウム)を排泄させないよう指令を送るためだ。「塩分」不足によりインスリンが上がると、脂肪細胞に脂肪を貯める方向に働く。しかも、腎臓が、塩分を排泄させないよう働くにはエネルギーが必要。身体に影響を及ぼす。

脂肪を貯める方向で働くため、逆に、脂肪を分解してエネルギーを得ることが難しくなる(同様に蛋白質からエネルギーを得ることも)。結果的に、エネルギー源は、砂糖を含めた炭水化物に限定される。砂糖や、加工食品由来の炭水化物の摂取が多くなり、脂肪の蓄積、体重増、インスリン抵抗性(インスリンが効かなくなる状態)、最終的に2型糖尿病につながっていく。

意外と知られていないのは、生活習慣や腸疾患との関係。腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、リーキーガット症候群)になると、消化・吸収に問題が起きる。塩分が腸内に吸収されなくなると、それだけで、塩分不足へ。しかも、糖質制限により、炭水化物が不足すると、炭水化物は保水や塩分の保持能力があるため、炭水化物が少なくなると、腎臓から水や塩分が排泄されてしまうのだ。

お茶、コーヒーなどのカフェインを含む飲み物をとる機会が多いと思うが、これらの飲料は、利尿作用があり、塩分を排泄してしまう。しかも、抗うつ薬(SSRI)、小細胞肺がん、貧栄養、感染症(結核、肺炎)によっても、抗利尿物質が出て、塩分を失うという報告も。このように、生活習慣や、現代疾患により、塩分が足りなくなる状態を想定したケースを考慮する必要がある。

更に、後述のように、ストレスが多いと塩分不足となり、身体は塩分を求めるようになる。

このように、医療業界から、塩分の摂りすぎは、高血圧につながると教えられているが、しっかりとしたエビデンスに裏付けられていないと言われたら、どうでしょう?この本では、現代の問題はあくまでも、砂糖と加工食品の摂りすぎにあり、それを改善していくと、減塩をしなくても、現代病が解決していくのではないかと指摘している。

以下、脳と「塩分」との関係、どのように脳は、血中の「塩分」の濃度を見ているのか?を中心にまとめたい。

脳内のどこで「塩分」を検知する?〜OVLT

改めて「塩」とは何か?から入りたい。現在、食卓塩からミネラル分が豊富な海水塩などがあり、非常にわかりにくいからだ。一般的に「塩」とは塩化ナトリウムを指すことが多いが、ここで「塩」とは、塩化ナトリウム以外、マグネシウム、リンを含めたミネラル分を含めて「塩」として話したい。

「塩」は、以下の3つの働きがある。
1)体液のバランス:塩は、どれだけ体液を欲するのか?そしてどれだけ排泄するのか?を調整
2)「塩」の食欲:塩分が少ない場合は、塩を求め、多いと、塩を避ける
3)栄養素の食欲:塩は、砂糖、炭水化物や他の栄養素の食欲をコントロールする。

脳には「塩分」を検知するOVLT(organum vascolsum of the lamina terminalis、終板脈管器官)という部位がある。OVLTは、脳内で例外的に血液脳関門(血中の成分が脳内に入ってこないためのバリア構造として働く)がなく、脳室(脳の中の空洞で脊髄液が循環する部位)に面した位置にあるため、脳脊髄液と血液の成分を感知することができるのだ。

OVLTには、血中の「塩」の量を検知し、口の渇きの行動を促し、又は、抑制することができる。

脳と口の渇き〜塩分の濃度との関係

口の渇きには、
1)塩分の濃度を検知して渇きを調整
2)血圧低下に伴って渇きを調整
という、2つの働きがある。

塩分の濃度が低い場合には、OVLTは、視索上核(Supraoptic nucleus)に情報を送り、下垂体からバゾプレッシン(vasopressin、抗利尿と血圧を上げる作用を持つペプチド)を放出させる。バゾプレッシンが腎臓に働きかけると、尿の排泄が行われなくなる(そのことで、塩分が体内に留まる)。逆に塩濃度が高い場合は、バゾプレッシンの放出が抑制され、塩分が尿から排泄されるのだ。

一方で、身体には、血圧を検知する受容体(機械受容体)があり、血圧が低下すると、神経系を通じて、脳のOVLTに情報が伝わる。OVLTから、水分補給が必要だというメッセージが全身へ。水分の補給(口の渇き)の行動が促される。腎臓も血圧を検知することができる。腎臓から、血圧を上げるレニンが出て、肺から出るアンジオテンシンIIを活性化させることで全身の動脈を収縮させる。

アンジオテンシンIIは、副腎皮質からアルドステロンを放出。塩分の滞留(特にナトリウムイオン)に働きかける、一方で、OVLTに情報を伝えることも可能。最終的に水分の補給(口の渇き)が起きる。

このように水分補給は、塩分濃度が下がるか、血圧が下がるかの2つの情報が脳に伝わることで、行動が促されるのだ。

塩分とストレス〜副腎との関係

さらに、塩分はストレスとのつながりがある。塩の食欲の仕組みとコルチゾールによるストレスの仕組みは、関係が深い。水を飲みすぎて、塩分を排泄するか、もしくは塩分の摂取が少なくて血圧が低下していると、不安症、疲労感を含めたストレスと似た反応を起こすのだ。

血中の塩分濃度は、副腎から出るコルチゾールとアスドステロンによって調整される。ストレス下に置かれると、コルチゾールが放出され、皮膚に貯蔵された塩分(ナトリウム)が血中に出る。一方で、アルドステロンは、皮膚に塩分の貯蔵を促し、腎臓から塩分を血中へ放出しやすくなる。要は、コルチゾールは塩分を放出、アルドステロンは塩分の貯蔵に働くと言っていい。

塩分はどれだけ摂取したらいいのか?

では、塩分をどれだけ取ればいいのか?もし、ご興味がありましたら、Huberman Labの下記の動画をチェックいただきたいと思う。

Hubermanが、James DiNicolantonio博士にお話を聞いたところによると、8-12gの塩/日(3.2 – 4.8 gの塩化ナトリウムに相当)が求められ、アメリカで推奨されている量の1.5倍から2.0倍に及ぶとのことだ。これは小さじ1杯半から2杯の量だ。

まとめ

今回は、高血圧と塩について、周知の事実とは違うことについてシェアさせていただいた。私は医師ではなく、元医学の基礎研究者の目からエビデンスを紹介していることにご留意ください。ぜひ、減塩や増塩を含め、医療のアドバイスを受ける場合には医師にご相談ください。

この投稿がみなさんのお役に立つことを願っています。

 

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