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【P#22】医薬品の開発(10)〜保険の仕組み(2)

前回、日本では主に出来高払い方式をとっている。これは、薬が多く処方された方が、病院が儲かるという仕組みと言っていい。そのため、医療費のコントロールがむずかしくなり医療費の高騰を招いている一つの要因と考えられている。
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そこで日本でもコストの削減を目指すため、疾患に対して定額に医療費を支払うという包括払い方式を採用し始めた。この診療別包括払い方式について歴史的な経緯から説明していきたい。
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米国では、医療費高騰などによる環境の変化から、病院における経営の改善を可能にするための指標の開発が急務となった。そこでYale大学においてDiagnosis-related group(DRG)が開発された。これは、患者を病名(Diagnosis)と提供されたサービスの種類(Procedure)の組み合わせによって分け、500程度のグループに整理、分類する方法である。DRGは、急性期入院医療の患者や新生児、小児などが対象である。一方で、PPS(Prospective Payment System)とは、包括払い方式のことで、検査料、投薬料、入院コストなどが一定水準内に定められている(診療別包括払い方式と出来高払い方式)との違いについては、【製薬コラムVol.11】参照)。このうち、DRGに基づいて医療費を設定されたものをDRG/PPSと呼ぶ。この実例としてアメリカの高齢者医療制度(メディケア、Medicare)があげられる。Medicareは、1983年に入院医療費に対してDRG/PPSが導入された。その包括払いの対象は、入院費用についてのみで、医師への支払いについては診療報酬基準で定められた出来高払いで支払われている。
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日本でも1998年からDRG/PPSが試験的に導入され、主に急性期入院患者を対象とされ「急性期入院医療の定額払い方式の試行事業」と呼ばれた。疾患は270に分類され、183分類に基礎償還点数を38,803点(1点=10円)とする1件あたりの定額払いを適用した。診断群分類となっている体系は国際疾病分類(ICD:International Classification of Diseases)でWHOによって作成されている。さまざまな国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病データの体系的な記録、分析、解釈及び比較のために作られた。日本では独自の調査でまとめられた診断群を分類しているが、現在、疾患の分類を270分類から532分類に拡大(定額報酬は267分類)、そして基礎償還点数を40,476点とするなど見直しが行われている。
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この考え方を踏襲して生まれたのがDPC(Diagnosis Procedure Combination)である。DPCは、データ収集対象病院における前年度の調査期間の入院実績に基づいて、分類と点数が決められている。そして、入院1日あたり包括評価が適用された。DPCにおける診療報酬額は、包括評価部分と出来高評価部分の二つに分けることが出来る。出来高部分としては、手術料、麻酔料、1000点以上の処置料など医師への支払いが算出される。包括評価部分は、入院基礎料や検査(内視鏡検査、病理検査などを除く)、投薬、注射、1000点未満の処置などが含まれ、診断分類ごとに1日あたりの点数×医療機関係数×入院日数が支払われる。
DPC対象病院は決められており、2003年からDPCを実施している全国82の特定機能病院、2005年までにDPC試行的適用病院と呼ばれる社会保険病院、民間病院などの62施設、2005年度までに7月から10月の4ヶ月間のデータを提供してきた調査協力病院228病院のうちDPC払いを希望した216施設があるという。
以上簡単ではあるが、日本の診療別包括払い方式について書いた。次に当局との審査、医薬品で重要な添付文書について取り上げたい。
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医薬品については、時々書いています。下記をご参照ください。
ジェネリック医薬品と先発医薬品の違いは?何を知っていればいいのか?(「医薬品の開発(14)〜ジェネリック医薬品とは?先発医薬品とどう違うのか?値段は?」「医薬品の開発(15)〜ジェネリック医薬品とは?(2)〜どのように作られているのか?法律や品質の問題点について」参照)
医薬品の情報を見極めるためには「疫学」の知識が必要〜疫学とは何か?について(「医薬品の開発(13)〜『疫学』とは何か?〜医療情報をどのように判断するか?」参照)
審査書類は何を用意したらいいのか?製薬会社に勤めた過去の経験をベースに(「医薬品の開発(12)〜審査」参照)
米国の保険制度の特徴の一つはマネージドケア、その特徴について(「医薬品の開発(11)〜マネージドケア」参照)
医薬品は保険を財源としている〜保険の歴史、出来高払いと診療別包括払いの違いについて(「医薬品の開発(9)〜保険の仕組み(1)」「医薬品の開発(10)〜保険の仕組み(2)」参照)
処方箋医薬品の薬の値段(薬価)を決めるために、欧米ではエビデンスを重視するようになった(「医薬品の開発(8)〜薬価(2)〜仕組みと保険制度」参照)
処方箋医薬品は、国によって値段が決まっている〜どのような仕組みになっているのか(「医薬品の開発(7)〜薬価(1)」参照)
医薬品は特許で守られているが、どのような仕組みがあるのか(「医薬品の開発(6)〜特許と後発医薬品」参照)
国の審査が優先的に進む医薬品もある〜希少疾患、オーファン医薬品(「医薬品の開発(5)〜オーファン医薬品」参照)
製薬会社の審査は誰が行うのか?当局(国)の存在(「医薬品の開発(4)〜FDAと審査」参照)
医薬品の開発で何が重要になるのか?主要評価項目について(「医薬品の開発(3)〜エンドポイント」参照)
医薬品の審査には、製薬企業のお金が入っている現実(「医薬品の開発(2)〜TLOと事前相談費」参照)
医薬品の基本的な仕組み(「医薬品の開発(1)〜仕組み」参照)
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